2024年10月、ルノーが発表した新型BEV「4(キャトル)Eテック」。往年の名車「ルノー 4」の名を受け継ぎ、初代をオマージュしつつ大胆にもBEVへと生まれ変わらせた。今回、その4 Eテックに試乗。どんなクルマに仕上がっているのか!?
※本稿は2025年7月のものです
文:木村好宏(キムラ・オフィス)/写真:ルノー ほか
初出:『ベストカー』2025年8月26日号
乗り心地のよさはいかにもフランス車
欧州自動車工業会(ACEA)によれば、2025年1~5月におけるBEV(バッテリー電気自動車)の新車登録台数は70万1089台となり、全登録台数に対する割合は前年同期の15.2%から15.4%へとわずかながら増加している。
BEVの販売は、欧州最大の市場を持つドイツなどで販売奨励金が廃止されたにもかかわらず、緩慢ではあるが確実に拡大しているのだ。
もちろんこの背景には、欧州における環境保護意識が高いことや、廉価な中国製BEVの進出もあるが、欧州メーカーがパリ協定で採択された温暖化ガス低減の唯一の手段と認識して、積極的にBEVを市場に送り込んでいることにある。
例えばフランス大手のルノーは全製品の15%弱がすでにBEVで、さらに拡大路線を進めている。
同社はドイツメーカーと違ってBEVに特化したデザインや名称を与えるのではなく、往年のモデルを復活させる戦略を採用しており、今回は「4(キャトル)」が登場した。
「キャトル」は1960年代に登場したコンパクト・ハイルーフ・ワゴンで、そのシンプルな構造がもたらす耐久性能からジーンズのようなクルマとして世界中で大ヒットした。
BEVである新型キャトルのフロントに搭載され、前輪を駆動するモーターは「120アーバン・レンジ」が122ps/225Nm、「150コンフォート・レンジ」は150ps/245Nmを発揮。
自重1485~1537kgのボディを0-100km/hまで9.2秒と8.2秒で加速し、最高速度はともに150km/hに制限されている。また航続距離(WLTP)は40kWh仕様で322km、52kWh仕様で409kmと発表されている。
試乗すると、BEV特有の静けさの中で最初に感じたのは、ドイツ製BEVとは一線を画す、いかにもフランス車っぽい乗り心地のよさだ。しかし一方でステアリングはスポーティで軽く正確で規範的だった。
ADAS(ドライバーアシストシステム)も完備しているが、面白かったのは「マイ・セーフティ・スイッチ」によって、搭載されている5種類のアシストシステムを好みに応じて選択することが可能な点。
すなわち、LKA(レーンキープアシスト)でステアリング介入を好まないドライバーは、即座にその機能を止めることができるわけだ。
一方で、ドライブパイロット・レベル2ではストップ&ゴーの渋滞を含むさまざまな状況でのクルーズコントロールの作動が確実かつスムースで、市街地を含む多くのルートで便利だった。
欧州最大手のVWもBEVモデル「IDシリーズ」の名称を変えて「ポロ」や「ゴルフ」の名に変更させようとする動きを見せているほどで、少なくとも肩肘張らない親しみやすいBEVという点では、ルノーの路線は先んじたと言えよう。ただし、このキャトルの日本での発売は未定である。


















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