電気自動車の充電といえば「充電スポットで充電ケーブルをセット」というイメージだ。しかし別の手段として「走行中給電」という方法もあるという。ホンダなどで研究開発が進んでいるようだが……国沢光宏氏に解説していただこう!!
※本稿は2025年8月のものです
文:国沢光宏/写真:ホンダ
初出:『ベストカー』2025年9月10日号
仕組みとしては「トロリーバス」!?
電気自動車の充電方法はさまざまながら、わりと古くから試されているのが「走行中給電」という方式。
典型例を説明すると、バッテリーを搭載したトロリーバスだ。トロリーバスというのは基本電気バス。レールのない電車だと思えばいい。したがって走行中は常時架線から集電して走る。ただし架線のない場所は走れない。こいつにバッテリーを搭載したらどうか?
幹線道路は架線から集電して走る。で、架線のない枝道に入るとバッテリーで走る電気バスになります。搭載しているバッテリーの量を増やしていくと、架線のない区間で走れる距離が長くなっていく。
これを進化させていくと、架線のある区間で充電してやれば、充電する時間は不要になる。つまり「充電しないでいい電気バス」です。これだと航続距離で運用が限られてしまうことなどない。
極端にいえば、高速道路を使う長距離バスだって無給電で1000km以上走れてしまう。
こう書くと「バッテリー寿命を落とす」と主張する電気嫌いの人が出てくるけれど、長寿命のLFP(リン酸鉄リチウム)なら、300km走れるくらいのバッテリーを搭載しておけば、120万kmくらいの寿命を持つ。300kmのウチ、100kmくらいが給電区間であれば、寿命は160万kmに延びる。
これだけ寿命あれば走行距離の長い長距離バスだって実用的。
同じことが長距離トラックにもいえる。トラックも長い距離を走ろうとすれば、大容量バッテリーと超急速充電が必要になる。いろんな意味で運用に制限掛かります。バスと同じく経路の3分の1くらいに走行中受給電機能を持たせておくと、今のディーゼルトラックとまったく変わらない実用性を確保できる。
しかもエネルギーコストは圧倒的に低い。軽油の3分の1といったイメージでいいと思う。加えて300km分のバッテリーなら大型乗用車の3倍くらいのバッテリー搭載量(300kWh)でOK。
このくらいの容量だとLFP電池なら価格は、トラック用のディーゼルエンジンより安いし軽い。自動運転との相性だって抜群にいい。バスやトラックの代替パワーユニットとして考えたら理想です。
集電方法だけれど、さまざまな技術がある。ホンダは本気で取り組んでいたし、現在進行形で開発されている。路面に埋め込む非接触式(携帯電話で実用化されている)でもいいし、安全性を考えたらトロリーバス方式でもいい。
歩行者のいない高速道路だと制約も少ないため、実用化は難しくないと思う。なぜすぐやらないかといえば、政府が電気自動車にブレーキを踏んでいるからです。









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