真夏のドライブで最も恐ろしいトラブルが「オーバーヒート」です。最新車は冷却性能が向上しているため、心配をする必要はありませんが、10年10万km以上走行しているクルマや過走行車は、35℃以上の猛暑や渋滞が重なると、エンジンに過大な負担がかかり、オーバーヒートが起きてしまう危険があります。本企画では、オーバーヒートの原因や症状、予防法、そして万が一起きてしまった時の対処法を詳しく解説します。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:bymandesigns@Adobe Stock)
【画像ギャラリー】万が一起きてしまったオーバーヒートの前兆と修理費用(8枚)画像ギャラリーオーバーヒートはなぜ起きる? オーバーヒートの症状
エンジンはガソリンや軽油を燃焼させ、そのエネルギーを動力に変える仕組みです。しかし燃焼の過程では大量の熱が発生し、冷却システムがなければすぐに高温になりエンジンは破損してしまいます。
この熱を管理するのが冷却水(クーラント)やラジエーターの役割です。ところが、冷却系統に異常があると熱を逃しきれず、エンジンが過熱状態に陥ります。これがオーバーヒートです。
主な原因は以下の通りです。
1:冷却水不足や劣化
冷却水の量が不足すると熱を吸収できなくなり、循環も滞ります。また、古くなった冷却水は防錆性能や熱伝導性が低下し、冷却効果を十分に発揮できません。
2:ラジエーターの詰まりや損傷
ゴミやサビが詰まったり、ラジエーター本体が劣化していると冷却効率が低下します。走行中に飛び石でフィンが潰れてしまうケースもあります。
3:サーモスタットやウォーターポンプの故障
サーモスタットは冷却水の流れを制御する装置、ウォーターポンプは冷却水を循環させる装置です。これらが故障すると冷却水が適切に回らず、熱がこもってしまいます。
4:電動ファンの不具合
渋滞中や低速走行時には走行風が当たりにくいため、電動ファンが重要な役割を果たします。ここが故障するとアイドリング時にオーバーヒートしやすくなります。
では実際に、オーバーヒートが起きた時にはどのような兆候が見られるのでしょうか。
・水温計の針が通常より高い位置に動く
・メーター内の警告灯が点灯する
・ボンネットから白い水蒸気が上がる
・エアコンの効きが悪くなる
・エンジン音が大きくなる、出力が落ちる
初期の段階の症状としては、水温計の指針がH(Hi)近くまでジワジワ振れだし、パワーが徐々に低下してきてアクセルのつきが悪くなり、吹け上がりにくくなります。冷却水が漏れていれば、焦げたような甘い臭いが漂ってきます。
この段階で「いつもと何かが違う」と気付くことができて、直ちに停車すれば、大事に至らずに済みます。
中期の段階になると水温計がHを超え、アイドリングが不安定で「ブルッ、ブルッ」と振動し、アクセルを踏んでいないと止まったり、ボンネットの隙間から水蒸気が漏れ出したりします。
この段階になったら迷っている暇はありません。ただちに安全な場所に停車してエンジンを冷ます必要があります。末期に至ると水温計はH側に振り切れ、アクセルを踏むと「ガラガラ」といった異音を発し、焦げた臭いが漂いだします。
そして、水蒸気が吹き出して視界を遮るようにもなります。ここまで進行してしまったら、重傷です。
オーバーヒートの予防法とは

オーバーヒートは突然起こるトラブルと思われがちですが、実際には事前に防ぐことができます。ここでは代表的な予防策を紹介します。
1:冷却水の点検と交換
リザーバータンクの水位を定期的に確認しましょう。MINとMAXの間に収まっていれば正常です。足りない場合は補充し、交換時期を過ぎているなら新しいクーラントに替えることが重要です。メーカー推奨の交換サイクルは2〜4年が目安とされています。
2:ラジエーターやホースの点検
ゴムホースは熱と振動で劣化しやすく、ヒビ割れや膨らみが見えたら早めの交換が必要です。ラジエーターキャップのパッキンが劣化しても圧力が逃げ、冷却効果が落ちます。点検時にはキャップも忘れずに確認しましょう。
3:サーモスタット・ウォーターポンプの定期交換
走行距離10万km前後での交換が推奨されることが多く、長く乗っているクルマでは早めに点検しておくと安心です。
4:夏の渋滞対策
エアコンの使用で負荷が高まり、渋滞中はさらに熱がこもります。長時間停車が続く場合は、適度に休憩を取りながら走るのが賢明です。
5:バッテリーや電動ファンの点検
電動ファンはバッテリーや発電機から電力を得ているため、電気系統に不具合があると作動しません。点検は冷却系統とセットで行うと良いでしょう。
こうした基本的な予防を心がけるだけで、オーバーヒートのリスクは大幅に低減します。
オーバーヒートが起きてしまったらどう対処する?
どれだけ気をつけていても、猛暑や渋滞などの条件が重なるとオーバーヒートが発生することがあります。その際は落ち着いて、次の手順を踏むことが大切です。
1:安全な場所に停車
まずは無理に走らず、ハザードを点けて路肩や駐車スペースに停車します。走行を続けるとエンジン内部が破損し、取り返しのつかない事態を招きます。
2:ボンネットを開け、数分間はアイドリングさせる
ボンネットを開け、数分間はそのままアイドリングさせておく。急に止めるとエンジンオイルの閏滑が止まることで油膜切れを起こし、焼き付いてしまう可能性があるからです。
そして、ヒーターを作動させることも忘れずに。ヒーターコアに冷却水を導くことで熱の発散を助けことができるからだで、水が使える状況ならラジエーターに放水することで効果的に冷ますことができます。すぐにラジエーターキャップを開けるのは危険です。内部は高圧になっており、熱湯が噴き出す恐れがあります。
水温が落ち着いてきたらエンジンを止め、ウォーターホースが破裂してダダ漏れになっていない限り水の補給で対処する。補給はエンジン停めて5分以上たってからが原則で、念のためラジエーターキャップは必ずウエスでスッポリ覆った状態で取り外す。
3:JAFやロードサービスを呼ぶ
応急処置で再び走行できる可能性もありますが、専門的な判断が必要です。会員サービスや保険付帯のロードサービスを活用しましょう。
4:応急処置での冷却水補充
やむを得ず自分で対応する場合は、エンジンが完全に冷えたことを確認してから行います。真水を補充することも可能ですが、あくまで応急処置です。後日必ず整備工場で点検・クーラント交換を行いましょう。
原因を追求して修理する必要があるため、自分で直す自信がなければ素直にロードサービスを呼ぶことをおススメします。冷却水不足」の原因となる漏れが生じる可能性がある箇所は、ウォーターホース、ラジエーター、ウォーターポンプといった冷却系の主要構成パーツで、漏れた冷却水が乾燥すると白い跡となって残ります。
このため、夏の時期だけでも定期的に冷却水量やエンジンルーム内の様子をチェックすることをおススメします。また、漏れた冷却水は重力によってエンジン底部に集まり、路面に滴り落ちるため、下回りチェックしていれば発見できます。

が、クルマの下はあえて覗かないかぎり気付きにくいため、走行前にエンジン下回りを覗くことを習慣づけましょう。赤もしくは緑の色がついた水が漏れていたら要注意。早めにプロに相談して判断を仰ぎましょう。
筆者自身、真夏の湘南、134号線で渋滞中に水温計が急上昇し、止まってしまった経験があります。サーモスタットが故障し、水温計は120℃あたりを示していました。ラジエーターを冷やすファンが回らず、ラジエーター付近から高熱の水蒸気がプシューと上がってしまい、ロードサービスのお世話になったことがあります。












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