スペックは一級品だったけど…ブレイクできなかった悲しき“傑作車”

スペックは一級品だったけど…ブレイクできなかった悲しき“傑作車”

 クルマはスペックがすべてではないけれど、優れているに越したことはない。他車よりも勝っている部分があれば、それがアドバンテージになるから。ただ、それが販売や人気に直結するかというと、そうとも限らない。今回は、ハイスペックを武器に話題を集めたものの、ブレイクにまでは至らなかった傑作車を紹介しよう。

文/木内一行、写真/スバル、ホンダ、三菱自動車、トヨタ自動車、CarsWp.com

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「国産車最強のトルクが生み出す怒涛の走り」 三菱・GTO

スペックは一級品だったけど……ブレイクできなかった悲しき“傑作車”
エクステリアは「4WDスポーツカーとしての力強さの具現化、未来的なイメージの表現」がコンセプト。全幅は1840mmと超ワイドだ。象徴的なリトラクタブルヘッドライトは、1993年のマイナーチェンジで固定式に変更された

 往年の名車の名を引っさげて1990年にデビューしたGTO。

 マッチョなスタイルは迫力満点でカッコいいけど、いかんせんデカくて重い。R32GT-Rと比較すると全長こそほぼ同じながら、全幅は85mmも広く、車両重量は270kgも重いのだ。

 とはいえ本格スポーツカーを目指して開発されただけあり、パフォーマンスの高さはハイレベル。

その核となるのが新開発の3リッターV6ツインターボユニットだ。

 この6G72ターボは、小型軽量で高効率なターボとインタークーラーを各バンクに装着することで、最高出力こそ自主規制いっぱいの280psだが、最大トルクは国産車当時最強の42.5kg-mを達成。

 R32GT-Rが36.0kg-mということを考えると、その差は歴然。しかも、そのトルクを2500rpmという低回転で発生させるのだから恐れ入る。

 そして、この数値は93年5月に80スープラ(44.0kg-m)が登場するまで国産車トップを維持。また、GTOは93年のマイナーチェンジで最高出力に変更はないものの、最大トルクは1.0kg-m向上して43.5kg-mとなっている。

 ちなみに、自主規制いっぱいの最高出力と強大なトルクを最大限に生かすため、ビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDシステムや4輪操舵機構、電子制御サスペンションなども採用。

 これだけのメカを搭載しながら、デビュー時の車両価格は395万円。GT-Rより50万円近くも安かった。まさに、バブルが生んだ贅沢なハイパフォーマンスカーといえよう。

「空気を切り裂く先進のエアロフォルム」 スバル・アルシオーネ

スペックは一級品だったけど……ブレイクできなかった悲しき“傑作車”
全体のフォルムだけでなく、ドアミラーやドアノブの形状、アンダーフロアの処理まで徹底的に空力を追求。その結果、0.29という驚異的なCd値を実現した。1987年に追加された2.7リッター車はフロントバンパーの形状が異なる

 クルマにまつわる数値はさまざまなものがあるが、空気抵抗係数を表すのがCd値だ。そのCd値、一般的には0.3を下回れば優秀とされていて、国産車で初めてその壁を越えたのが1985年にデビューしたアルシオーネである。

 世界トップクラスの空力性能を実現したスタイリングは、ひと言で表すと近未来的。

 ウェッジシェイプのフォルムを軸にリトラクタブルヘッドライトを採用した低いボンネット、バンパー一体エアダムスカートやコンシールドシングルブレードワイパー、エアプレーンタイプドアハンドルおよびスペースドアミラー、ハイデッキ&ダックテールなど、各所にさまざまなアイデアや技術が盛り込まれている。

 さらに、ボディ上面だけでなくアンダーフロアをフラットボトム化するなど、空力性能の追求は徹底的に行われているのだ。

 ちなみに、この0.29という数値は最低地上高が低いFFモデルのみ。

 また、独創的なのはエクステリアだけでなくインテリアも同じ。左右にサテライトスイッチを配置するインパネのほか、L字スポークのステアリングやガングリップタイプのシフトノブはとにかく個性的。オプションのデジタルメーターもゲームのようなグラフィックだった。

 クルマの空力性能は、Cd値と前方投影面積を合わせて考えなければいけない。そのため、Cd値だけで優劣をつけるのは早計。しかし、0.29のインパクトは大きく、我々の心を揺さぶったのだ。

次ページは : 「280psの壁を国産車で初めて破った快速サルーン」 ホンダ・レジェンド(4代目)

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