日本のクルマユーザーを長年悩ませてきた「高すぎる、複雑すぎる」自動車関連諸税。取得時・保有時・走行時とあらゆる場面で課税され、二重課税や古いクルマへの重課税といった不公平感も少なくないなど問題が多く、かねてより見直しが求められていました。
なかでも問題視されているのが、ガソリン税の「当分の間」税率(暫定税率)。燃料価格高騰のなかでも、政府はこの「当分の間税率」ぶんを減税するトリガー条項の凍結解除をすることなく、補助金を交付することで対応してきましたが、2025年7月、与野党6党がこの「当分の間税率」を年内に廃止するとした合意文書を交わしました。しかしながら、与党は財源確保のために、新税創設を検討しているともされており、引き続き注視していくことが必要のようです。
ただ自動車関連諸税に関しては、車体課税についても、実はいま重要な局面を迎えています。
文:yuko/アイキャッチ画像:Adobe Stock_umaruchan4678/写真:Adobe Stock、写真AC
【画像ギャラリー】「抜本的な改革」まであと半年……高すぎる自動車の税制、どうすりゃいいの…?(10枚)画像ギャラリーグリーン化特例とエコカー減税が2026年4月30日に期限を迎える
自動車関連諸税のなかでも、燃料を除く、クルマ本体に課せられる税金(車体課税)としては、1年に1回排気量に応じて課税される「自動車税/軽自動車税」と、新車登録時と車検時にクルマの重さに応じて課せられる「自動車重量税」、購入時に環境性能に応じて課せられる「環境性能割」、そして消費税の4つがあります。
このうち、自動車税(軽自動車税)には排ガス性能や燃費性能に優れたクルマには軽課する一方、新車登録から一定期間経過したクルマには重課する「グリーン化特例」が適用されています。また、自動車重量税に関しても、環境性能に応じて免税や軽減措置となる「エコカー減税」が適用されています。
このグリーン化特例とエコカー減税が、2026年4月30日に期限を迎えることから、これを機に抜本的な見直しが行われることになっているのです。実際に2024年度与党税制改正大綱では、自動車関係諸税の見直しについて、「次のエコカー減税(自動車重量税)の期限到来時(2026年4月30日)までに検討を進める」とされており、政府や関係省庁は、いま議論の真っただ中にあります。

自工会は「環境性能割は廃止、重量ベースの課税に統合したうえで、環境性能で増減する仕組みにすべき」と提案
2026年4月30日まで残すところ半年ですが、現時点で決まったことは何もないようす。ただ、総務省が2025年1月に各都道府県に発信した「令和7年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての 留意事項等について」によると、「車体課税については、カーボンニュートラルの実現に積極的に貢献するものとすべく、国・地方の税収中立の下で、取得時における負担軽減等課税のあり方を見直すとともに、自動車の重量及び環境性能に応じた保有時の公平・中立・簡素な税負担のあり方等について、関係者の意見を聴取しつつ検討し、令和8年度(2026年度)税制改正において結論を得る。 」とされており、何らかの「結論」が出ることが期待されます。
実際、総務省は「自動車関係税制のあり方に関する検討会」を2025年4月に発足以降、8月までに6回開催しています。7月には道路財源や燃費基準の整理を行い、8月には軽自動車協会やタクシー業界団体から意見を聞くなど、制度設計に向けたヒアリングも重ねています。
なかでも8月22日の第6回では、自工会(一般社団法人日本自動車工業会)からのヒアリングが行われ、このなかで自工会は自動車税制について「米国関税や物価高等の環境激変、CN推進への対応等を踏まえ、短・中期、長期で一定の結論を出すことが必要不可欠」だとしたうえで、抜本見直しの改革案として、短・中期的には
・取得時の環境性能割を単純廃止し、内需を拡大(生産基盤維持)
・自動車税・(軽自動車税)と重量税の2税目を道路損傷と環境負荷を根拠に、重量ベースの課税に統合・簡素化し、環境性能で増減する仕組みに改革。CO2削減へ消費者を誘導する(重量税の暫定税率は廃止)
を提案。長期的には、自動車ユーザー以外も含めたモビリティ受益に応じた、持続的な新たな負担の仕組み等を検討するべき、としています。
政府としても、前述したように「取得時における負担軽減等課税のあり方を見直す」「自動車の重量及び環境性能に応じた保有時の公平・中立・簡素な税負担のあり方等について(検討する)」としていることから、方向性としては、両者で大きく違っていないように感じます。その他の業界による提案をみても、業界ごとに重視する主張は異なるものの、方向性にさほど違いはないように感じます。












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