「100年に一度の大変革期」とも呼ばれる自動車業界。俗に「10年一括り」とも言われたりするが、自動車は2010年からの10年間でどれだけ進化したのか?
「エンジン」「ハイブリッド」「プラットフォーム」「安全装備」など、主要な6パートごとにその技術の進化をチェック。元自動車エンジニアの吉川賢一氏の解説で「自動車業界がこの10年間で積み上げたもの」に迫る!
■2010年は主にこれらが登場!
・日産ジューク
・日産エルグランド(3代目)
・日産マーチ(4代目)
・ホンダCR-Z
・ホンダフリードスパイク
・トヨタパッソ(2代目)
・三菱RVR(3代目)
・マツダプレマシー(3代目)
・スバルルクラ
・スバルインプレッサXV(初代)
・スズキスイフト(3代目)
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※本稿は2020年1月のものです
文:吉川賢一(元自動車メーカーエンジニア)/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年2月26日号
■この10年で【ハイブリッド】はどれだけ進化した?
世界初の量産ハイブリッド車であるトヨタプリウスは、初代のデビューが1997年。今から10年前である2010年には、すでに3代目となっていました。
この3代目である30系プリウスは、小型で高回転なモーターによる高出力化と、リダクションギヤ(減速歯車)採用によって高トルク化を実現したリダクション機構付のTHSIIを搭載。
当時世界トップの燃費性能と2.4L車並みの動力性能を実現していました。
現在もTHSIIは進化を続けており、2017年発売のカムリに採用された「ダイナミックフォースエンジン+THSII」では、最大熱効率41%に達する燃費低減を実現し、JC08モードで28.4km/Lを達成しています。
その後、2010年になってようやく、日産が現行フーガに2モーター1クラッチ式ハイブリッドシステムを搭載。
3.5L V6のVQ35HR型エンジンに非トルコン式の7速ATを搭載し、トルコンを搭載しない代わりに高度なモーターの制御を行い、クラッチ制御を行うことで変速ショックを吸収するシステムでした。
日産からはその後、コンパクトカーへのハイブリッドシステムとして、2016年にe-POWERが登場。
優れた低燃費やワンペダル操作の新鮮さによって、2018年の登録車販売台数1位に輝く人気のハイブリッドシステムとなりました。
そのほかホンダから2013年に、通常走行時はモーター、中速走行中は主にエンジン、高速巡航時はエンジンがモーター駆動のサポートをするシステム「i-MMD」が登場。また、プラグインハイブリッドが多く登場したのもこの10年です。
●10年前の100点としたの場合の進化度は…150点
■この10年で【エンジン】はどれだけ進化した?
今から10年前は、ちょうどダウンサイジングターボが見直され始めた頃。
2005年、VWがターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせたTSIエンジンをゴルフVに搭載して以降、ダウンサイジングの有効性に注目が集まりました。
今では当たり前ですが、たった排気量1.4LとDSGの組み合わせでCセグメントのクルマを軽快に走らせるなんて、誰が想像したでしょう。
欧州では主流であったディーゼルエンジンですが、日本では排気ガスなど悪いイメージが原因で、各メーカーとも、国内への投入を避けていました。
そんな国内市場に2008年に登場したのがクリーンディーゼルの日産エクストレイルです。当時の「ポスト新長期規制」をクリアした最初のクルマでもあります。
ただし、登場初期は6速MTのみだったため、話題にはなったものの、それほど売れませんでした。
その後の10年は、各メーカーともダウンサイジングターボとクリーンディーゼルの両者を活用する方向性に追従し、排気量を減らしてパフォーマンスを落とさずに燃費を稼ぐという方針をとっていきます。
なんと、VWゴルフVIには、1.2LシングルチャージャーのTSIモデルまで追加されました。
しかし2015年9月に発覚したVWのディーゼルエンジンの排出規制不正事件により、クリーンディーゼル開発は世界的にトーンダウン、昨今は、ダウンサイジングターボ、ハイブリッド、EVの方向へと移っています。
2018年に登場した日産のVCR可変圧縮比エンジン、また、2019年に登場したマツダのSPCCI技術を搭載したSKYACTIV-Xなど、これまで「夢」とされてきたエンジンを実現したのが日本メーカーだったことは、日本の技術者にとっては嬉しいニュースでした。
●10年前を100点としたの場合の進化度は…130点
■この10年で【プラットフォーム】はどれだけ進化した?
プラットフォーム開発においては、この10年で「モジュール開発」という概念が誕生しました。
自動車メーカーは現在、電動化や先進安全技術の搭載などによる開発コストやリソースの増大、といった課題を抱えています。
プラットフォームを跨いで部品の共用化(モジュール化)を目指すモジュール開発は、それらの課題に対する対策として導入されたものです。
もちろん、部品点数を減らしコストを下げる努力は、以前から行われてきたものではありますが、BセグメントやCセグメントといったくくりで行われるのが一般的であり、例えば、Cセグメントのハッチバック、セダン、ワゴンで部品を共用化するなど、同セグメントのなかだけで、考慮されるものでした。
その枠を撤廃し、「モジュール開発」を提案したのが、2012年2月にVWが発表した「MQB」です。
セグメントの枠を超えて共通部品を増やし、生産コスト低減による車両価格の抑制、主要技術の共有、そして最高水準の安全性確保を実現させることが目的とされ、それにより、車両開発の効率化、商品ラインナップの柔軟性向上といった効果も期待されています。
ほかにも、日産とルノーの共用化戦略CMF(コモン・モジュール・ファミリー)、トヨタの「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」、プジョーシトロエンの「EMP(エフィシェント・モジュラー・プラットフォーム)」など、現在モジュール開発は、自動車業界に広がっています。
●10年前の100点としたの場合の進化度は…160点
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