9月に入り、線状降水帯が全国各地で発生し、都内でも短時間で急激な大雨が降ることが多くなった。もしクルマが冠水してしまったら取るべき対策は? 冠水したらもう廃車しかない? またゲリラ豪雨のなか、走行中、ズルっといってしまったら?
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock(トビラ写真:taka@Adobe Stock)
冠水してしまったらどうなる?

8月から9月にかけて、線状降水帯が発生した場所では、多くの場所では冠水した。線状降水帯とは読んで字の如く、次々と発生する積乱雲が線状に列をなし、長時間にわたってほぼ同じ地域に強い雨を降らせ続ける。
冠水してしまった道路を走らないのが鉄則だが、クルマが問題なく走ることができる水深はどのくらいまでなのか? 実際に冠水路を走行した実験をJAFが行っているのでご紹介しよう。
JAFでは冠水したアンダーパスを想定した全長30mのコースを用意し、セダンとSUVの2車種による走行の可否を検証した。水深は30cmと60cm、進入速度は10km/hと30km/hと条件を変えながらテストが行われた。
実験によると、水深30cmであればセダン、SUVともに走りきることができた。しかし、水深60cmになるとセダンは10km/hでの進入した場合は多少の走行はできたものの、最終的にはエンジンが停止してしまった。
エンジンルームの位置が高いSUVにおいては、10km/hでの進入であれば走りきることができたが、30km/hではナンバープレートが歪むほどの衝撃を受けるとともに10mでエンジンが停止してしまった。
内閣府では、こうした事態を避けるためには、事前にハザードマップなどを把握したうえで、水位が上がり始める前に避難することが重要で、「災害時の避難は原則的に徒歩にするように」と注意を呼びかけている。
冠水したらクルマから脱出する方法
心してほしいのは、時間が経てばさらに水かさが増すかもしれない状況でそのまま車内に残っているのは危険ということだ。冠水路にハマって動けなくなったら、まずはエンジンを停止して安全に脱出することを考えよう。ドアが開かなかったとしても、水深が窓の高さより低く、パワーウインドウが生きていれば窓を開けて脱出を。
電気系統がショートしてパワーウインドウが作動しない場合は、市販の脱出用のハンマーなどを使って窓を割って脱出しよう。脱出ハンマーは事故に遭った際などに外れなくなったシートベルトを切断する機能が付いていることが多いため、常備することをお薦めする。
丸愛産業が販売している緊急脱出ハンマー、レスキューマンはトヨタ(レクサス含む)、日産、ホンダアクセス、マツダ、ダイハツ、三菱などに純正アクセサリーとして販売されており、9割以上がディーラーオプションとして用意されているものの、装着が義務化されているわけではない。

万一のことを考えると、冠水被害が多発する地域などでは標準装備にしてもいいのではないだろうか。このレスキューマンIIIの価格は2484円(メーカーによっては価格変動あり)。 ディーラーによってはクルマに標準装備としているところやフロアマットやサイドバイザーなどの付属品に含めている例もあるそうだ。
また警視庁をはじめ、大阪府県警本部、神奈川県警警察本部など全国の21の警察本部や日本道路公団、日本自動車連盟などがレスキューマンを装備している。
ただし、フロントガラスに飛散防止などを目的とした特殊なガラスである「合わせガラス」が使用されている場合は、ハンマーを使ったとしても粉砕することはできず、脱出できるほどの穴を開けるのも困難だ。
フロントガラスが割れなかった場合、サイドやリアのガラスを割って脱出するようにしよう。ただし、一部の車種ではフロント以外のドアガラスにも合わせガラスが採用されていることがあるので、事前にディーラーに確認しておくといいだろう。
水圧でドアも開かず、窓ガラスを割ることもできない場合、車内に水が満ちるのを待つしかない。車内に水が入ってくるのは不安だろうが、車外と車内の水の高さが同じになると圧力差がなくなり、ドアは開くようになるので、落ち着いてシートベルトを外すなど、脱出の準備をしながら圧力差がなくなりそうなタイミングを見計らい、強くドアを押し開け脱出しよう。
また、水が引いた後の対処にも注意が必要だ。一度浸水したクルマのエンジンをかけたりするのは重大な故障や車両火災、感電を招くため絶対にNG。エンジンをかけずに、ディーラーやロードサービスに連絡をとり、さらに発火のリスクを回避するためにバッテリーのマイナス端子を外しておこう。
注意してほしいのはハイブリッド車や電気自動車。これらに使われている高電圧のバッテリーは大変危険なので絶対に触らないようにしよう。





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