どんなに素晴らしいクルマでも、みな同様の感想にはならないもの。三者三様、十人十色。それが世の常である。というわけで、新型が登場したダイハツ ムーヴを、おなじみの自動車評論家三名が評価。待望の新型ムーヴはどう評価される!?
※本稿は2025年9月のものです
文:鈴木直也、国沢光宏、島崎七生人/写真:ダイハツ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
「軽自動車の定番」が進化して登場
軽自動車の定番として長年親しまれてきた「ムーヴ」が、大きく進化して登場した。シリーズ初となる両側パワースライドドアを採用し、買い物や子どもの送り迎えなど多様なライフスタイルに合わせた仕上がりとなっている。
紙のベストカーでは、2025年8月10日号にて清水草一氏による試乗記を掲載。全高が低くなった分走りが自然になったことに加え、ターボ搭載の「RS」グレードに関しては、軽としてはやや贅沢ながらも刺激的なその走行性や、足回りの完成度に対して高い評価をつけた。
今回新型ムーヴのレビューを担当したのは、鈴木直也氏、国沢光宏氏、島崎七生人氏。はたしてこの3人はどのような評価を下すのだろうか。
ストレスフリーな普通さこそが愛される理由(鈴木直也)
軽のメインストリームがスーパーハイトワゴンになって久しいけど、そのなかで「その常識が変わりつつあるんじゃないか?」とアタマを絞ったのが新型ムーヴ。そして、そのヒントになったのはムーヴキャンバスの人気だ。
先代ムーヴ並みの全高ながら、キュートなデザインと後席スライドドアを装備することでスマッシュヒット。このへんから次のムーヴの方向性が固まってきたように思われる。
ある意味スーパーハイトの呪縛から自由になったぶん、新型ムーヴは誰にでもお薦めできるバランスのいい足に仕上がっている。
まず気持ちいいのは、ドライバビリティも乗り心地もいたって「普通」なこと。この「普通」はもちろんいい意味で、とにかくストレスや違和感がまったくなく、取っ付きやすさが抜群。後席スライドドアの利便性もあって、日常の足としてホントにバランスがとれている。
メカ的にはプラットフォームもパワートレーンも基本キャリーオーバーなのだが、例の事件のおかげで(?)たっぷり熟成の時間が与えられたことが功を奏したのか、エントリー価格帯のクルマながら、細部までちゃんと作り込まれた安心感がある。ホント、万事塞翁が馬だよねぇ。
●鈴木直也氏の採点チェック
・ハンドリング:7点
・加速性能:7点
・乗り心地:8点
・静粛性:7点
・内装の質感:7点
・コストパフォーマンス:9点
スーパーハイト並みの実用性と走りを左右するCVTの味付け(国沢光宏)
タントに代表されるスーパーハイト系と同じスライドドアタイプの使い勝手を持ちながら「ハンドリングや燃費、価格はヒンジドアタイプのハイト系に限りなく近い」という新型ムーヴは、軽自動車の決定版になる可能性を持つ。
いや、すでにクルマ感度が高くない人であればムーヴを選んでおけば間違いないと思う。タントやN-BOX、スペ-シアの手強いライバルになる。
ただベストカーを読んでいるようなクルマ通であれば「買う前にぜひとも試乗を!」と書いておく。
チェックポイントは「CVTの味付け」です。スタート時や流れに乗って走っていると、ある程度の加速力が欲しい。ムーヴで普通にアクセルを踏むと物足りないのだった。かといって少しアクセルを深く踏むと、今度は回転数が上がりすぎてしまう。オーバーシュートしちゃう。
それならとCVTのモードを変えると、今度は回転が上がりすぎたり、アクセルを戻した時に回転数下がらなかったりと気持ちよくない。
これ、ターボもターボなしも同じ傾向。ここさえ仕上げればいいクルマになると思うのに。逆に試乗してこの点さえ気にならなければムーヴいいクルマです。
ちなみにリアシートベルトは単なるELR式なので、後席の衝突安全性は前席より劣ります。
●国沢光宏氏の採点チェック
・ハンドリング:8点
・加速性能:7点
・乗り心地:8点
・静粛性:7点
・内装の質感:8点
・コストパフォーマンス:9点



























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