そんなにたくさん売れたわけじゃないが、何年経ってもみんなが覚えているクルマ……。今回は、コペンより30年も前に存在した「お着替え」カー、前後が別のクルマに見える日産 エクサをご紹介!! 日本ではお着替えが難しかった……。
※本稿は2025年9月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正、日産
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
前代未聞の「お着替え」スーパーカー
GT-RやZはもちろんのことパイクカーなど1980〜1990年代の日産は本当に面白かった。失敗もあれどアイデアは斬新! 確実にクルマ作りの最先端を走っていた。そのひとつがこの2代目エクサだ。
初代はパルサーベースのスペシャルティクーペであり、一見ホンダ プレリュードやトヨタ ソアラの競合。ただし、本質は微妙に北米狙いのコンパクトスペシャルティで当時1.5Lクラスとして初めてのリトラクタブルヘッドライト採用。
同時にある意味レクサスの先取りたる鋭角スピンドルシェイプを採用。それを進化させたのがこの2代目だ。
前代未聞のクルマお着替えコンセプトを採用し、今回の3ドアワゴン=シューティングブレークたるキャノピーボディのほか、リアを変えればクーペ、キャノピーを外せばフルオープンの3変化が可能。
その後クルマ着せ替えコンセプトが出るのは約30年後の2代目ダイハツ コペンであり、とんでもない先取りだったわけだ。
もちろん当時の日本には馬力自主規制同様、ツマラナイ規定があって、車検証上はワゴンがクーペになるたびに車検を取り直す必要があり、購入後の着替えは不可。メカ的にも日本仕様は脱着交換が難しくなっていた。
しかし北米では「モジュラー日産パルサーNX」と呼ばれキャノピー別売り。そのほか幻のスーパーカー、MID4と同じ一体型ドアハンドルや、左右にNISSANロゴが入る、非対称デザインのリトラクタブルカバーを採用するなどディテールもいちいち斬新。
やはり日産は常に先を走っていたんだなと。そしていまや2代目の上物は200万〜400万円の高値取引。魅力は40年近く経て再評価されているわけだ。
実際、今回乗った1989年式のタイプSEだが、スタイリングは革新的だ。フロントからみるとシルビアか180SXの如き王道スポーツマスクなのに、リアを見ると時代を自由に旅するデロリアンのような未来感。
特にあえて後付けしたような頭でっかちキャノピーが面白い。アンバランスな破綻型デザインだが、ショーモデルのようなスリット式デザインのテールレンズと合わさると独特の革新的オーラを醸し出す。
乗ってもいすゞ ピアッツァを彷彿とさせる未来派コクピットデザインがいい。シンプルな3本スポークステアリングの回りを、飛行機のようにライトスイッチやワイパースイッチが取り囲み操る楽しみが味わえる。
見た目以上にクセ強な走りも超面白い!
シートやドアもこれまた幻のMID4譲りの未来派デザインで、国産車離れしたバタ臭さあり。かたやリアシートは完全に+2サイズで狭く、2人掛けのベンチシートなので居心地はよくない。
ただし、グレードにもよるが両側にこれまたスリットデザインのJBLスピーカーも付けられ、革新的スーパーカーと思えば耐えられる個性。
走りだが、基本日産FFプラットフォームでエンジンは120psの1.6L・DOHC。期待はしてなかったが凝った作りのわりに車重1070kgと軽く、加速は意外に良好。低速トルクもあり、全長4.2m台ボディを小気味よく走らせる。
乗り味もTバールーフで剛性低め、また重すぎるキャノピーを抱えるがゆえ、段差では多少ギクシャクするも意外に良好。ラゲッジもリアを倒すと実質500Lはあって充分。意外な実力派であり使えるのだ!
●小沢コージ氏の評価
・タイムスリップ度:★★★★★
・レア度:★★★★
・お金かかりそう度:★★★
・乗って楽しい度:★★★
変幻自在のデザインで未来から来たクーペワゴンとも言うべきエクサ。リアは狭いが意外に使えて壊れなければ最高かも


























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