王者プリウス 「時代」を作った始祖の波乱に満ちた23年の功と罪

■プリウスの功罪

 プリウスは日本を代表するクルマの1台に成長し、その功績は多大だ。しかしその反面でプリウスが日本車に与えた悪影響というのもゼロではなく、その両面を挙げてみると、

【 功
●初代プリウス以来、世界中のクルマに燃費向上という意識を与えた。

●初代プリウスの頃は欧米メーカーを含めハイブリッドに否定的なメーカーも少なくなかったが、それでもハイブリッドを育て続けたトヨタはハイブリッド技術でいまだに世界をリードしている。このことは、今後日欧で導入されるCAFE(企業別平均燃費)を考えると、トヨタの大きな武器になっている。

●トヨタは、ハイブリッドで先行しただけにフルライン化やコストダウン、汎用化も非常に進んでおり、ハイブリッドを当たり前のものにした。

●トヨタの2モーターハイブリッドはエンジンと発電用のモーターを外し、バッテリー容量を増やせば電気自動車となるだけに、トヨタは電気自動車を投入する際の基礎技術もとうの昔に完成している。

4代目プリウスのハイブリッドシステム。エンジンを廃止して、大容量のバッテリーを搭載するだけで、EVにも転用可能となっている

●「ハイブリッドかディーゼルか」という燃費向上パワートレーンの議論があった際、ハイブリッドに逆風が吹いたこともあった。しかし現在は全体的にディーゼルに対するイメージ低下やコストの高さもあり、ハイブリッドが優勢となっている。これはトヨタがハイブリッドをやり続けたためという影響も大きい。

【 罪 】
こちらは、主に3代目プリウスの与えたものとなるが、

●3代目プリウスは価格や燃費といったあまりの強さで、特に登場から3年程度は日本車をプリウス一色のようなつまらない状況にしてしまった。

●3代目プリウスの登場時はエコカー減税などもあり、3代目プリウスの登場から4年程度は日本車がとにかく「燃費、燃費」という時期になった。確かに燃費は大事だが、そのために質が落ちたり、燃費スペシャルのようなクルマが登場するほどのユーザーに対して全くメリットのない過剰な燃費競争が起きた。このことに対しては3代目プリウスがきっかけや原因となったのは否めない。

●これはプリウスに限ったことではないが、ハイブリッドの普及による燃費の大幅な向上でガソリンの消費が減ったためガソリンスタンドが少なくなってしまった。

●こちらもプリウスに限ったことではないが、ハイブリッドの普及によりクルマの燃費が向上したのは事実だ。しかし、そのクルマの生涯走行距離などにも左右されるにせよ、モーターやバッテリーのためにレアメタルという資源を使うハイブリッドカーと普通のガソリン車などが、生産から廃棄までという長期的なスパンで見た際に「本当に環境負荷が少ないのはどれなのか」というのは入念に考える必要があるのではないだろうか。


 道のりや功罪などいろいろあったプリウスであるが、やはりハイブリッドカーのパイオニアとして偉大な存在だ。

 現行プリウスは来年(2021年)あたりにフルモデルチェンジがあってもおかしくない時期となっている。現在カローラの車格がプリウスに近いことなども考えると、5代目モデルとなる次期プリウスがどんなクルマとなるは非常に興味深いテーマとなりそうだ。

【画像ギャラリー】貴重な当時の写真も公開!! 23年かけて人気車にまで上り詰めたプリウス歴代モデル

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