王者プリウス 「時代」を作った始祖の波乱に満ちた23年の功と罪

■2代目プリウス(2003年)

 トヨタ社内で存続の議論もありながら、2代目プリウスは2003年9月に登場した。

 2代目プリウスは初代モデルに近いコンセプトではあったが、空力抵抗の低減と居住性の両立のため4ドアセダンから現在も続く5ドアセダンとなったほか、インテリアもシフトレバーをスイッチ的なものに近いバイワイヤーとするなど全体的により未来的なクルマとなった。

「THS」を発展させた「THS II」を搭載。モーターの出力を50%増しの50kWとし、走行性能を向上させ、10・15モード燃費は35.5km/Lと世界トップレベルだった

 ハイブリッドシステムも、1.5Lガソリンエンジン+2モーターという基本的な構成は変わらないものの、昇圧と呼ばれる電圧を上げる技術を盛り込んだ「THS-II」に進化し、動力性能と燃費を同時に向上した。

 2代目モデルになると、プリウスに対する世の中の理解やブランド力が高まったこともあり、販売も相応以上のものとなった。さらに2代目プリウスのモデルサイクル後半となる2007年あたりからは、ガソリン価格が上がり始めたこともあり、登録車の月間販売台数ランキングベスト10の常連も成長した。

■3代目プリウス(2009年)

 3代目プリウスは、エンジンが1.8Lに排気量アップするなどの話題はあったが、比較的保守的なフルモデルチェンジだった。

1.8Lガソリンエンジンにモーターとリダクションギヤを組み合わせたハイブリッドシステム「リダクション機構付のTHS II」を搭載。「プリウスPHV」や「プリウスα」など派生車も登場した

 また3代目プリウスが登場した2009年は、前年のリーマンショックによる不景気が始まったばかりというドン底の時期である。そのため、トヨタは3代目プリウスの価格を超激安としか言いようのない205万円からに設定。さらに、政府が景気刺激策として用意した、エコカー減税や13年落ち以上のクルマを廃車にした際の新車購入補助金も追い風となり、2009年5月の発売から1カ月で1万台の月間販売目標台数の18倍となる約18万台を受注。プリウスショックと呼ばれるほどの超人気車に成長した。

 また3代目プリウスでは、プラグインハイブリッドの「PHV」や7人乗り3列シートもあるステーションワゴンの「プリウスα」といったバリエーションの拡充も行われた。

■4代目プリウス(2015年)

 現行モデルとなる4代目プリウスも、全体的にキープコンセプトではある。では何が目玉かと言えば、新世代の「TNGAプラットホーム」の採用などにより、3代目プリウスの弱点だったハンドリングや乗り心地といった、クルマの質や自動ブレーキや運転支援システムといった安全性が劇的に向上した点だ。

現行型登場時(マイナーチェンジ前)は、JC08モード燃費で40.8km/Lを達成。ただし、ルックスは非常に個性的だったため、賛否両論あった

 現行プリウスは、クルマ自体は正常進化を遂げた。しかし、初期モデルのスタイルが悪い意味でのクセがあったこと、日産「ノートe-POWER」が代表となるコンパクトカーのハイブリッドや、同社のシエンタのようなコンパクトミニバンの台頭などもあり、販売は「十二分に成功しているけど3代目ほどではない」という状況が続いている。

2018年12月に改良したプリウス。クセが強かった外観をスッキリとしたものに変更した

■プリウスはなぜ成功したのか?

 プリウスの現在の成功は燃費のよさに加え、現在の日本においては日本人が日本で使うクルマとしてかつてのマークII三兄弟のように、実にちょうどいいクルマである。さらに「プリウスにしておけば安心、間違いない」という、日本人の心理にある「売れているものはさらに売れる」という好循環によるところも大きいだろう。

次ページは : ■プリウスの功罪

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