■動性能のパフォーマンスが優れているのはどちらか?
この2台のパフォーマンスを同じ土俵で比べる。一般的に、加速の鋭さのフィーリングは、最大出力よりも、最大トルクに比例するといわれている。
今回、価格が異なる2台の優劣をつけるため、最大トルクを用いて算出する「最大BMEP」にて比較を行う。
最大BMEP(※1)とは、軸トルクを発生させるのに必要なガス圧力が、膨張行程においてピストンが上死点から下死点に至るまでの間を一定と仮定して算出した圧力のこと。
単位はbar(バール)で表し、エンジンの排気量によらず、トルクを横並びに評価できるため、しばしば用いられる理論値である。
※1最大BMEP(正味平均有効圧力)bar=最大トルク(Nm)÷排気量(cc)×4π×10
なお今回、NISMO Sは発電用の1.2Lエンジンを排気量として簡易計算を行っている。e-POWERシステムはエンジンの駆動力ではないため、厳密には定義とは異なるのだが、簡易計算手法として使用した。
また、GRヤリスとノートe-POWER NISMO Sの他にも、国産スポーティカーの代表例として、スイフトスポーツ、シビックタイプR、WRX STI、スカイライン400Rも計算した。「グラフ1」を参照してほしい。
GRヤリスの最大BMEP 28.7も驚異的なのだが、NISMO Sは33.5と、更に上回っている。
NISMO Sはモーターがもつ瞬時に立ち上がるトルク特性によって、アクセルペダルの踏み始めから、驚くほどのゼロスタートの加速を決めることができる。
実際に、NISMO Sへ試乗した印象もこの通りで、エンジン駆動のように、エンジン回転数が上がるにつれて伸びていくような印象はないが、非常に力強く、そして速い。
簡易計算方法とはいえ、NISMO Sの異様さがお分かりいただけるであろう。
コストパフォーマンスが優れているのはどちらか?
NISMO Sは、272万円から、GRヤリスは396万円からと、約120万円の開きがある。単純に価格だけで見れば、NISMO Sが有利といえるが、果たしてどう判断すべきか。
横軸に最大BMEPを、縦軸に車両価格を用いてプロットしたのが、以下のグラフ2だ。2軸グラフは、右下にあるほどに、性能が良くて価格が安い、つまり「コストパフォーマンスが高い」ことを表す。
こうしてみると、GRヤリスだけでなく、WRX STIやシビックタイプRといった国産ハイパワースポーツカーと比べても、NISMO Sがずば抜けている様相が分かるだろう。
まとめ
本記事を執筆するために、実際にデータを並べてみて「なるほど、こういうことか!」と筆者自身も納得した結果だった。
もちろん、最大BMEPはクルマの速さを示す一指標なので、これだけでクルマ購入を決める方はいないとは思うが、スペック比較をして、どういった素性のクルマなのかを考察していった結果、NISMO Sがもつ爆発的な加速力の理由が、こうした指標で表せそうだという点は、実に興味深い。
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