本格的な冬の到来に備えてスタッドレスに履き替えたとしても、雪国でない限り乾燥した路面を走るシーンが圧倒的に多い。積雪路面や凍結路面のために設計されたゴムやトレッドは、冬場の乾いた路面でどんな操作性を見せるのか? ドライバーは何に注意したらよいのだろう?
文:鈴木喜生/写真:写真AC、Adobe Stock
【画像ギャラリー】知っておきたい! スタッドレスタイヤの特性(8枚)画像ギャラリースタッドレスとノーマルタイヤは何が違う?
スタッドレスタイヤとは、鋲(びょう、スタッド)がない(レス)タイヤのこと。かつては鋲が打ち込まれたスパイクタイヤが冬タイヤの主流だったが、乾いた路面では金属製の鋲がアスファルトを削って粉塵公害の原因になることから、1991年、一般乗用車への装着が原則的に禁止された。
スタッドレスがノーマルタイヤと異なる点は主に3点ある。
①ゴムが柔らかい
②トレッド(タイヤの接地面)の溝(スリット)が深い
③トレッドの細かな切り込み(サイプ)が多い
柔らかいゴムは凍った路面の凸凹にも密着しやすく、太くて深いスリットは路面の雪をしっかりグリップしてくれる。サイプとは、スリットよりも浅くて細い切り込みのことだが、スタッドレスの場合は、これがノーマルより多く設けられている。
ノーマルタイヤのサイプは主に排水のためにあり、路面に接地しない部分の面積を抑えることでグリップ力を高めている。
一方、スタッドレスでは、タイヤが滑る最大の原因となる雪上や凍結路面の水の膜を、スリットやサイプが素早く取り除くと同時に、それらのゴムの角で雪や氷を掻くことによって、グリップ力を高めている。
オールシーズンタイヤは凍結路面に不適応
「オールシーズンタイヤで十分、スタッドレスなんて大袈裟」と考えるドライバーは少なくない。
確かに、オールシーズンタイヤを履いていれば、ある程度の積雪路面も走行でき、高速道路で「冬タイヤ規制」が発令されてもチェーンを装着しなくていい。ただし、その違いは凍結路面でもっとも顕著に表れる。
オールシーズンとスタッドレスの違いは、主にトレッドパターンとゴムの硬さにある。タイヤの接地面(トレッド)の紋様であるトレッドパターンは、オールシーズンタイヤではV字型が主流とされている。これは乾燥路面と積雪路面の双方に対応するためだ。
V字型のスリットは、雪をタイヤの中心に掻き集めることで、トラクション(路面への力の伝達能力)を高めるとともに、雪をスムーズに排出する役割を果たしている。また、スリットの間に形成されたブロック部は、乾燥路面ではグリップ力と走行安定を高めてくれる。
ただし、オールシーズンタイヤにはサイプが少ない。そのため路面の氷をとらえて掻く能力が、スタッドレスに比べて大幅に劣り、凍結路面に対しては夏用タイヤと同程度の性能しか発揮できない。
オールシーズンタイヤに採用される硬めのゴムも、凍った路面に対しては十分に密着しない。つまり、こうしたトレッドパターンを持つオールシーズンタイヤは、乾燥路面と積雪路面には対応するが、凍結路面での走行までは考慮されていないのだ。
最低気温が3℃以下になると、路面温度は氷点下を下回る可能性が高くなり、都市部などでも路面が凍結しやすくなる。
路面に残った雨が氷に変わればアイスバーンになり、一見すると濡れた路面にしか見えない「ブラックアイスバーン」が発生することもある。特に陽の当たらない道や、冷気が吹き抜ける橋の上などは要注意だ。
これらの理由から、街乗り限定のドライバーにとってもスタッドレスタイヤは決して過剰装備ではないことがわかるだろう。










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