毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ ユーノスコスモ(1990-1995)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:MAZDA
■量産車として世界初 3ローターエンジンを搭載 ユーノスブランドのフラッグシップモデル
バブル絶頂期のマツダが「ユーノスチャンネル」のフラッグシップとして開発した、量産車として世界初の3ローターエンジン搭載の大型高級クーペ。
しかしあまりにも燃費性能が悪かったことから、バブル崩壊後の「失われた20年」の始まりとともに消えていった美しき名作。それが、ユーノス コスモです。
ロングノーズ&ショートデッキの伝統的な2ドアクーペフォルムは、マツダの歴代コスモに通じるもの。
しかしユーノス コスモのプロポーションはとりわけ美しく、個人的には1967年発売の「コスモスポーツ」に次ぐと感じています。
ボディサイズは全長4815mm×全幅1795mmと大柄で、特に1800mmに達しようかという全幅は、1305mmという低い全高との相乗効果で、この2ドアクーペに独特の威厳を与えていました。
搭載エンジンは、2ローターの13B型ターボが最高出力230psと最大トルク30.0kg-mを発生。そして前述のとおり量産車としては世界初となる3ローターの20B型ターボは280psの最高出力と、41.0kg-mという怒涛の最大トルクを発生しました。
3ローターの20B型はオーバー300psを目指して開発されたエンジンですが、運輸省(当時)の指導により280psに抑えられたといういきさつを持っています。そんなエンジンに組み合わされたトランスミッションは、全グレードとも4速ATでした。
そしてユーノス コスモは、そのインテリアもなかなか素敵でした。フラッグシップ・クーペにふさわしい高級感たっぷりの本革やウッドパネルが多用され、「20BタイプS CCS」には世界初のGPSカーナビを搭載。
これは、今で言うタッチパネル方式のマルチインフォメーション・ディスプレイの元祖といえるものでした。
3ローター式となる20B型シーケンシャルツインターボエンジンは「レシプロのV型12気筒エンジンにも匹敵するスムーズさがある!」などとジャーナリストからは高く評価されましたが、販売は低迷。
1995年8月には生産終了となり、翌1996年6月には在庫分も完売し、完全に販売終了となりました。
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