1990年に登場した初代エスティマは、「天才タマゴ」という愛称で今も語り継がれる伝説的なミニバンだ。卵を思わせる流麗なフォルムと革新的なパッケージングは広く知られているが、エスティマの真の凄さはそれだけではない。細部にまで宿るエンジニアたちのこだわりを紐解いていくと、30年以上を経た現在でも十分に通用する実力が見えてくる。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ
【画像ギャラリー】まさに天才!! 右側サイドブレーキに180度回転する2列目シートが斬新すぎる!!(9枚)画像ギャラリー商用バン出身じゃないよ!純乗用車としての運転席設計
初代から最終型まで一貫したエスティマ最大の特徴は、「優れたドライバーズシート」にある。
1990年当時、複数人が乗れるクルマといえば、商用バンを乗用化したものがほとんどだった。トヨタのタウンエースがその典型で、キャブオーバー構造によりタイヤの真上にドアと運転席が配置されていた。よじ登るようにして乗り込む姿は、当時の多人数乗車車の「当たり前」だったのだ。
エスティマはその常識を根底からひっくり返した。エンジンはミッドシップレイアウトを採用しつつも、運転席のドアはフロントタイヤの後方に置かれ、シートポジションも低く設定された。よじ登ることなく自然に乗り込めるこの感覚は、当時の人々にとって新鮮な驚きだったに違いない。
さらにペダルの配置やステアリングの取り付け角度はセダンに近い設計とされ、「あくまでも乗用車である」という姿勢が随所に貫かれている。計器類の配置も、最適な運転姿勢を確保することを前提に細かく工夫された。数値スペックだけでは測れない、乗り手への深い配慮がエスティマには詰まっている。
フロアのフラットさは現代のミニバンをも凌ぐ
初代エスティマがもう一つ強くこだわったのが、「ウォークスルー」の実現だ。運転席から車内を自由に行き来できる空間を作るために、シフトレバーはコラム式を採用。
さらにパーキングブレーキのレバーは、一般的な左手操作ではなく、あえて運転席の右側(ドア側)に配置された。この大胆な発想の転換により、運転席と助手席の間には障害物がまったく存在しないウォークスルーエリアが生まれている。
また、フロアのフラット化にも心血が注がれた。2列目までキャプテンシートを並べた2×2×3の7人乗りレイアウトながら、運転席から最後列まで何も気にせず歩いていける設計は、室内空間の基本設計段階から徹底的に作り込まれた証だ。
現代のキャプテンシートミニバンでは当たり前となっている2列目シートの前後スライド機構は、初代エスティマには備わっていない。
だがそのおかげで床一面が途切れなくカーペットで仕上げられており、室内に独特の一体感と広がりをもたらしている。スライドレールのない、すっきりとしたフロアは、ある意味で現代のミニバンが失ってしまったものかもしれない。
回転シートに防汚加工 ファーストクラスな室内体験
エスティマの洗練されたシート設計にも触れておきたい。
まず特筆すべきは、180度回転する2列目シートだ。シートをくるりと回せば3列目と向かい合わせになり、車内がたちまちサロン空間に変わる。30系の一部グレードにも受け継がれた、エスティマを象徴する装備のひとつだ。
走行中に後ろ向きで座ることは推奨されないが、サービスエリアでの休憩時や、家族でお弁当を囲む時間には最高の演出となる。混雑したレストランに並ぶ必要はない。家族4人が向かい合って食卓を囲む体験を、クルマの中で実現できるのだ。
「車内で食事すると汚れが心配」という人への配慮も忘れていない。エスティマの高級フルファブリックシートには、フッ素樹脂加工を施したシート表皮が採用されていた。飲み物をこぼしても拭き取りやすく、汚れも残りにくい。完全防汚とは言えないが、1990年代のクルマとしては画期的な付加価値だったことだろう。
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