■武骨への回帰を可能にした技術の進化
しかし、武骨なスタイルは直線的でゴツゴツしたデザインのため、空気抵抗が大きく、燃費が悪くなる。30年前ならいざ知らず、現代のクルマにとって、カタログ燃費の数値は、絶対に無視できない数値である。ここでおおいに役立つのが「シミュレーション技術の進化」だ。
自動車の空力計算に、CFD(Computational Fluid Dynamics)が、本格的に設計プロセスへ導入され始めたのは、1990年代末から2000年初め。それまでスケールモデルや実車風洞などで実験的に決めていた形状が、シミュレーションによって、設計検討の精度と効率が飛躍的に向上した。
ホイールハウス内の空気の流れや、サイドミラー周り、テールで起こる気流の剥離など、細かい部分まで、空気の流れを可視化できるようになり、さらに自動車開発現場に使われるコンピュータの進化により、十数年前には夢のようだった大規模高精度の解析もできるようになった。
その結果、「空気の剥離」を上手にコントロールし、ボディ全体的には「ゴルゴツしたデザイン」に見せつつも、空気抵抗を極力抑えることができるようになったのだ。ドアミラーの付け根や、リヤコンビランプ側面、フロアアンダーカバーなどに付いている小さな「ボルテックスジェネレーター」は、シミュレーション技術と空力設計者のアイディアを組み合わせた賜物だ。
■まとめ
このように、技術によって「これまでできなかったことを、できるようにする」のは、メーカーのエンジニアの方々の努力の賜物だ。新型タフトの詳細が確認できるのは2020年6月以降。ここに空力設計にどういった思想が反映されているのか、元新車開発エンジニアである筆者としては、楽しみにしている。
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