東京オートサロン2020で注目を集めたダイハツの新型軽クロスオーバーSUV「TAFTコンセプト」が、ほぼそのままの姿で2020年6月より発売開始となる。すでに先行予約キャンペーンが開始されており、大いに人気が出そうな一台だ。
タフトの最大の魅力は、武骨で角ばったエクステリアデザイン。ここ10年は、流麗なクーペルックのエクステリアデザインをまとったクロスオーバーSUVが主流であったのだが、ここにきて、RAV4やロッキー/ライズなど、昔ながらのワイルドなSUVに回帰している様相がある。なぜ今、武骨なSUVが人気となっているのだろうか。
以下、最新の流行を支える自動車開発の技術進化を、元エンジニアである吉川賢一氏に解説していただいた。
文:吉川賢一 写真:ダイハツ、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ゴツゴツ系SUV復権の代表格 新型タフトのいかつい姿
■最大の魅力はいかつい顔とスタイル
「日常生活からレジャーまでアクティブに使える新感覚の軽クロスオーバー」をコンセプトとするダイハツの新型タフトは、ジムニーのように、林や森の中をガシガシ進んでいくような本格SUVは目指していない。
ライバルとして思い浮かぶのは、ハスラーやスペーシアギアのような、さしずめ「オフロード風デザインのオンロードSUV」といった位置づけのクルマだ(余談になるが、こうした派生車を作り出すスピードやアイディアは、スズキがバツグンに優れている)。
タフトをじっと見ていると、なんとなく「HUMMER H2」や「H3」が思い起こされるのは、筆者だけではないだろう。
ボディの大きさは全然違うが、極端に角ばったボディの造形、大きく張り出したフェンダー、垂直に立ち上がったフロントウィンドウ、サイドウインドウの天地高の狭さ、さらに、ディーラーオプションの「メッキパック」を装着すれば、ギラギラで厳つめのフロントグリルにもなる。まさにコンパクトサイズ化されたHUMMERのようだ。ハスラーの丸みを帯びた愛嬌あるデザインとは異なり、やんちゃを好むような若者にも人気が出るのではないだろうか。
■なぜ武骨なSUVルックへ回帰しているのか
近年、武骨なSUVルックのクルマが続々と登場している理由はいくつかある。
たとえばパジェロやハイラックス、サファリのような無骨なクロカンが主流だった1990年代初期は、第一次キャンプブームが到来していた時代。クロカンに乗ってアウトドアを楽しむ、という文化が浸透し始めた時代だ。いっぽう最近は第二次キャンプブームといわれており、武骨なクロカンが流行っていた90年代と同じく、アウトドアブームが再燃している。アウトドアシーンには、流麗なスタイルよりもやはり武骨なスタイルがよく似合う。そのため、武骨ルックに回帰しているのではないか、という環境変化が一点。
そして理由はそれだけではない、と筆者は考える。
流麗でカッコいいSUVに目が慣れてしまったユーザーに「デザインに新鮮味を与えるため」という狙いもあるのではないか。クロカンブームを知らない若者にとっては新鮮であるのと同時に、我々中年以降の年齢層には「子供のころに憧れたクロカン」という、カッコよさや懐かしさも与えてくれる。
流麗なデザインの都会派SUVが「グランピング」なら、無骨な本格クロカンが「本格キャンプ」といったところだろう。多様化の時代、クルマも多様化が必要なのだ。
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