■高い商品力が求められる高級車にスカイアクティブXはマッチする
スカイアクティブXの泣き所は「評価は高いがコストも高い」ところだが、価格5万ドル級の高級車セグメントならそのコストを十分に吸収して商品力アップにつなげることが可能。しかも、マツダが開発中のラージFRプラットフォーム用直列6気筒は、開発関係者によると「パフォーマンスや燃費性能はもちろん最高水準だが、なにより官能性能が素晴らしい」と言われている。
前述のとおり、ポストコロナ時代には高効率内燃機関が再評価されるのは必然で、スカイアクティブXはトヨタのダイナミックフォースシリーズと並んでこの分野のトップランナー。直6 スカイアクティブXにPHVなどの電動アシスト機能が加われば、パワートレーンだけでもワクワクするような期待感があるわけだ。
それにしても、3年くらい前にマツダが新たに直6エンジンを開発中という噂を聞いた時には、「なぜいまさら直6?」といぶかしく思ったものだが、ようやくそれが「必然」であることがわかってきた。
30年ほど前、直6がV6に置き換えられた時の最大の理由は、衝突安全性とパッケージングの問題。前後に長い直6はクラッシャブルゾーンを確保するのが難しいし、FF車に横置きするのも困難。これが当時のトレンドだった。
ところが、現在では衝突安全設計のクリティカルポイントはスモールオフセット衝突。なんと、そこではエンジン幅の狭い直列のほうが設計上有利なのだという。
また、30年前より格段に厳しくなった環境規制によって、排ガス浄化システムを収めるスペースは拡大の一途。排気が左右に分かれるV型より直列のほうがコンパクトにまとめやすいというメリットがある。
さらに、ダウンサイズターボの普及でFFにV6を搭載するメリットがなくなった今、FR=高級車専用となった6気筒エンジンはスムーズさや静粛性などクオリティ面が重要。ここでも、完全バランスの直6の魅力が見直されている。
■2%のシェアでも勝負できる! マツダの次代の戦略
この直6見直しのトレンドは、ほかの自動車メーカーも共有しているはずだが、技術的にも投資コストの面でも、まったくの新エンジンというものはそう簡単に開発できるものではない。
マツダが資本提携しているあのトヨタですらその辺の事情は同じで、かつて大量に直6を生産していたからといって気軽に直6を復活できるかと思ったら大間違い。新エンジン開発のような大型投資は、採算性を厳しく吟味した上でないと容易にゴーサインを出せるものではない。
それゆえ、先日ぼくが藤原副社長にインタビューした時のお答えは「うーん。彼ら(トヨタ)にもプライドがあるからねぇ」というもの。
マツダはどこへ向かうのか「我々はシェア2%でいい」マツダ副社長ロングインタビュー
最近のトヨタは技術提携に柔軟ではあるが、もし直6を使うとなればクラウンやレクサスなどがからむ大規模なプロジェクトになる。それは86/BRZやスープラ/Z4などとはレベルが違うお話で、「それはないんじゃないかな?」というのがぼくの持論だ。
さて、トヨタへのOEMがあるかないかは別として、マツダとしては大きなリスクを取って直6開発に舵を切った。ビジネスの世界ではリスクなしに報酬なしだが、その戦略がうまく開花すれば、マツダにとってのメリットも絶大。ブランドの新たな金看板となり得る。
いわゆる高級車ブランドといわれるクルマの市場規模は、おおむね年間1000万台ほど。うち、ドイツ御三家が約60%強を占め、最下位グループのジャガーやアキュラなどは約20万台程度。2%のシェアを争っている。
マツダは常々「シェアは2%でいい。しかし100人のうち2人のお客様に熱烈に支持されるブランドでありたい」と言い続けている。その言葉どおり、新しいラージFRプラットフォームが高級車市場で2%(20万台)のシェアを確保することができたら、2020年代のマツダには明るい未来が待っていると思います。
【NEW マツダ6予想スペック】
・ボディサイズ:全長4900×全幅1880×全高1420mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1550kg
・エンジン:直6、3L、SKYACTIV-X(300ps/35.0kgm以上)
・予想価格:400万〜450万円(SKYACTIV-X)
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