初代ヴィッツはBセグコンパクトカー界に革命を起こした偉大な功績まみれ!! 国内だけにとどまらずフィアットの牙城も崩す!? 

そんな装備でニュル大丈夫なのか!? という衝撃

ヴィッツの走行性能は決して「安くてチョイ乗る」だけのお買い物クルマに止まらなかった
ヴィッツの走行性能は決して「安くてチョイ乗る」だけのお買い物クルマに止まらなかった

 そして、このクルマが本当に凄かったのは、単なる燃費性能だけではない。走りそのものが非常に洗練されていたことだ。サスペンション形式は、フロントストラット、リアトーションビームという現在ではBセグメントの定番となっている構成だ。

 当時、このリアトーションビームは決して高級な形式とは見なされていなかった。むしろ簡素で、コスト重視の設計と考えられていたのである。

 しかしトヨタは違った。このサスペンションを、パッケージングと走行性能の両立という観点から徹底的に煮詰めていた。リアサスペンションをコンパクト化することで、室内空間を最大化しながら、十分な操縦安定性を確保していたのである。

 しかもトヨタは、このヴィッツをドイツ・ニュルブルクリンクでも徹底的にテストしていた。当時テストドライバーだった故・成瀬弘氏は、ヴィッツのリアサスペンションを初めて見せられた時、「こんなのでニュルが走れるのか」と思ったそうだ。

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あらゆる「制限」が名車を生んだ

RSは1.5Lに排気量を上げ、2000年に登場
RSは1.5Lに排気量を上げ、2000年に登場

 だが結果として、そのトーションビームは全く問題を起こさなかった。むしろ限られたコストの中で、必要十分な性能を成立させていたのである。ここが極めて重要だ。高価な機構を使えば、良いクルマは作れる。しかしヴィッツは違う。限られたコスト、限られたサイズ、限られた排気量の中で、世界基準を成立させていたのである。

 それこそが、このクルマの凄みだった。さらにヴィッツは、モータースポーツの世界でも成功を収める。後に1.3リッター、1.5リッターモデルが追加され、5速MT仕様はラリー、ジムカーナ、ダートトライアルなどで大活躍した。

 特に1.5RSは現在でも高い人気を持つ。車両重量1トン前後という軽量コンパクトボディに、自然吸気エンジン、素直なシャシー特性、そして扱いやすい5速MTを組み合わせたことで、運転を学べるクルマとして完成度が非常に高かったのである。また、ヴィッツチャレンジなどのワンメイクレースも盛況だった。

 優れたコンパクトカーとは、単に安い車ではない。誰もが運転技術を学べる入口でなければならないのである。その意味でもヴィッツは極めて優秀だった。

ヴィッツもまたクルマ界のゲームチェンジャーだった

人気を博したファンカーゴはヴィッツと兄弟関係にあたる
人気を博したファンカーゴはヴィッツと兄弟関係にあたる

 そして忘れてはならないのが、NBCプラットフォームによる兄弟車展開である。4ドアセダンのプラッツ、そしてトールワゴン型のトヨタファンカーゴ。特にファンカーゴは、現代のコンパクトトールワゴンや小型SUVの思想を先取りしていた。

 高い全高、広い後席、優れた積載性。商用にも乗用にも使えるユーティリティ性能は非常に高く、現在のルーミーやライズ、さらにはコンパクトミニバン文化にも繋がっていったように感じる。また4WD仕様も存在したことで、積雪地帯や山岳地でも高い支持を獲得した。

 欧州でもヤリス(ヴィッツ)は大成功を収めた。特にイタリア市場での成功は有名で、トヨタ「イタリアの奇跡」とも呼ばれた。フィアット王国とも言えるイタリアのコンパクトカー市場において、日本車が支持されるというのは当時ほとんど不可能だと思われていたのである。

コンパクトカーはつねに日本のクルマ史に、時に救世主として、あるいはゲームチェンジャーとしてその名を刻んできた。写真は三菱 コルト(左)とホンダ フィット(右)
コンパクトカーはつねに日本のクルマ史に、時に救世主として、あるいはゲームチェンジャーとしてその名を刻んできた。写真は三菱 コルト(左)とホンダ フィット(右)

 しかしヤリスは、その常識を覆した。自身も当時イタリアを訪れた際、街中を大量に走るヤリスを目撃した。また、アルプス山中ではファンカーゴがファミリーカーとして定着している姿を見て、トヨタのグローバル戦略の強さを実感したものだった。

 この初代ヴィッツは、日本国内だけでなく、世界のコンパクトカー市場そのものを変えた一台だったと言える。後にホンダ フィット、三菱 コルトなど、各社が高効率パッケージング型Bセグメントへ本格参入していくが、その流れを決定づけたのは、間違いなく初代ヴィッツだった。

 コンパクトカーは、ただ安いだけの車ではない。限られた資源の中で、人間の生活をどこまで豊かにできるかを追求する使命がある。その意味において、初代ヴィッツは極めて完成度の高い1台だった。そして今なお、多くのファンが存在している理由もそこにある。

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