まだ走り出す時じゃない……じっくり機器をチェック!
着座後は、ステアリング位置を調整する。チルト、テレスコピック機構を操作し、自分に合ったポジションを探る。この時、調整幅や角度変化が適切か、操作に節度感があるかも確認したい。さらにペダル配置、左足の置き場、シフトレバーとの距離感なども重要。
このように停止状態でも確認できることは多い。ペダルを軽く踏み込み、初期反力を見る。スイッチ類の操作感、クリック感、節度感を見る。メーター視認性や死角、ミラーの見え方もチェック対象である。
もしイグニッションONが許されるなら、空調や電装系も確認したい。エアコンの風量変化、送風音、シートヒーターの制御、パワーウィンドウの動作速度。中古車なら液晶欠けやスイッチ不良も発見できるかもしれない。本当に自信のある販売店ほど、こうした確認を嫌がらない。むしろ積極的に触らせ、体感させるはずである。
そして、もし試乗できる機会が得られたなら、その瞬間から集中力を高めてほしい。理想は、店舗出口に小さな段差があることだ。前輪が段差を乗り越え、続いて後輪が通過する。その時の車体への入力を感じ取るのである。衝撃は鋭いか、丸いか。ボディにどの程度伝播するか。振動は一発で収束するか、それとも二次振動が残るか。
ここにはサスペンションだけでなく、ボディ剛性、ブッシュ特性、ダンパー制御、タイヤ剛性まで含めた総合性能が現れる。いい車ほど、不快な情報が少ない。もちろん、何も感じないわけではない。むしろ必要なインフォメーションは明確に伝えながら、不快成分だけを巧みに除去しているのである。
走り出してから重視すべき「フィーリング」とは
ステアリングを切った瞬間も重要だ。応答初期に曖昧さがあるか。切り始めに人工的な軽さがないか。セルフアライニングトルクの立ち上がりが自然か。こうした部分は、車両運動性能の根幹に関わる。また、ブレーキにも注目したい。
最近のクルマには、初期制動を過敏に設定した、いわゆるガックンブレーキな味付けも少なくない。短時間では効いているように感じるが、実際には微妙なコントロール性を犠牲にしている場合もある。踏力に応じて自然に減速度が立ち上がる車は、長時間運転でも疲れにくい。
さらに、転がり始めの滑らかさも重要。アクセルをわずかに開けた時、駆動力が自然につながるか。CVTやATの制御にギクシャク感はないか。エンジン振動が不必要に侵入してこないか。遮音性能は適切か。
こうした情報は、最初の交差点を曲がるまでにほぼ感じ取れる。現代の車は進化したと言われる。確かに安全性能も快適装備も、かつてとは比較にならないほど向上した。しかし一方で走りの質感には依然として大きな差が存在している。
特にタイヤが2〜3回転する間に感じる微振動や入力処理には、メーカーごとの思想や開発力がはっきり現れる。そこに妥協があるクルマは、長く付き合うほど疲労や違和感として蓄積していく。



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