世界に挑んだ最強最速のマシン!!
そして現代の国産スポーツカーで最も衝撃を受けた存在は日産R35GT-Rである。R32GT-RはスカイラインGT-R復活の象徴だった。R33、R34へと正常進化を遂げ、三菱ランサーエボリューションや三菱GTOと互角以上の性能を誇っていた。しかしR35は次元そのものが違った。世界を相手に戦うため、設計思想を根本から変えたのである。
最大の特徴はパッケージングだ。縦置き3.8リッターV6ツインターボエンジンをフロントミッドシップに配置し、トランスミッションはリアアクスルへ移設したトランスアクスル方式を採用。前後重量配分を理想へ近づけるとともに4人乗車を維持したままスーパースポーツとして最高レベルの運動性能を実現した。このレイアウト自体はポルシェ928や944などにも採用例がある。つまりR35GT-Rは世界最高峰のスポーツカーが積み重ねてきた合理的な設計思想を、日本流に磨き上げたのである。
さらにボディ構造も徹底していた。アルミ鋳造部材を効果的に採用し、高剛性と軽量化を両立。サスペンションアームやストラットタワーにも最適なアルミ素材を選択し、適材適所という工学の基本を忠実に実践している。エンジンはドライサンプ化によって高G下でも安定した潤滑を確保し、ツインクラッチDCTも過酷な負荷に耐える設計とされた。ローンチコントロールまで装備し、まさに量産車の限界へ挑戦した一台だった。
結果としてR35GT-Rは筑波サーキットで1分切りを達成する。筑波は全長わずか2.045km、メインストレートも約400mしかない。
このサーキットで半世紀の間にラップタイムは約20秒も短縮されたわけだ。これは自動車技術がどれほど進歩したかを物語る数字でもある。しかし、これ以上ラップタイムだけを追い求める時代ではなくなったとも感じている。
速さは十分すぎるほど手に入れた。今後求められるのは、耐久性であり、扱いやすさであり、何周走っても性能が落ちない信頼性だ。近年のハイパフォーマンスカーはタイヤ交換だけで数十万円、ブレーキ交換でも同様の費用が必要になることも珍しくない。
一方、リアルレーシングカーの入門カテゴリーでは500万円前後で購入でき、何十周走っても安定した性能を維持できるマシンも存在する。つまり、公道では快適なSUVや高級セダンを使い、サーキットでは専用レーシングカーで純粋に速さを楽しむ。そんな欧州的な新しいモータースポーツライフが現実味を帯び始めている。
国産スポーツカーはこれまで、「より速く」を追い求めながら進化してきた。そしてR35GT-Rによって、そのひとつの到達点に達した。これからのスポーツカーに必要なのは、最高速度やラップタイムではない。ドライバーが安心して限界まで走り続けられるタフネスさと長く愛される魅力のあるストーリーである。
本当に優れたスポーツカーは数字だけで語られるものではない。時代を変える技術を持ち、人々に衝撃を与え、その価値が何十年経っても色あせない存在である。今回紹介したのは、まさにそういうクルマ達なのだ。
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