2026年8月に千葉県を襲った記録的な豪雨では、道路の冠水によって多くのクルマが水没しました。
水が引けば、道路に残された愛車を早く移動させたくなるものですが、水没車は見た目に大きな異常がなくても、エンジンや配線、電子部品などに水や泥が入り込んでいるおそれがあり、危険な状態です。キーやパワースイッチを操作しなくても、バッテリーがつながっていれば安心はできません。
水が引いたあとの水没車は、どう扱えばよいのでしょうか。千葉豪雨を受けて出された注意喚起と、過去に冠水車が相次いで発火した事例をもとに、やってはいけない操作と安全に対処するためのポイントを紹介します。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_RYOTA IWASAKI/写真:Adobe Stock、写真AC
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2026年8月13日の夕方から14日未明にかけて千葉県を襲った「令和8年8月千葉豪雨」では、各地で道路が冠水し、多数のクルマが水没しました。
報道によると、千葉市が確認した放置車両は約2500台。レッカー業者には水没車の搬送依頼が相次ぎ、対応が追いつかない状況になったといいます。
クルマの所有者としては、水が引けば一刻も早くクルマを移動させたいと考えるところですが、水没したクルマは、外観に大きな異常がなくても、エンジンを始動してはいけません。水に浸かったクルマは、エンジンや吸気系統、配線、センサー、電子制御装置などへ水や泥が入り込んでいる可能性があります。
とくに危険なのが、吸気口からエンジン内部へ水が入っている場合です。エンジンは、内部に取り込んだ空気をピストンで押し縮め、燃料を燃やした力でクルマを動かしていますが、空気の通り道である吸気口から水を吸い込むと、エンジン内部に水がたまることがあります。
空気は押せば縮みますが、水はほとんど縮みません。その状態で始動すると、上下に動こうとしたピストンが水に阻まれ、行き場を失った大きな力がエンジン内部の部品にかかり、ピストンとクランクシャフトをつなぐ棒状の部品が曲がり破損するなど、エンジンが深刻な損傷を受けることがあります。「ウォーターハンマー」と呼ばれる現象です。
浸水の影響を判断する際に、ひとつの目安になるのが車両の床面です。水が床面付近まで達した、車内に水が入った、エンジンルームに泥や草が残っているといった場合は、始動・起動せずに点検を依頼します。ただし、冠水路を走行した場合は、水位が床面より低くても、クルマが巻き上げた水をエンジンが吸い込むことがあります。走行中に停止した場合や警告灯などの異常がある場合も、再始動してはいけません。
始動・起動していなくても危険!! 水没車が火災を起こす理由
水没車の危険は、エンジンの破損だけではありません。電気系統のショートによって、車両火災が発生するおそれもあります。
クルマは車両を始動・起動していなくても、バッテリーが接続されている限り、一部の回路には電流が流れています。通常、電気は決められた回路だけを流れますが、泥や塩分などを含んだ水が配線や端子の間に入り込むと、その水が新たな電気の通り道となり、本来つながっていない部分にも電流が流れることがあります。
こうして漏電やショートが起きると、配線や端子が異常発熱し、被覆や周囲の樹脂部品を燃やすおそれがあります。水が引いたあとも泥や塩分などが残り、腐食が進んでから発火する場合があるため、放置しているクルマも安心はできません。
令和8年8月千葉豪雨では、豪雨の翌日、千葉市消防局が水没車を自分で始動させず、販売店や整備工場へ相談するよう呼びかけました。千葉の事例ではありませんが、実際に冠水車が発火した事例も確認されており、JAFによると、2004年8月、台風16号による高潮で香川県高松市で多くのクルマが海水に浸った際、自然発火する事態が起きたとのこと。海水に含まれる塩分が車内の電気配線などをショートさせ、発熱したことが原因とされています。
この事例は、塩分を含み電気を通しやすい海水による冠水であり、雨水や河川の水による浸水とは条件が異なりますが、淡水であっても、泥やさまざまな不純物が混じっており、電気系統のショートや腐食が起こる可能性はあります。
国土交通省は、発火防止のため12Vバッテリーのマイナス端子を外し、再接触しないよう絶縁する対処を案内しています。一方、JAFの現在の案内では、自分でバッテリーを外そうとせず、JAFや販売店、整備工場に相談するよう呼びかけています。水や泥が残る車両での作業は危険を伴うため、むやみに触れず、ロードサービスなどに任せるのが安全です。
しかしながら、水が残っている場所へ入る必要がある、車体が不安定になっている、発煙や異臭があるといった場合は、クルマへ近づくこと自体が危険です。作業方法が分からない場合も無理に触れず、ロードサービスや販売店へ任せましょう。周囲の安全を確保でき、端子の外し方を理解している場合に限って作業してください。
とくに、駆動用の高電圧バッテリーを搭載するHEVやPHEV、BEVでは、水没によって車体や配線、バッテリーが損傷している可能性があります。車両の電源がOFFになっていても安全とは判断せず、12Vバッテリーを含め、所有者が自分で処置しないことが原則です。ロードサービスや販売店へ電動車であることを伝え、対応を依頼してください。
煙や火花が出ている、焦げた臭いがする、異音が聞こえる、車体から異常な熱を感じるといった場合は、すぐに車両から離れて119番通報してください。













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