シエンタのエントリーグレード「X」2WD5人乗りのガソリンモデルは214万6100円と、最上級「Z」E-four7人乗りハイブリッドの339万7900円と比べて約120万円以上も安い。この価格差の裏には何があるのか。装備を丁寧に見比べながら、Xグレードの価値を図っていきたい。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部、トヨタ
【画像ギャラリー】シエンタは最廉価グレードでも装備充実!? エントリーグレードXの実力とは(15枚)画像ギャラリー安全性能に「エントリーだから」という言い訳はない
結論から言えば、Xグレードが「十分」かどうかを判断するうえで、まず押さえておくべきなのは安全性能の水準だ。Xグレードにも予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」が標準搭載されており、衝突被害軽減ブレーキ「プリクラッシュセーフティ」やレーダークルーズコントロールといった機能は、最上級グレードのZと変わらない。価格を最優先したエントリーグレードであっても、命に関わる部分で妥協していないという事実は大きい。
日常使いで最も重要な装備が最も安いグレードから省略されていないという構造は、ユーザーにとって安心材料になる。安全性能で差をつけないという設計思想は、価格帯で命の重みを変えないという、メーカーとしての誠実さの表れとも言えるだろう。
Xグレードの装備を細かく見ていくと、オートエアコン、スマートエントリー、電動パーキングブレーキ、そして子育て世帯にとって特に重要な助手席側パワースライドドアが標準装備されている。リアシートは6対4分割可倒式で、レバー操作による簡単な格納にも対応する。これらは「ミニバンとして使う」うえでの本質的な機能であり、Xグレードでも過不足なく備わっている。
つまりXグレードで省かれているのは、あくまで「なくても困らない」快適装備に限られるのだ。ディスプレイオーディオ、デジタルメーター、上質なシート素材、個性的なランプ類のデザインといった部分は確かに割り切られているが、これらは日常の移動という本来の目的を損なうものではない。
「省かれたもの」は、今の時代にどこまで必須か
ここで注目したいのが、Xグレードに搭載されないディスプレイオーディオの重要性だ。スマートフォンのナビアプリは渋滞情報を踏まえたルート案内をこなし、音楽もストリーミングサービスが主流になった今、純正ナビの必要性は10年前と比べて明らかに薄れている。スマートフォンをそのまま活用できる層にとって、ディスプレイオーディオレスという仕様は、削られた機能ではなく単に不要な機能と言い換えることもできるだろう。
デジタルメーターについても同様だ。アナログメーターと4.2インチカラーマルチインフォメーションディスプレイの組み合わせで、走行に必要な情報は十分に得られる。フルデジタル表示の先進感を求めないユーザーにとって、この差は実質的な不便につながらない。
125万円という差額は、何に対する対価なのか
XとZの価格差125万1800円を、あらためて内訳として捉え直してみる。ハイブリッドシステムによる燃費性能の向上、E-Fourによる4WD走行、7人乗り仕様、上質な内外装、そしてディスプレイオーディオやデジタルメーターといった快適装備。これらすべてを積み上げた結果が125万円という数字になる。
逆に言えば、ハイブリッドや4WD、7人乗りといった機能を必要としないユーザーにとって、この125万円はほぼ丸ごと「快適装備とパワートレインのグレードアップ」への支払いということになる。純ガソリン車の5人乗りで十分というライフスタイルであれば、Xグレードを選ぶことでこの差額をまるごと節約できる計算だ。
結局のところ、Xグレードが「十分」かどうかに万人共通の正解はない。長距離移動が多く燃費を重視するなら、ハイブリッドのZグレードには明確な優位性がある。雪道を頻繁に走るならE-Fourの4WDも大きな価値を持つ。しかし、日常の買い物や送り迎えが中心で、スマートフォンのナビで満足できるユーザーにとっては、Xグレードで削られている部分はほとんど「不便」として顕在化しない。
コンパクトミニバンとしての本質は、扱いやすいサイズ、両側スライドドア、シートの柔軟なアレンジであり、これはグレードにかかわらずシエンタ全体で共通している。安全性能に妥協がなく、日常使いの機能も過不足ないという事実を踏まえれば、多くのユーザーにとってXグレードは「妥協の選択」ではなく「合理的な選択」と呼べるのではないだろうか。
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