数々の伝説を残してきた三菱 ランサーエボリューション。速さを追い続けながら、時代とともに電子制御や耐久性まで磨き上げてきた名車だが、長年その開発とレースに関わっていた中谷明彦氏の立場から「最高のランエボ」を選ぶと、意外な答えが返ってきた。開発現場で描かれていた進化の先とミスターランエボが託した思いを振り返る。
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部、三菱
【画像ギャラリー】歴代ランエボ勢揃い!! 初代からファイナルエディションまでイッキ見!(17枚)画像ギャラリーミスターランエボが語るマイベストランエボ
三菱 ランサーエボリューション、通称「ランエボ」。1992年に初代が登場して以来、世代を重ねるごとに進化を続け、最終的にはランサーエボリューションXへと到達した。2015年に「ファイナルエディション」が登場し、長い歴史に幕を下ろしてしまったこと現在でも残念に思っている。
そんな歴代ランエボの中で「マイベスト」を1台選べと言われたら、どのモデルを選ぶのか。それは初めて開発に関与したランエボVでも、歴代最速モデルだったVIII Ⅸ MRでも、最終モデルのXでもない。
自身が選びたいのは、「ランエボXX(20)」だ。ただし、これは実際に発売されたモデルではない。ランエボXのさらに先にあるはずだった、自身が思い描いていたランエボの最終型の姿である。
ランエボ開発の現場に直接関わることができたのは、2008年に登場したランエボXの初期モデルあたりまでだった。その後も毎年進化させていくことを想定し、その先に「ランエボXX」まで続けるプランを考えていたのだ。
しかし、残念ながら2008年を境に、プロドライバーとして、またコンサルタントとしてもランエボの開発に関わる計画は終了してしまった。つまり、自身にとってのベストランエボは完成された中の1台ではなく、「この先、こう進化させたかった」という未来まで含めて存在しているのである。
ランエボV RSが追求した圧倒的な「速さ」
そもそもランエボの開発で、自身が特に強く意識していたのは「速さ」だった。主なテストステージとなった筑波サーキットで、歴代ランエボの中で最も速いタイムを記録したのは、実はランエボV RSだった。当時、完全な吊るしの状態で筑波サーキットを1分4秒3~4秒4程度で走った。これは当時の国産車としては最速クラスのタイムだったと思う。
ランエボV RSは、とにかく速さを実現することに特化していた。薄板ウィンドウガラスを採用し、アルミ製のボンネットやフロントフェンダーによって軽量化。フロントロアアームもアルミ鍛造化され、トレッドを広げ、タイヤサイズも拡大された。シャシーのフロントエンド、リヤエンドにクロスメンバーを配置し捻り剛性を強化。
さらにフロントとリアにはヘリカルLSDを採用しGTOで果たせなかった前輪トラクションの確保に成功していた。余計なものを削り、軽くし、タイヤを太くし、駆動力を路面へ確実に伝える。当時のランエボは、まさに「速く走るためのクルマ」だったのだ。
筑波サーキットでは、最初のテスト走行1周目に、今も語り継がれている「ゼロカウンターステア走法」が生まれたことも広く知られている。ステアリングを大きく切って旋回姿勢を作るのではなく、4輪の駆動力とタイヤのグリップ応答性を使いながら、非常に小さなステアリング操作でコーナーを抜けていく。
ランエボV RSは、それほどまでにサーキットでの速さを追求したモデルだった。フォーミュラカーの応答性を4WDスポーツセダンで追求していたのだ。



















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