速さだけでは生き残れない ヒットを機に変わったランエボへの要求
ただし、何もかもが優れていたわけではない。速さを追求した代償として、耐久性にはまだ課題もあった。トランスミッションは低いギアではマルチシンクロ化されていたものの、高いギアでは剛性などに課題があり、十勝24時間レースなどの長時間耐久ではトラブルの原因になりやすかった。
当時のランエボはスーパー耐久レースのクラス2で圧倒的な強さを見せていた。
しかし、開発の大きな目標は、ひとつ上のクラス1を走るスカイラインGT-Rを打ち破ることだった。だから、乗り心地や騒音、燃費などは優先順位として決して高くなかったのだ。
ところが、ランエボVが爆発的にヒットすると状況が変化していく。海外からのオファーも一気に増え、ランエボに求められる性能は、単にサーキットで速ければいいというものではなくなっていった。衝突安全基準への対応、耐久性の向上、燃費性能、排出ガス規制。
そして、一般ユーザーが日常的に使える質感や実用性も求められるようなになる。それでも開発では、前年のランエボより筑波サーキットで速いタイムを出すという目標を持ち続けていた。タイヤも、耐久性や乗り心地、燃費などを考慮すれば、純粋なグリップ性能だけを追求するわけにはいかない。
それでもラップタイムを1分4秒台に維持できていたのは、ランエボの進化の方向性が間違っていなかった証拠だと思う。
4WDなのにグイグイ曲がる! ACD&AYCが変えたランエボの常識
そして、ランエボの進化を語る上で欠かせないのが電子制御だ。ACD、AYCといった四輪駆動の電子制御によって、ランエボは、ただ4輪を駆動するクルマから、4輪の駆動力を積極的にコントロールするクルマへと進化していった。
特に重要だったのは、それをRSのような軽量のレースベースモデルにも採用することだった。ランエボV RSでは、前後とセンターのデファレンシャルは基本的に固定された駆動力配分だった。
しかしACDによってセンターデフの作動差を制御し、さらにリアにAYCを組み合わせることで旋回時のヨーレートの立ち上がりを積極的にコントロールできるようになる。四輪駆動車は直進安定性には優れていても、サーキットでは曲がりにくいと言われることがある。
その常識をランエボは電子制御システムによって変えていったのだ。市販車そのものの筑波ラップタイムは、世代が進むほど劇的に速くなったわけではない。
速くて壊れない! ランエボVIII・IX MRで到達した完成度
しかし、レース仕様車のタイムは確実に進化していった。そして、特に高く評価しているのがランエボVIII 、Ⅸ MRである。ランエボVIII、Ⅸ MRでは、レース仕様車にもACDやAYCを搭載できるようになり、耐久性も大きく向上した。
実際に十勝24時間レースを完走し、クラス優勝を果たすまでになった。ショートクロスレシオの5速ミッションは軽量でありながら、各ギアにトリプルからダブルコーンまで適切なシンクロ強化を施し、ギアの歯面にはショット加工を加えた。AYCのオイル容量を増やし、トルク移動の範囲を拡大することでサーキットでの適合性を高めていった。
速いだけではなく壊れずに走り切れる。これは競技車両にとって非常に重要な進化だった。そしてランエボXへと進化する。



コメント
コメントの使い方