ダイハツにとってのもうひとつのメリットは?
もう一つは、生産体制だろう。軽自動車販売でも、トヨタ独自の車名でダイハツからのOEM(相手先ブランド商品)をトヨタが販売することにより、ダイハツの販売店網だけで売られる数より多くの軽自動車販売が実現する。
同じように、登録車においても、ダイハツの販売店だけでなくトヨタの販売店でも売られることにより、工場で生産する台数は増加する。
ロッキー/ライズだけでなく、ブーン/パッソや、トール/ルーミー/タンクなども、同じようにダイハツで生産することにより、工場の安定的な操業を続けることにつながり、それは雇用の安定にも結び付く。
ダイハツで働くことに安心を持てることになる。もちろん、企業経営としても安定するだろう。
新型コロナウィルスにより販売が低迷した5月に、ライズが販売台数で2位を獲得したことも、ダイハツの業績安定化に、トヨタとともに販売する車種を持つ意味は大きいはずだ。
そこは、スズキとの提携において、トヨタの販売店でスズキのOEMが販売される様子がないことからも、ダイハツにとって確実な利点いえるのではないか。100%子会社となった意義も出てくる。
トヨタとダイハツの関係は互いの知見活用する利点備える
そのうえで、ダイハツは軽自動車を中心とした販売の強化を独自にはじめている。その一例が、地域密着プロジェクトを含めた、「コトづくり」の取り組みである。
クルマという「モノづくり」だけでなく、消費者との絆を深める活動だ。生活に密着した軽自動車を主体とする自動車メーカーならではの発想といえるだろう。
一つの具体例が、新型タントで実を結んでいる。高齢化社会を迎え、クルマの乗り降りなどに不自由しやすい年配の人に向けて、単に福祉車両を提供するだけでなく、販売店で後付けできるステップや手すりの開発を、理学療法士や自治体、販売店と協力してダイハツは開発した。
トヨタは、福祉車両の充実が国内で一番だとみられるが、標準車に追加機能を加えるだけで、体に衰えを覚える人に身近なクルマにすることができ、そのための費用も二十数万円からそれ以下で済ませることができる。福祉車両に買い替えるより格安だ。
そうした視点を持てるのも、ダイハツならではであり、同時にそれは、福祉車両の知見の豊富なトヨタにも将来的に適応できる内容であろう。
トヨタとダイハツの関係は、互いに棲み分けをしつつ、同時に互いの知見を相互に活用する利点も備えていると思う。
上下や大小だけではみえてこない、創造的かつさらなる成長を促す提携が、ダイハツとトヨタの間で生まれ、育っているのではないか。
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