2019年の東京モーターショーで公開後、11月に発売されたダイハツ ロッキーとトヨタ ライズの5ナンバーSUVは、発売同月にライズがいきなり月販台数4位に着ける7484台を売った。ロッキーも、4294台で16位の成績である。
特にライズは、同じトヨタのSUVであるC-HR(13位)とRAV4(14位)の1.5倍に及ぶ11月の販売台数であり、SUV人気の市場のなかでも、国内において5ナンバー車への期待が大きいことを示している。
しかもライズは、その後12月に2位、年が明け1~2月はカローラを抜いて1位の販売成績で、その勢いはなお衰えずベスト10を下ることはなく、新型コロナウィルスの影響で販売の落ち込んだ5月にも、ヤリスに次ぐ2位となっている。
年間を通じた総数では11月からの5か月間と不利であるものの、昨年4月から今年3月までの2019年度実績でさえ、ライズはC-HRに続く17位という猛烈な人気である。
ダイハツのロッキーも負けておらず、2019年度で38位に着けたが、販売台数ではライズの19年度4万8809台に対し、その4割弱の1万9383台にとどまる。
ただ、トヨタの販売店数が4900店舗に及ぶのに対し、ダイハツは720店舗ほど(代理店を含めると約8300)であるので、販売網の差も考慮する必要があるだろう。
とはいえ、いずれにしても5ナンバーSUVのロッキー/ライズの好調は、ひときわ目に着く。
文:御堀直嗣、写真:ダイハツ、トヨタ
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DNGAから拡大するダイハツの底力
ダイハツといえば、軽自動車を含めたコンパクトなクルマを得意とする自動車メーカーである。ロッキー/ライズにおいても、開発と生産はダイハツが担う。
それでも販売成績においてトヨタには到底かなわない状況が、ダイハツにとってどのような利点としてとらえられるだろうか。
ダイハツは、トヨタの100%子会社だ。同時にトヨタは、スズキとも提携している。
そしてダイハツとスズキは、ことに軽自動車で真っ向勝負する競合関係にある。トヨタとの関係において、ダイハツとスズキのすみわけは、いま一つ明確ではないようでもある。
ロッキー/ライズは、ダイハツが軽スーパーハイトワゴンのタントから採り入れているDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)第2弾と位置付けられている。
DNGAとは、CASE(C=コネクティッド、A=自動運転、S=シェアリング、E=電動化の略)への技術対応と、早い商品構成の充実を同時に刷新することを目指し、サスペンションや骨格の部品配置を新しく再構築したプラットフォームが基になる。
ダイハツは、小さいクルマづくりの知見を最大に活かし、軽自動車から登録車へDNGAを拡大していくという独自路線を歩む。
これまで、一般的にはより高付加価値で、大きなクルマから新技術を導入し、それを大量生産される小型で廉価な車種に拡大採用していくのが自動車業界の常識といえた。
その逆をいくのが、ダイハツのDNGAである。軽自動車ならではの、制約のなかで最大の機能や性能を求めていくやりかたを、登録車にも適応させていくのである。
タントで初採用となったDNGAは、その時点ですでにアジアカーへの展開も視野に入れており、その先に登録車のコンパクトカーとしてのロッキー/ライズも見通していた。
各車種への適合はあるにしても、基礎となる部分はタントの商品力をより高める開発を主体としながら、拡大応用できることで、販売台数自体はライズがロッキーを上回るとしても、開発の投資に対する見返りは軽自動車だけで終わってしまわない、合理的な開発をダイハツは行うことができたといえるだろう。
軽自動車づくりの視点は、トヨタにさえ未知数であり、コンパクトカーのヤリスをTNGAで開発しただけでは見えてこない側面があるはずだ。ここに、ダイハツの存在意義が生まれる。
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