ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数480回を数える人気の連載だ。
今回はホンダがテスト車両に採用しているイスラエルの「モービルアイ」カメラに迫ります。今後の日本の自動ブレーキ技術が大幅に変わるかもしれません。
文:国沢光宏/写真:池之平昌信
ベストカー2017年7月26日号『クルマの達人になる』より再録
■視力のよさが信頼性向上に繋がる!?
驚いた! ホンダミーティングで試乗したテスト車両のレジェンドに、モービルアイ社の最新型カメラが使われていたのである! モービルアイ社の最新型カメラ、現時点で他を圧倒する性能を持つ。
マツダはアクセラ以降に採用を始めるや、あっという間にJNCAPですばらしい自動ブレーキ性能を発揮。
日産もセレナから採用を始め、これまたJNCAPの自動ブレーキ評価で満点を獲得。このカメラの性能をフルに引き出しているボルボXC90以降のモデルもすばらしい。
モービルアイ社の新世代カメラのドコがいいかといえば、視力と分析能力である。自動ブレーキの重要なファクターは3つ。人間でいえば視力と、アタマの回転の速さ、そして経験値。どれかひとつ欠けても性能を引き出せない。
すばらしい野球選手だって視力が0.1じゃボール打てないのと同じ。これまで日本勢で圧倒的に優れた性能を持っていたスバルのアイサイトの大きなアドバンテージのひとつは、視力のよさだった。ライバルと比べ圧倒的です。
大雑把にいえば、アイサイトを視力1だとすれば、ホンダセンシングで使っているレーダー+カメラを合計しても0.1程度。ボンヤリ見えているに過ぎない。
さらにボンヤリ見えているだけだとアタマのよさだって引き出せない。むしろ敏感にしたら誤作動ばかり起こす。ボンヤリした視力には、ボンヤリした判断能力しか持たせられないワケ。だから現在のホンダセンシング、徹底的に使えない。
モービルアイについて詳細はこちら
■視力を補うモービルアイが自動ブレーキに革新を起こすか?
ボンヤリ視力だと歩行者もキチンと見えないのだろう。JNCAPの歩行者試験ではホンダは「認知できないので」と辞退したほど。
そんなホンダがモービルアイ社の最新型カメラを使っていたのだから驚いた! ホンダというメーカー、独自開発を好む。そいつがいい方向に作用しているならすばらしいのだけれど、自動ブレーキに関していえばずっと足を引っ張ってきた。
技術者に聞いてみたら「使っているカメラのメーカーはまだ公開できないです」。そらそうだ。まだ言えないと思う。
周辺取材してみたら、どうやらモービルアイ社の新世代カメラをテストしてみたところ、あまりにいい性能なので腰を抜かしたそうな。
参考までに書いておくと、モービルアイ社のカメラには、カメラの性能と同等の判定能力持つ回路も付く。自動車メーカーは各社ごとに持っているノウハウで商品化していけばよい。
最も古くから自動ブレーキを手がけているホンダだけに、いいカメラと判定能力があれば、すぐにJNCAPで満点を取れることだろう。
すでにマツダと日産はモービルアイ社の新世代カメラを導入ずみ。日産陣営の三菱自動車も遠くない将来、採用していく。そして1~2年スパンでホンダも採用を始めるんじゃなかろうか。
スバルはおそらくアイサイトを磨くと思う。となると問題はトヨタ。レーザー+カメラのセーフティセンスCも、レーダー+カメラのセーフティセンスPも、今のところ非常に厳しい。トヨタはアイサイトを使うのが最もいい選択だと思う。
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