混合問題の背景にあるのは、スタンド拠点数とガソリン消費量の減少
レギュラーガソリンについては元売り各社が在庫を融通し合っているのは、以前から公表されていた。
製油所や貯蔵タンクからの距離などの立地条件により、輸送効率を考えた配送を行なっていたのだ。それは見方を変えれば、それだけ日本の元売り会社のガソリンは品質が高く、安定していたということになる。
全国、どこのガソリンスタンドで給油しても、エンジンの調子がおかしくなることなく安心してドライブを続けることができた。これを普通と捉えていたのだから、日本のドライバーは恵まれていたともいえる。
だが、この四半世紀の間にガソリンを販売する環境はどんどん変化していて、厳しさが増す一方なのである。そこにあるのはGSの存続問題とガソリンの消費量という問題だ。
ガソリンスタンドの拠点数は1995年3月末の6万421軒をピークに年々減少している。ガソリンスタンドが抱える問題は人手不足と、地下タンクの老朽化、それに売り上げとなるガソリン消費量の減少だ。
2019年3月には3万70軒(資源エネルギー庁発表値)と、前年に比べ674軒の減少とやや減少幅が縮小傾向にあるが、この24年で半分以下にまで減っているのである。
都市部の競争の激しいところが減少しているだけでなく、郊外の幹線道路や過疎地、高速道路のサービスエリアでもガソリンスタンドが廃止され、給油の空白地帯が発生している地域もあるほどだ。
クルマの燃費が向上しただけでなく、ドライバーの人口やクルマを利用する頻度が減少していることから、右肩下がりでガソリンの消費量が減っており、毎日のように日本のどこかのスタンドが廃業しているのである。
ガソリンの消費量は2005年の6万1500kLをピークに減少傾向にあり、2010年には再び増加に転じたものの、2019年は4万8248kLと今や5万kLを割り込むまで減少している。ガソリン消費量の変化を見ても、その傾向は分かる。
今や年間の走行距離は平均7000kmに満たないと言われているが、3大都市の周辺と地方では、ドライバー一人当たりのガソリン年間消費量は大きく異なる。2018年のデータだが、県庁所在地でドライバー一人当たりのガソリン消費量が最も多かったのは、鳥取県の701.9Lだった。
一方、最も少ないのは大阪市の132.2L、次いで東京都の140.3Lが続く。鳥取とは実に5倍以上もの開きがあるのだ。
しかもハイオクガソリンの占める割合は全体の9%ほどしかなく、もともと利益の薄い商品であるガソリンにあって、輸入車や高性能車ユーザーのためにハイオクガソリンを安定供給させるのはコスト面からも厳しいものがあった。
それが清浄剤の配合率減少や貯蔵タンクの共有という手段を選ばせてしまった原因だ。
都内でも一部のクルマ好きは、ガソリンを消費して給油にいくことすら儀式の一つとして楽しむが、一般ドライバーにとって給油は2~3カ月に1度の面倒な作業と化しているのだろう。
そのため都市部での燃料消費は非常に少なくなっており、競争が激しかったところのガソリンスタンドが1軒、また1軒と消滅していき、地方でも郊外のスタンドは需要減から経営が成り立たなくなってきている。それでも元売りは儲けているではないか、という指摘もあるだろう。
しかし企業であるから存続し続けるためには利益を追求するのは当然のことだ。それに電気やガス同様、エネルギーを供給する公共性の高い事業を営む企業には、安定供給のための健全な経営が求められる。
ガソリンや軽油、灯油は供給不足となるとパニックになる恐れがあるため、日常的には不足しないよう供給能力には余裕をもたせる必要があり、しかも石油を蒸留することで軽油やナフサ、ガソリンや重油を作っている関係上、特定の油種だけを多く作ることが難しい。そのためダブついたガソリンは、燃料油業界で融通しあってきたという歴史がある。
それが業転玉と呼ばれるガソリンで、異なる元売り会社の系列スタンドが購入するほか、系列に属さない独立系のガソリンスタンドが仕入れることで、系列店より安い価格で販売してきた。
以前はガソリンの消費量が減少しても製油所はそれなりの拠点数があったため、自社の販売ネットワークでは製造したガソリンがダブつくこともあったので業転玉が存在したが、元売り会社の統合が進んだ今では、製油所の数も絞り込まれ、余剰ガソリンはほとんど出なくなった。
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