多彩なバリエーションは吉と出た!? 新型フィット 発売5か月の「人気度」

 今は軽自動車と並んでコンパクトカーの人気が高い。運転しやすいサイズで燃費も優れ、今は安全装備の水準も高まった。価格も以前より上昇して、ノーマルエンジンを搭載する売れ筋グレードが160~180万円に達するが、それ以上に安全装備や環境技術が充実した。

 価格上昇には、消費増税も影響を与えている。2004年まで消費税を別途表示していた時代に160万円だったクルマも、総額表示で消費税率が10%であれば176万円になる。こういった事情を考慮すると、コンパクトカーは今でも割安だ。

 そこで発売から5カ月を経過したフィットの人気を改めて考えてみたい。

文:渡辺陽一郎/写真:HONDA、平野学、池之平昌信

【画像ギャラリー】5つのタイプがそれぞれ個性を主張!! 一番人気はホームだがどれを選ぶ?


新型フィットは売れているのか?

 2020年6月におけるフィットの国内販売ランキングは、軽自動車/小型車/普通車をすべて合計した総合順位で7位だった。

 1位は2017年(暦年)以来、国内販売のトップを独走するN-BOXだ。2位はライズ、3位はスペーシア、4位はヤリス、5位はルークス、6位はカローラシリーズと続いて、7位がフィットになる。

新型フィットは2019年10月の東京モーターショー2019で世界初公開され、その約4か月後の2020年2月14日から販売を開始

 フィットは新型車の割に順位が低い印象も受けるが、6月には9000台以上を登録して販売は好調だ。

 またコロナ禍の影響もあり、6月も国内販売台数は、昨年に比べて23%減少した。ホンダは28%のマイナスだ。その意味で6月の販売ランキング順位は、本来の人気を反映しているとは限らない。

フィットのパワーユニット、駆動方式比率

 フィットの各バリエーションの販売構成比はどうだろうか。現時点(2020年7月)までの集計によると、フィットの国内登録台数の内、1.3Lのノーマルエンジンは31%で、1.5Lのe:HEV(ハイブリッド)は69%であった。

 発売直後は28%:72%だったから、今はノーマルエンジンの比率が少し多い。発売直後にハイブリッドなどの高価格車が中心に売れて、その後にノーマルエンジンが増えるのは一般的な傾向だ。

 駆動方式の比率は、現時点では2WD(前輪駆動)が85%で、4WDは15%になる。販売店では「4WDは納期が長い」と言うから、生産の遅れによって一時的に4WDの比率が下がっていることも考えられる。

旧型フィットはモーターにDCTを組み込んだスポーツハイブリッドi-DCDだったが、新型では新開発の2モーターハイブリッドのe:HEVに変更

5タイプの販売比率

 そしてフィットはモデルタイプの数が多い。実用指向のベーシック、質感と装備水準を高めた主力グレードのホーム、スポーティなネス、SUV風で3ナンバー車のクロスター、豪華指向のリュクスがある。

 この5グレードをノーマルエンジンとe:HEVの両方に用意した。

 従来のスポーティグレードはRSで、サスペンションに変更を施して走行性能も高めていたが、現行型のネスでは撥水シート生地などが特徴だ。

 クロスターの内装を5ナンバーサイズのボディに組み合わせて、フルオートエアコンに専用装備となるプラズマクラスターを内蔵したのがネスになる。5グレードの中では、魅力と位置付けがわかりにくい。

クロスター(手前左)、ホーム(手前右)、ベーシック(奥右)、ネス(奥中)、リュクス(奥左)という5タイプをラインナップするチャレンジングな販売戦略

 現時点における各グレードの販売構成比は以下の通りだ。( )内は発売直後のデータになる。

【フィットのグレード別販売構成比】 
・ベーシック:20%(19%)
・ホーム:47%(47%)
・ネス:5%(6%)
・クロスター:14%(14%)
・リュクス:13%(14%)

※( )内は発売直後のデータ。直近のデータが全部合計して99%になっているのは小数点以下を丸めているため

ベーシック、ホーム、ネス、クロスター、リュクスの5タイプにすべて、ガソリンとハイブリッド、FFと4WDをラインナップ

ホンダはメーカーの計画に沿って売る傾向が強い

 発売直後と現時点で大きな変化はなく、ベーシックとホームの2グレードを合計すると70%近くに達する。逆にネスは5%と少なく、リュクスも若干減った。クロスターは14%で横這いだ。

 前述のとおりネスの魅力はわかりにくく、売れ行きも低迷している。今後装備や内装をわかりやすいように見直すか、モデューロXや以前と同様のRSに変更してネスは廃止することも考えられる。

最も売れているのは価格、装備のバランスに優れたホームで、デビュー当初から人気が高く、販売されたフィットのほぼ2台に1台はホームだ

 SUVの人気が高まった市場環境を考えると、クロスターの14%も少し控え目だ。

 ただし販売店では、「クロスターは販売計画台数が少なく、納期が約3カ月を要する。在庫車の豊富なホームなら1カ月以内、メーカーに発注しても1.5カ月で納車できるから、クロスターの納期は圧倒的に長い」という。

 こうなると購入条件も違ってくる。

 ホームの在庫車を選ぶと、商談次第では下取り車の売却額が高まったり、ディーラーオプションのサービス装着が多少増えたりする。

 それが納期を3カ月に伸ばしているクロスターでは期待しにくい。販売店も消極的になるから、クロスターの販売比率も増えにくい。

ネスはアクセントカラーが特徴的であはあるが、現状では大きな成果を上げていない。このままではマイチェンジに消滅の可能性もある

 もともとホンダの場合、メーカーの生産計画に沿って売られる傾向が強く、ステップワゴンも標準ボディは販売比率が下がった。

 その結果、e:HEVはエアロパーツを装着するスパーダのみに用意されている。ステップワゴンの発売時点では、標準ボディの専用色として乳白色のミルクグラスパールを用意したが、結局は廃止された。

 売りやすいグレードやボディカラーを重点的に生産する傾向は他メーカーにも見られるが、ホンダの場合は行き過ぎた印象も受ける。現行フィットのネスもそうだが、個性的な仕様を開発しながら廃止されるのは惜しい。

クロスターはブラックアウトしたオーバーフェンダーを備えるクロスオーバーSUVタイプで、5タイプで唯一全幅が1725mmの3ナンバーボディとなる

フィットの人気オプション

 人気の高いメーカーオプションは、1位がホンダコネクトとナビ装着用スペシャルパッケージのセットだ。これを装着すると前席の天井に緊急通報ボタンが備わり、リアワイドカメラも含まれるから安全装備としても機能する。

 このメーカーオプションに、ディーラーオプションの純正カーナビを組み合わせるわけだ。

リュクスのインテリアはエクステリア同様にアクセントカラーが入り、撥水シートになる。ステアリングヒーターは専用オプション(4WDは標準)

 そのほかリュクス専用のステアリングヒーター(リュクス4WDには標準装着)、クロスター専用のルーフレールも、装着比率の高いメーカーオプションとされている。

 リュクス専用のステアリングヒーター、クロスター専用のルーフレールといった限定的な装備が装着比率の高いオプションになるのは不思議な気もするが、その理由は、現行フィットではメーカーオプションの種類を減らしたからだ。

 従来型はメーカーオプションが多岐にわたり、組み合わせの種類も多すぎると判断された。この課題を解決するために、現行型ではグレードを5種類に増やして、メーカーオプションを減らした。

 つまり5種類のグレードと数少ないオプション設定も、メーカーが効率を優先させた結果といえるだろう。

アクティブ派に人気のクロスターのルーフレールは4万4000円でオプション設定されていて、クロスター購入者の装着率は高いという

脅威はヤリスよりも同門のN-BOX!?

 残価設定ローンの利用率は、フィット全体で28%だという。

 フィットはコンパクトカーだから、法人が社用車として購入したり、レンタカーなどに使われるケースも多い。残価設定ローンの利用率が高い車種ではないから、28%は妥当だと思われる。

新型フィットはデビュー当初は残価設定ローンの利用率が高かったようだが、時間の経過とともに30%弱程度に落ち着いている

 フィットの競争相手として真っ先に思い浮かぶのは、ほぼ同時期に発売されたヤリスだが、身内のN-BOXも手ごわい。

 N-BOXは軽自動車では最大級の室内空間を備え、後席のドアはミニバンのようなスライド式だ。シートアレンジは多彩で、後席を畳めば自転車も積みやすく、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能も充実させた。

 そしてN-BOXの価格はエアロパーツを装着したカスタムG・Lホンダセンシングが174万6800円だから、フィットにノーマルエンジンを搭載したホームの171万8200円とほぼ同じだ。

現代のベストセラーカーのスーパーハイトワゴン軽自動車のN-BOXは、フィットだけでなくホンダ車のユーザーをかなり食っている状況

 フィットのハイブリッド比率が高い背景には、ノーマルエンジンの価格帯はN-BOXに押さえられ、フィットの売れ筋が上級化した事情もある。

 N-BOXが絶対的なベストセラーになると、フィットも少なからず販売力を削がれる。フィットがN-BOXと共存しながら売れ行きを伸ばすには、販売の好調なハイブリッドの価値をさらに高める特別仕様車、あるいはグレード追加などが求められるだろう。

フィットモデューロXは東京オートサロン2020でコンセプトカーが公開された。RSに代わる走りのモデルとして、早ければ2020年内に発売開始と予想

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