高性能なエンジンの能力をより引き出してくれるハイオクガソリンが、実は石油元売り各社の独自商品ではなく、在庫を融通し合っていたことが、6月27日付け毎日新聞(電子版)の報道により明らかになった。
しかし、一般的にはドライバーであってもガソリンについてよく知らないことも多い。そこで、本稿ではハイオクがレギュラーガソリンとどのように違うのか、オクタン価が高いというが、それによりどんな利点があるのか?
いま一度、ガソリンについて考えてみたい。
文:高根英幸
写真:編集部、Adobe Stock、HONDA
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そもそもなぜ「ハイオク」と「レギュラー」があるのか
日本のガソリンスタンドで販売されているガソリンには、「レギュラー」と「ハイオク」の2種類があることは、ドライバーならほとんどの人がご存じだろう。
ハイオクとは、オクタン価が高いガソリンのことで、日本ではJIS規格で96オクタン以上がハイオクガソリンと定められている。
欧州では日本のハイオクに近い95オクタンが「レギュラーガソリン」(規格は91オクタン以上)で、レギュラーのほか98オクタン相当(規格は96オクタン以上)の「プレミアム」。
さらに100オクタン(規格は98オクタン以上)は「スーパープラス」といったように、3種類もガソリンが用意されている。これは地域によってガソリンの品質にバラつきがある、という事情もあるからだ。
ガソリンに種類があるのは、そもそもクルマは贅沢品でエンジンの性能をより引き出して走れる燃料と、大衆車用の燃料があったからだ。
自動車メーカーはエンジン性能の高さをアピールしてクルマの魅力を誇ったように、ガソリンスタンドでは高いエンジン性能を活かせる高品質なガソリンとしてハイオクを販売してきた。
ガソリンの製造技術が高まり、エンジンの制御も緻密になった現代では、レギュラーガソリンでも日本中どこを走っても問題が起きることはないが、1980年代以前は上り坂が続くような峠道ではハイオクガソリンを入れることで登坂性能を高めるような使い方も珍しくなかった。
石油元売り会社は、ガソリン販売による利益を稼ぎ出すために、ハイオクガソリンにはさまざまな工夫を凝らし、同業他社と差別化を図ってきた歴史がある。
それが近年、ほとんど同一のハイオクを融通し合っていたことが発覚した。ハイオクガソリンの販売量が減少して、安定して供給しながらコストを抑えることが難しくなってきているのだ。
ハイオクとレギュラーは何が違う?
ガソリンは精製しただけで商品になっている訳ではない。ガソリンはさまざまな成分が混ざった(といっても元々は石油だが)複雑な物質だが、さらに色々と添加して作り上げられる。
まず精製されたガソリンには、改質されたオクタン価の高いガソリンをブレンドしてオクタン価を高めている。これはナフサを改質したモノやガソリン自体を改質して作り上げてたものだ。
さらに、ETBE(編注:バイオエタノールと石油系ガスのイソブテンを合成したもの)などのオクタン価向上剤を添加することでオクタン価を調整している。このETBEは植物由来のバイオガソリンでCO2排出を実質的に抑える効果もある。
加えてハイオクガソリンには、エンジン内部にデポジット(燃え残り)を付きにくくする清浄剤が添加されている。これによって、街中をゆっくり走ったり渋滞などでもエンジンの内部にデポジットが蓄積されにくいのだ。
ところで「レギュラーとハイオクではオクタン価が違う」、ということは分かっても、オクタン価が違うとエンジンにとって何が変わるのかご存じだろうか。
オクタン価とは、ガソリンの“燃えにくさ”を表す指標だ。つまりオクタン価が高い方が、ガソリンは燃えにくいのだ。
「ハイオクの方が燃えやすくて高性能なんじゃないの?」そう思う人もいるだろう。ガソリンは燃えやすい燃料だが、それが問題となる場合もあるのだ。
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