数年後にはシェルの貝殻マークが消滅、GS再編が加速する?
これまでの国内市場では、統合によりENEOSが拠点数、販売量とも圧倒的であり、国内の燃料油販売量では5割のシェアを占めている。
次いで多いのは出光興産の2割弱、昭和シェル石油の1割強となっており、両社は2019年4月1日に経営統合しており、合わせて3割のシェアを握るグループになった。
コスモ石油は1割のシェアに留まっており、残りの1割をキグナスと太陽石油で分け合っている状態だ。
昭和シェルを子会社として経営統合した出光興産は、2021年4月より新しい統一ブランドとして順次SSの模様替えを行なっていくことになっている。
新ブランドは出光のアポロマークをベースとしたものになり、シェルの貝殻マークは消滅してしまうようだ。
前述の独自ハイオクガソリンのShell V-Powerについては、新ブランド移行後の扱いは現時点では未定となっているそうである。
その昭和シェル石油も、昭和石油とシェル石油が合併して誕生した元売り会社だったことを覚えているだろうか。
またシェル石油を米国生まれのブランドだと思っている人も多いようだが、実はシェルも日本で誕生したブランドだ。
日本の燃料油販売は20世紀初めには始められているが、シェルは英国と日本で貿易を営んでいたマーカス・サミュエル(後に初代バーステッド子爵となる)が、貝殻細工の製造販売で成功し、タンカーを購入して石油も手がけるようになった。
そのため早くから日本でも石油販売を行なってきたのだ。欧州ではシェル石油とオランダのロイヤル・ダッチは早くから提携していたが、2005年に完全に合併してロイヤル・ダッチ・シェルとなり、2016年までは昭和シェル石油はその子会社だった。
一方の出光興産は1911年に出光商会として設立以来、石油元売りとして発展を続けてきた由緒ある企業だ。それだけに創業家が昭和シェル石油との合併に難色を示して、なかなか話が進まなかったのも理解できる。
ENEOSは、1888年に設立された日本石油が発端。そこから1940年代まで全国にたくさんあった製油メーカーなどを吸収合併していき、1999年には三菱石油、2008年に九州石油、2010年にジャパンエナジー(前・共同石油)、2017年に東燃ゼネラル石油(2012年に同社が日本のエクソンモービルを吸収)を合併してJXTGエネルギーとなり今年6月、ブランド名だったENEOSに社名変更されている。
コスモ石油も1900年前後に各地に設立された製油所を合併する形で大協石油として1939年に設立。
1933年設立の丸善石油と1986年に合併してコスモ石油へとなった。このように石油元売り会社は、銀行や損保会社と同様、統合によって効率化や競争力の向上を図ってきた。
■日本の石油元売りの再編動向(2020年7月現在)
ほんの20年前くらい前までは、街中には様々なブランドのガソリンスタンドが点在していた。価格やサービス、立地やブランドなどで、クルマ好きにはお気に入りのガソリンスタンドが存在していたものだ。
それが不景気になり、さらに環境問題からクルマの燃費が追求されることになって、ガソリンの消費量は年々減少傾向になって、ガソリンスタンドの拠点数も減少&セルフ化により省人力化が進んでいるだけでなく、元売り各社も合理化を求められてきたのである。
現在、ガソリンスタンドのブランドは出光、シェル(今後アポロに統合)、ENEOS、コスモ、キグナス、SOLATOの6ブランドに集約されてしまった。
そして業転玉の減少により、ホームセンターなども展開していた独立系のスタンドは徐々に姿を消している状況だ。
出光興産は今回の新ブランドへの移行によって、燃料油の販売だけでなく、EVの充電設備を備えたり、マイクロEVのシェアリングの拠点とするなど、エネルギー企業としてモビリティの進化に対応していく姿勢を見せている。
「これから出光SSとシェルSSは統一した新ブランドアポロステーションとして運営していくことになりますが、当社としては現在の6400拠点のSSを維持していけるよう努力していく所存です」(出光興産広報部)。
化石燃料は使わない方が地球環境のためには優しいのだろうが、あまりにガソリンスタンドが減り過ぎてしまうと、過疎地や給油空白地での問題が大きくなる。
一時はリッター100円に近づくかに思えたレギュラーガソリンの単価も、中国の経済回復の影響か、このところ徐々にまた上昇してきている。
コロナ禍により移動が制限されるなか我々ドライバーは、安全で快適な移動のためにクルマを賢く使い、ガソリンを無駄遣いしないよう工夫しながら運転を楽しむことを心がけようではないか。
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