アイドリングストップ「3つの盲点」とは
ここまでのデータではそれなりの燃費向上があるように見えるアイドリングストップだが、年間を通した使用や長い目で見てみると、意外な盲点もいくつかある。
【1】常時、基準ほど燃費が向上する訳ではない
代表的なのがクーラーとヒーターをガンガンに使う夏場と冬場だ。
夏場はアイドリングストップしても暑さによってはクーラーのためすぐにエンジンが再始動、停止時もアイドリングストップしない場合がある。
また、冬場の特に始動直後だとエンジン車のヒーターの熱源は冷却水だから、冷却水の温度が一定以上に上がらないとアイドリングストップしないことが多々ある。
加えて、ミニバンのように室内が広いクルマだとアイドリングストップが減少する機会が特に多くなりがちだ。
【2】フィーリング面での違和感
これは車種による違いも大きいのだが、アイドリングストップの開始が「○km/h以下になったら」とか、そこにブレーキの操作量の変化が関係してエンジンが再始動するというものだと、止まりそうで止まらない渋滞などで不必要なアイドリングストップが起きることがある。
その場合アイドリングストップが煩雑に感じたり、「エンジンを止めたのはいいけど、掛けるのにも燃料が必要なのだから、あまりに煩雑なアイドリングストップはむしろ燃費に悪影響なのではないか」という懸念も生まれる。
【3】12Vバッテリー代の高さ
アイドリングストップ装着車の12Vバッテリーは、大型かつ対応品となるため、通常のものの1.5倍程度することが多い。
さらにアイドリングストップ装着車の12Vバッテリーは、エンジン始動が多いため負担が大きく、寿命も通常の12Vバッテリーの7割といったところだ。
この2つが重なると長い目で見た12Vバッテリーに掛かる費用は、通常の2倍程度となり、アイドリングストップで燃料代を節約したとしても費用対効果があるのか微妙だ。
さらに環境負荷という観点で見ても「燃料の消費が減ったとしても、バッテリーの消費が増えるのはいいのか?」という疑問も浮かぶ。
アイドリングストップはこれから増える? 減る?
トヨタ以外も仮に最新トヨタ車のようにエンジン車のアイドリングストップをなくす方針に舵を切ったとしても、アイドリングストップはトランスミッションも関係するものだけに、現在のこれだけ普及した状況からアイドリングストップなしにするというのも難しいのではないだろうか。
(RAV4やハリアー、ヤリスのガソリン車がアイドリングストップなしにできたのは、トランスミッションを含めたクルマ全体がTNGAコンセプトに移行するタイミングだったのも幸いしていそうだ)
もう1つの見方としては日本でもCAFE(企業別平均燃費規制)が始まると、メーカーとしての平均燃費を上げる必要がある。そのため必ずしもすべてのクルマの燃費を上げる必要はないとしても、量販車の燃費は上げざるを得ない。
そうなると「前述したアイドリングストップの盲点を考える以前に、燃費を上げないとメーカーの存続にも関わるので、カタログ燃費を上げるためにアイドリングストップは必須」となり、アイドリングストップ装着がさらに増えるということも考えられる。
この2点を総合して将来的なアイドリングストップの装着を考えると、CAFÉへの対応も含めたメーカーの状況によって有り無しがハッキリする二局化となっていくのかもしれない。
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