2020年2月10日から販売を開始したトヨタの主力コンパクトカーのヤリスは、先代モデルのヴィッツまでとコンセプトを大きく変更して登場。
ヴィッツが万人受けを狙ったバランス型コンパクトだったのに対し、ヤリスは言ってみれば走りに特化したプレミアムコンパクトだ。
売れて当たり前、売れないと死活問題の主力モデルのヤリスでトヨタは危険な賭けに出たとも考えられる。
デビューから4カ月の販売台数を見る限りでは、トヨタはその危険な賭けに勝利しているようにも見えるが、ヤリスが売れている理由について渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、HONDA、DAIHATSU、平野学
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コロナ禍での登録台数トップの手放しで喜べない理由
2020年4月と5月の登録台数を見ると、ヤリスが2カ月連続して小型/普通車の1位になった。国内販売の総合1位はN-BOXだが、2位にはヤリスが入る。小型/普通車の2位は、4月がフィット、5月はライズであった(5月のフィットは3位)。
ヤリスは2020年1月から予約受注を開始しており(正式発売は2月10日)、1月時点の契約で納期は3カ月に伸びていた。4~5月に登録された車両の多くは、1~2月、遅くとも3月上旬に契約されている。
コロナ禍で外出自粛が要請される中で、ヤリスがたくさん契約されたわけではない。
逆に納期が全般的に短い軽自動車の影響は大きく、2020年5月の登録台数は、小型/普通車が40%減に対し、軽自動車は53%の大幅なマイナスになった(前年同月比)。
そうなると緊急事態宣言によって4/5月の契約が減った影響は、今後の登録と納車に影響を与える。販売店によると、「最近のヤリスの納期は2カ月から2カ月半」なので、緊急事態宣言による受注の落ち込みは、6月から7月の登録台数に響く。
ヤリスはヴィッツの後継車種だから、乗り替え需要も豊富だ。
また2020年5月1日からはトヨタ系列の全店が全車を扱う体制に移行し、今はどこの店舗でもヤリスを購入できる(以前は東京地区を除きネッツトヨタ店のみ)。
だとすればネッツトヨタ店以外でアクア、カローラ、ポルテ&スペイドなどを購入していたユーザーの乗り替えも考えられる。販売体制の変化で、ヤリスの売れ行きが今後も保たれる可能性もある。
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