■わずか3年弱…ヴェロッサが消えた理由とは?
「エモーショナルであること」を目指した意欲作(?)が、人々のエモーション(感情)を刺激することなく短期間で敗れ去った理由。それは、「考え方が甘かったから」でしょう。
当時のトヨタの担当者や経営陣が何を考えていたのか、筆者は知りません。しかし当然ながら、「こういった感じの南ヨーロッパ調デザインを新型(9代目)マークIIにくっつければ、ある程度は売れるに違いない」と確信していたはずです。
結果として売れるかどうかは「時の運」にも左右されるものですが、そういった確信なしに、巨額のコストが必要となる「ニューモデル」が開発および発売されることは絶対にありません。
客を甘く見ていたのかな……としか言いようがありません。
まず第一に甘く見られたのが、トヨタにとっては大事な大事な存在であるはずの「トヨタ党」の皆さんです。
この、とってつけたかのようにアンバランスなデザインとフォルムであっても気にならないぐらい、トヨタの車を買う人々は審美眼がないと判断されたのです。
「この程度の“なんちゃってアルファロメオ”でも、一部のお客様は泣いて喜ぶだろう」と甘く見られたのです。
しかし当時のトヨタ党の皆さんは、当然ですが「審美眼がない」なんてことはありませんでした。その証拠が、「月販1000台すら行かなかった」というヴェロッサの販売成績です。
そして二番目に甘く見られたのが、当時の「輸入車党」の皆さんでした。
「ちょっとイタリア車っぽい雰囲気にすれば、輸入車びいきの人たちもけっこう買ってくれるんじゃね?」なんていう軽い口調ではなかったでしょうが、しかしそのような考えに基づいて、このデザインは採用されたはずです。
とんでもない思い違いです。
確かに、ヴェロッサのフロントマスクはちょっと悪くない感じもしますが、全体のフォルムは明らかにマークIIです。
別にマークIIが悪いというわけではなく、実直なセダンであるはずのマークIIに、ポンとアルファロメオ風のフロントマスクを付ければけっこうイケるんじゃね? もしかしたら受けるんじゃね? みたいな安直な考えに、腹が立つのです。
筆者のような輸入車党は、もっとちゃんと「全体」を見ています。何もアルファロメオの「盾」だけを見ているわけではないのです。
以上、多少言葉が過ぎたかもしれませんが、このような流れでトヨタ ヴェロッサは「トヨタ党にも輸入車党にも響かない車」として、その短い生涯を終えました。
その後、いわゆるドリ車として人気を博したようですが、それはまた別種のお話です。
「このような車がまたトヨタから登場しやしないか?」と一時は心配に思っていましたが、そんなことはないでしょう。
今やトヨタは、ヤリスや新型ハリアーなど、決してどこかの国の半端な模倣ではない「オリジナルのエモーショナルデザイン」を堂々と展開しているのですから、筆者ごときのチンピラが心配する必要はまったくないのです。
■トヨタ ヴェロッサ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4705mm×1760mm×1450mm
・ホイールベース:2780mm
・車重:1530kg
・エンジン:直列6気筒DOHCターボ、2491cc
・最高出力:280ps/6200rpm
・最大トルク:38.5kgm/2400rpm
・燃費:9.4km/L(10・15モード)
・価格:337万円(2001年式 VR25 4速AT)
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