「障害物なしでの加速」をどう判断するのか?
ここで注意しなければならないのは、これらの従来システムが、車両前方に備わる超音波センサーで検知できる壁やガラスなどの障害物がある場合の“踏み間違い事故”に対応していたことだ。
たとえば、車両前方に障害物や車両や歩行者などが存在しない場合には機能せず、前述の事故のような場合ではアクセルとブレーキ、両ペダルの踏み間違いによる誤加速を防げなかった。
これを積極的に防止しようとすると、ドライバーが通常の走行時に、自らの意志で加速しようとした場合には走行を妨げる要因となる可能性が生じてしまうからだ。
そこで今回の「急加速防止装置」としては、ドライバーの意志を尊重しつつ、どのように運転の妨げにならないような制御を実現するのかが課題となったはず。
通常の運転と事故防止の両面の機能を両立させることが、単純に考えると技術的なハードルがかなり高いように想像されたのは、走行時に瞬時に得られる画像を含む情報だけでは、ドライバーの意志の有無を正確に判断できないからだ。そこでトヨタが導入したのが、いわゆる「ビッグデータ」の活用だった。
さらにトヨタは、新開発した“急加速防止機能”を仕様の異なるスマートキーを設定することで、運転上の不都合が生じないように工夫を施したのだ。
トヨタのリリースから抜粋すると、「トヨタが確認したデータによると、インテリジェントクリアランスソナーはペダル踏み間違い事故全体の約7割に対応していますが、一方で障害物がない場合を含む残りの事故を新たな技術開発によって減らしていく必要がありました」としている。
トヨタは今回の機能開発にあたって、実際の踏み間違い事故発生時に、アクセルペダルが全開で踏まれた状況を分析。
それぞれの踏まれ方の特徴を、トヨタ車両の情報通信機能を備える“コネクティッドカー”から得られたビッグデータと照合したとされる。
たとえば、右折時や一時停止後など、ドライバーが実際に急加速を必要とする状況を作動条件から除くことで、アクセルペダルの踏み間違い操作を特定。
障害物がなくても加速を抑制することで、踏み間違い事故の低減を図る機能を与えたという。
画期的なのは専用スマートキー
もうひとつの開発上のポイントといえるのは「専用スマートキー」の導入だろう。
トヨタは「急アクセル時加速抑制」機能の採用に関する工夫として、ハード面での情報処理機能とともに、使い勝手に配慮しつつ、装備・ソフト面で安全機能を確実に担保するために、専用スマートキーを用意して使用条件を“分別”することで、ドライバーが使用するスマートキーを選択できるように設定したことだ。
具体的には、高齢者などの運転に不安がある顧客向けに専用スマートキー「プラスサポート用スマートキー」(販売店装着オプション。税込価格:1万3200円~)で解錠すると自動的に「プラスサポート」が起動。
進行方向に障害物がない場合でも、ペダルの踏み間違い操作を検知した場合には加速を抑制するとしている。
このように専用キーを設定したことで、標準のスマートキーで解錠した場合には、「プラスサポート」機能は起動せず、通常通りの走行が可能というのが“別立て”の狙いといえる。
当然ながら、それぞれのスマートキーの管理には注意が必要ということになるが、デザインを明確に変えていることにトヨタの使用時の配慮が窺える。
新たな装備設定となる「プラスサポート」の対象となるのは、新車(インテリジェントクリアランスソナー装着車)向けとなり、合わせて今回発売された、プリウスとプリウスPHVからシステムの搭載を開始して、今後は順次搭載車種を拡大していくという。
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