高速道路上の落下物でクルマが損傷 被害を受けたドライバーにも責任があるって本当?

高速道路の落下物による交通事故の過失割合が60:40な理由

前走車から落下物があったらとうていよけきれるものではないが……
前走車から落下物があったらとうていよけきれるものではないが……

 今回は道路上の落下物に関する交通事故に絞って考えていくが、高速道路上での落下物による交通事故の場合、過失割合は過去の判例を参考にすれば確かにTVで報じられた通り、前走車、後続車の割合は60:40となる。

 交通事故や交通違反に強い中央総合法律事務所の荒井清壽弁護士に、このあたりの事情を訊いてみた。

 「実は高速道路上での落下物の場合、一般道よりも前走車のドライバーの責任は重くなっているんです。

 それは高速道路上では積載物の転落防止義務のほか、積載物の転落による事故を防止するために積載状態を点検する義務が課せられているからです。

 これは後続のドライバーが高速道路上での落下物を回避することが困難であることも考慮されています」。

 つまり、一般道の場合は落下物による交通事故の場合、50:50あたりが基準になっているということだ。

 速度が遅い一般道では、落下物に気付いて急停止したり、進路を変えて避けることが高速道路よりも容易なことから、後続車のドライバーにも同程度の責任があるのが基本なのである。

 それにしても、今回の畳の落下事故は、後続のドライバーにとっては不運としか言いようがないような状況である。

 問題の動画を見て、荒井弁護士は前述の過失割合の前提条件について補足してくれた。

 「この落下物による事故の過失割合では、落下物はすでに落下して静止した状態にあることと、後続のドライバーが軽度な前方不注意であることが前提条件になっています。今回のケースでは状況がかなり異なるのです」。

 つまり後続のドライバーの過失は判例よりも軽くなることが考えられると言う。さらに事故の状況から過失割合を補正できるポイントを挙げて解説してくれた。

 「動画を見ると車間距離が若干短いように思えるのですが、しかしいきなり畳が飛んできたら人間の反射神経では車間距離を適切にとっていても避けるのは困難です。

 よって軽度の前方不注意にはならないので、過失を10ポイントマイナスすることができると思います。

 また追い越し車線上で起きていることから、走行車線上より速度が高いことが明らかで後続のドライバーが回避することはさらに困難です。

 これは過失を10ポイントマイナスさせることができます。さらに前走車の積載方法が著しく不適切であり、後続車が発見や回避することは困難であり、後続車に及ぼす危険性を鑑みれば、後続車側の過失を15~20ポイントマイナスするべきではないかと考えられます」。

 ということは、過失割合は後続車側が30~40ポイント軽減される可能性があり、90:0から100:0にまで過失割合を改善するよう示談交渉することが可能だと語ってくれたのである。

 100:0は裁判では引き出せないかもしれないが、損害保険会社との交渉では相手側の保険会社から全額修理費用を支払わせることは不可能ではなさそうだ。

交通事故の示談交渉には弁護士を使うと有利になるワケ

 こういった示談交渉は当事者だけでも行なえるが、個人でここまでの内容にもっていくことはまず難しい。保険会社はなるべく保険金の支払いを抑えたいというのが基本的な姿勢だからだ。

 「また保険会社の担当者には裁量権が与えられていないので、判例通りの過失割合しか認めてもらえない場合が大半です。個人が保険会社と交渉しても、過失割合を判例よりも軽減することは難しいでしょう」(荒井弁護士)。

 そこで頼りになるのが、弁護士なのである。一般的に交通事故の過失割合について争う場合、弁護士が扱うだけで過失割合が10ポイント下がると言われている。これは法律のプロが扱うことによって示談交渉のレベルが上がることから、10ポイントは改善されるのだ。

 「被害者側が弁護士を立てて交渉すると、保険会社も担当が弁護士に代わります。

 ここで裁量権のある担当者となることで、過失割合の交渉が進むのです。というのも弁護士は最後の手段に裁判がありますが、保険会社としては裁判はなるべく避けて示談にしたい。そのため被害者側に有利な示談交渉となることが多いのです」(荒井弁護士)。

 こういった考えも弁護士によっても判断は変わるだろう。したがって荒井弁護士のように交渉力の高い弁護士を味方につけることが、交通事故の民事賠償の解決に関しては重要な要素なのである。

 また落下物と接触していなくても、それを回避したことで事故が起こった場合も、回避するためにとった運転操作が結果として事故に結び付いたと因果関係が認められれば、落下物の所有者に過失を求めることもできる。

 こうした証明や交渉も素人の個人ドライバーではまず不可能。弁護士の出番となる。

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