■小型スポーツカー「S-FR」(2015年)
2015年の第44回東京モーターショーに参考出品され、センセーションを巻き起こしたのがコンパクトサイズのスポーツクーペ、「S-FR」である。
トヨタ86よりも身近なライトウエイト・スポーツで、ボディサイズはヴィッツより少し大きい。全長3990×全幅1695×全高1320mm、ホイールベース2480mmで、フロントマスクもリアビューも個性的だ。イエローのボディカラーも似合っていた。
駆動方式は、ネーミングからわかるように後輪駆動のFRだ。軽量コンパクト設計で、足もいいから気持ちいいハンドリングを存分に楽しめたはず。
パワーユニットの発表はなかったが、軽量化に力を入れた作品だからハイブリッドではなかっただろう。1.5Lクラスの自然吸気エンジンでもトランスミッションは6速MTだから元気な走りを楽しませてくれたはず。
キャビンは量産化が間近なのでは、と思わせるほど造り込んでいた。ドライバーの前に据えたコンパクトやメータークラスターもいい仕上がりである。キャビンは2+2レイアウトで、後席は狭そうだが、エントリークラスのスポーツカーだから不満にはならない。
完成度が高く、ベストカーでも多くの誌面を使って紹介した。ショー会場で評判がよかったし、ミニカーも制作されるなど、市販に期待を抱かせたのである。
が、採算ベースに乗らないと判断されたのか、その後、まったくアナウンスされなくなった。省エネが叫ばれる2020年代の今こそ、発売してほしいライトウエイト・スポーツだ。「トヨタスポーツ800」の再来と持てはやされたはずである。
■クロスオーバーSUV「Tjクルーザー」(2017年)
今はクロスオーバーSUVの時代だ。トヨタが2016年に送り出した「C-HR」はヒット作となった。これに続く、RAV4、ライズ、ハリアーも売れに売れている。
発売していれば、絶対にヒットしていただろう、と思うのが2017年の第45回東京モーターショーに参考出品した「Tjクルーザー」だ。これは異色のクロスオーバーSUVで、商用のバンの卓越した積載性能とSUVの力強いデザインを融合させている。
車名の「T」は「TOOL BOX」、「j」は「JOY」を意味し、アクティブに使いこなせる道具感覚のレジャービークルを目指した。何てったってデザインがカッコいい。ストレート基調のキレのいいデザインで、フロントマスクも精悍だ。
それでいてドアは前側がヒンジ式、後席用はミニバンのようにスライドドアとして使い勝手を大きく向上させた。ルーフやフェンダーもケアフリー素材のキズがつきにくい強化塗装のものを装着する。
プラットフォームはTNGAで、駆動方式はFFの2WDとフルタイム4WDを揃えた。パワートレインは2Lクラスのガソリンエンジンにハイブリッドシステムの組み合わせだ。
水平基調のシンプルで機能的なインパネ、使い倒せる多彩なシートアレンジなど、魅力は大きく、ビジネス兼用モデルとしても売れるような予感がした。ショーでもいい感触を得ていたので、市販を期待したのである。
なぜか発売は見送られたが、これをアレンジしたクロスオーバーかーを出してほしい。「プロボックス/サクシード」の後継車としてのデビューもアリだったと思うのだが……。
※編集部注/当サイトでも何度か「Tjクルーザー発売間近!」という趣旨の記事をお送りしましたが、当編集部としても発売への期待値が大きすぎて、入ってきた情報の精査に不備がありました。すみませんでしたー!
・東京モーターショー出品時の完成度が高かったこと
・入場者からの評判が非常によく、販売店への問い合わせも多かったこと
・2017年末時に「数年後に市販化の可能性あり」という情報が入ったこと
・同時期に「トヨタが新型SUVの開発を進めている」という情報があったこと(いま考えると、RAV4とライズのことだったのでは、と推測)
これらが組み合わさって、Tjクルーザーの市販化に向けた開発が進んでいる、と誤解してしまいました。読者諸兄およびトヨタ自動車関係者の皆さまに、改めて謝罪させていただきたい。
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