■圧倒的強さのN-BOXだが タント&スペーシアは乗り換え需要をしっかり掴む
N-BOXは2代目で、初代N-BOXの投入に際しては〈Nシリーズ〉と銘打ち、N-ONE、N-WGNを順次発売し、Nという頭の名称について「New Next Nippon Norimono」という意味を与え、大々的に宣伝した。一台の新車を売るだけでなく、ホンダが提案する新しい軽自動車の姿を強く打ち出したのだ。これに、かねてからのスーパーハイトワゴン人気が加わり、初代から圧倒的人気を得た。
またその乗車感覚や使い勝手は、従来のダイハツやスズキのスーパーハイトワゴンとは違った感触があった。ホンダ流にいえば、軽のミニバンだ。登録車のミニバンを経験した人にとって、すぐに馴染めるスーパーハイトワゴンだったのである。
その人気が、2代目となる現行N-BOXを牽引している。台数でほかを引き離す数となっているのは、乗り換え需要もあるせいだろう。乗り換え需要が支えている点においては、スペーシアやタントも同じはずだ。
スペーシアは、N-BOXと同様にまだ2代目だが、車名を変更する前のパレット時代を含めると、タントの競合として競い合ってきた経緯がある。したがって、タントとともに堅実な販売台数が続いているのも、乗り換え需要があるからだろう。乗り換え時期は、必ずしも新車登場時とは重ならないので、年月を経て需要が継続される。
ルークスも前型はデイズルークスとして、またeKスペースも、振り返ればミニカトッポ時代へさかのぼり、タントと変わらぬ永い歴史を積み上げてきている。だが、その価値が継続的な人気を維持するまで至らぬまま今日を迎えている。
しかも両車は前型で、燃費偽装問題もあり、車種としてもメーカーとしても傷を負った状態からこの2代目で巻き返す段階にある。そこを考えれば、手ごたえのある販売台数といえるのではないか。これから消費者の信頼を得つつ、最新のスーパーハイトワゴンとして、走行性能や商品価値が認められ、浸透してゆけば、販売台数を伸ばす余地はあると思う。
■盤石のN-BOXに影 店舗数に差があるスズキ&ダイハツの強さ
ところで、盤石に見えるN-BOXの販売も、対前年比という統計を見ると影が見えてくる。
7月の集計では、対前年同月比が67.5%となっている。これに対し、スペーシアは105.1%、タントは90.3%なのだ。スペーシアは1年前より販売台数が増えており、タントも減ってはいても同等に近い数字を確保しているのに対し、N-BOXは30%以上の販売減なのである。
2019年の7月の販売台数は2万4049台で、2020年7月は1万6222台だから、7827台減ったことになる。その減った台数は、7月のルークスの7958台に近いといえる。そこから想像すれば、N-BOXからルークスへ乗り換えた消費者がいるかもしれないとの見方もできるのではないか。
単純すぎる想像ではあるが、2代目N-BOXは初代の価値をそのまま改良したにとどまり、その価値観は、一部で飽きられているかもしれないのである。
また、ホンダの販売店は2200店舗ほどだが、スズキは約640店舗、ダイハツは約720店舗であり、7月のそれぞれの販売台数を店舗数で割ってみると、ホンダが7.3台強/店であるのに対し、スズキは20.8台、ダイハツは18.2台であり、1店舗当たりの販売台数がホンダの2.5~3倍近い。それだけ、来店者数が多いわけだ。
ちなみに日産は2100店舗ほどで、1店舗当たりの販売台数は3.8台弱、三菱は約570店舗で2.4台だが、こちらは先に述べたようにこれからの成長に期待するということになるだろう。
N-BOXの2019年7月の2万台超えの時でも、1店舗当たりの販売台数は10.9台なので、スペーシアとタントに対する消費者の信頼や期待は、なお相当に大きなものがあるといえそうだ。
数字を並べてきたが、以上をまとめると、人気のスーパーハイトワゴン市場は、軽自動車とコンパクトカーに主力を置くスズキやダイハツが実は強く、販売店数の差もあって実は消費者から圧倒的支持を得ているといえる。
N-BOXはなお強みを発揮しているが、同時にまた減少傾向に転換しており、2021年あたりには何だかのテコ入れが必要かもしれず、次のモデルチェンジでは新たな価値の提案がないと苦戦を強いられるかもしれない。
ルークスとeKスペース/eKクロススペースについては、発売から1年を迎える2021年3月時点で、その評価が改めて問われることになるだろう。まだ上位3強に大きく負けているわけではないものの、消費者の選択肢に入るための浸透策が、もっと必要かもしれない。
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