どこへゆく日産!! 大幅車種リストラの影で進む選択と集中 捲土重来の鍵は?

 日産自体が中期経営計画の会見で、新車がなく国内販売で減速していた……というコメントを出したが、ジュークやキューブなどは、フルモデルチェンジして生かすべきだったのでは? というファンの意見がある。

 海外市場に軸足を置き、台数の出ない国内市場向けにはイマイチ腰が重かった日産。新車を投入しても、海外で発売するからそれで対応しようという考えも見えている。

 業績回復のために選択と集中を急ピッチで進める日産だが、後継モデルは穴を埋めるに足りるのか? また日産として求められる課題についても考察していきたい。

文/御堀直嗣
写真/NISSAN、編集部

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■ 後継車はあれど抱える課題も多い車種構成

 日産自動車は、FF4ドアセダンの「ティアナ」、小型SUVの「ジューク」、小型ワゴンの「キューブ」の生産を終了した。

初代ティアナが誕生したのは2003年2月(写真は3代目)。セフィーロやローレルといったアッパーミドルセダンの後継車として登場したが、2020年春に終売
まるでコンセプトカーのようなデザインで、2010年のデビュー時に驚きを与えた「ジューク」。ジュークNISMOを設定するなど、スポーティなモデルだった。2020年1月に終売
2008年11月に登場した「3代目キューブ」。2代目に続き、3代目も左右非対称デザインの横開き式バッグドアやリアコンビランプは継承。2020年1月に終売

 そして2020年発表された中期経営計画のなかで、2023年までに車種数を20%削減し、69から55車種以下にする効率化を実施するとしている。世界的に魅力と競争力を発揮できる車種に資源を集中し、具体的には、C/Dセグメント、EV、スポーツに絞り込まれる。

 生産を終了した3台のうち、ジュークは2010年に小型SUVの先駆けとして誕生した。外観も室内の造形も、斬新で挑戦的な造形が目を見張った。欧州では2019年に2代目へ替わり、2020年からオーストラリアでも販売されている。しかし日本への導入はない。替わりに「キックス」が小型SUVとして発売となった。

ジュークの後継モデルとして日本に導入された「キックス」。海外市場にはガソリン仕様のモデルもあるが、日本向けはe-POWER搭載車のみとなっている

 キックスと欧州向けの2代目ジュークは、車体寸法がほぼ同じだ。キックスは若干全長が長く、逆に全幅は狭い。幅が1.8mに達するジュークより、1.76mのキックスのほうが国内事情に合っているといえるだろう。また2代目ジュークはエンジン車のみだが、キックスはハイブリッドのe-POWER専用車種(国内とタイ向け)だ。

「ノート」や「セレナ」でもe-POWERの人気は国内で高く、運転支援のプロパイロットとの相性もよく、日本市場に適した選択といえる。したがって、単にジュークをなくしたというわけではない。

欧州で販売されている「2代目ジューク」。搭載する直列3気筒1Lターボは、最高出力117psを発生する

 キューブの代わりは、ノートが果たすことになるのだろう。合理的な実用性を造形で見せた初代キューブは、欧州でも高い評価を得ていた。そうした存在感がノートからは感じにくいが、日常的に実用的なワゴンとして、ノートの実用性とe-POWERという組み合わせは、やはり日本にあっているだろう。

 販売台数の面でも2020年1~6月まで半年間の成績で、「ライズ」「カローラ」「フィット」「ヤリス」という2019年に誕生した新車群に次いで、2012年から生き永らえる「現行ノート」が5位に着けている。

 ティアナは、前輪駆動用のハイブリッドを日産が持たないことが、撤退の大きな要因ではないか。米国仕様では「アルティマ」や「マキシマ」として販売され、カムリやアコードと競合する車種であり、「カムリ」や「アコード」にはHVがある。

 日産は、一時期アルティマにトヨタのハイブリッドシステムを活用し日産のエンジンと組み合わせた以外には、e-POWERが誕生するまで前輪駆動用のハイブリッドシステムを持たなかった(ただし正確には、2000年にティーノハイブリッドを100台限定で販売している)。しかも、いまのところe-POWERは小型車向けだ。

 実はカムリやアコードも、国内ではHVのみの展開だが、米国市場では直列4気筒のガソリンエンジン車が売れ筋である。そこで小型車向けのe-POWER以外はHVの拡販を期待しにくかったのだろう。

 一方、後輪駆動にはハイブリッドがあり、「スカイライン」や「フーガ」に搭載されている。そしてティアナの代替はスカイラインが担っていくことになるのだろうか。上質なFFセダンを商品力としたティアナと、走りのよさを特徴とするスカイラインでは、駆動方式の違いだけでなくクルマの個性として異なる面はある。だが、この先の電動化を見据えていけば、走りと上質さの両立は可能だ。

 次期スカイラインでは、電動化を強化したうえでフルモデルチェンジしないと競争力は得られないだろう。スカイラインはC/Dセグメントに入る車種であり、加えて中期経営計画ではEVとスポーツに力点を置くので、プロパイロット2.0を最初に搭載した車種としても、技術との親和性を高く持つことができる車種ではないか。当然、自動運転とモーターの相性はよい。

 2021年には、SUVのEVとして「アリア」が発売になる。また、アリアと同じく2019年の東京モーターショーで軽自動車EVである「IMk」が壇上を飾った。そうなると、車種構成で隙間を生じるのが、コンパクトハッチバック車の「マーチ」の行方だろう。

軽自動車市場にもEVを投入する計画がある日産
2021年の中盤に発売予定の、日産期待の新世代クロスオーバーEV「アリア」。4WDはe-4ORCE(イーフォース)と命名されたシステムを搭載する

■日産の強みとは? 再生への活路はEVと自動運転

 以上のような車種構成とは別に、日産の強みはこの先どのように発揮されていくのが望ましいだろう。

 鍵を握るのは、EVと自動運転だ。単にCASE(コネクティビティ/オートノマス=自動運転/シェアリング/エレクトリック)対策というだけでなく、2010年にリーフを発売し、また2019年「プロパイロット2.0」を世界に先駆けて市販した日産の優位性をより明確にする商品の方向性だ。

 スカイラインの例でも触れたが、モーター走行になると力強いトルクによる加速性能と、振動や騒音のない上質さを両立することができ、スポーティかつ高級で高品質なクルマを生み出すことができる。軽EVのi-MiEVでさえ、軽自動車という粗さはなく、床下に搭載したバッテリーの重さもよい効果を生んで、高速道路での長距離移動でもゆったりした乗り心地と、静粛性により、登録車のコンパクトカー以上の快適さを感じられるのである。

 そのうえで、日産は「初代リーフ」の発売前からフォーアールエナジー社を創立し、EV後のリチウムイオンバッテリーの再利用をすでに事業化している。実証研究などをしているメーカーはほかにもあっても、EVをここまで総合的に活用し尽くす事業計画を持っている自動車メーカーは日産だけなのだ。

 一台ごとの商品性や、それらを集合させた車種構成で今後の自動車メーカーの事業を予測することはできない。クルマをいかに万人のために役立て尽くすか、そしてそれが地球環境や資源問題へも適切に関り、総合的に快適かつ安心して人々が暮らせる社会を構築していけるか。そこまでを視野に事業展開できるのは、世界で日産だけに見える。

 技術の日産が、135年にわたってエンジン車が築いてきたのとは違う新しいクルマの価値を、EVと自動運転の技術を基にゼロから生み出し、体系づけられるかに未来はかかっている。

 大きな赤字を出し厳しい経営状態に直面する日産だが、過去10年で培ってきた日産独自の資源を最大活用する視点で、内田誠社長だけでなく全社員が団結し、独自の目標へ向かって力を出し尽くせるなら、単に何台かの車種が削減され経営は大丈夫なのかと心配するのではない、日産の底力を発揮できると信じる。

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