日産自体が中期経営計画の会見で、新車がなく国内販売で減速していた……というコメントを出したが、ジュークやキューブなどは、フルモデルチェンジして生かすべきだったのでは? というファンの意見がある。
海外市場に軸足を置き、台数の出ない国内市場向けにはイマイチ腰が重かった日産。新車を投入しても、海外で発売するからそれで対応しようという考えも見えている。
業績回復のために選択と集中を急ピッチで進める日産だが、後継モデルは穴を埋めるに足りるのか? また日産として求められる課題についても考察していきたい。
文/御堀直嗣
写真/NISSAN、編集部
【画像ギャラリー】日産の次代を担えるか!? これから登場する新世代クロスオーバーEV「アリア」をチェック
■ 後継車はあれど抱える課題も多い車種構成
日産自動車は、FF4ドアセダンの「ティアナ」、小型SUVの「ジューク」、小型ワゴンの「キューブ」の生産を終了した。
そして2020年発表された中期経営計画のなかで、2023年までに車種数を20%削減し、69から55車種以下にする効率化を実施するとしている。世界的に魅力と競争力を発揮できる車種に資源を集中し、具体的には、C/Dセグメント、EV、スポーツに絞り込まれる。
生産を終了した3台のうち、ジュークは2010年に小型SUVの先駆けとして誕生した。外観も室内の造形も、斬新で挑戦的な造形が目を見張った。欧州では2019年に2代目へ替わり、2020年からオーストラリアでも販売されている。しかし日本への導入はない。替わりに「キックス」が小型SUVとして発売となった。
キックスと欧州向けの2代目ジュークは、車体寸法がほぼ同じだ。キックスは若干全長が長く、逆に全幅は狭い。幅が1.8mに達するジュークより、1.76mのキックスのほうが国内事情に合っているといえるだろう。また2代目ジュークはエンジン車のみだが、キックスはハイブリッドのe-POWER専用車種(国内とタイ向け)だ。
「ノート」や「セレナ」でもe-POWERの人気は国内で高く、運転支援のプロパイロットとの相性もよく、日本市場に適した選択といえる。したがって、単にジュークをなくしたというわけではない。
キューブの代わりは、ノートが果たすことになるのだろう。合理的な実用性を造形で見せた初代キューブは、欧州でも高い評価を得ていた。そうした存在感がノートからは感じにくいが、日常的に実用的なワゴンとして、ノートの実用性とe-POWERという組み合わせは、やはり日本にあっているだろう。
販売台数の面でも2020年1~6月まで半年間の成績で、「ライズ」「カローラ」「フィット」「ヤリス」という2019年に誕生した新車群に次いで、2012年から生き永らえる「現行ノート」が5位に着けている。
ティアナは、前輪駆動用のハイブリッドを日産が持たないことが、撤退の大きな要因ではないか。米国仕様では「アルティマ」や「マキシマ」として販売され、カムリやアコードと競合する車種であり、「カムリ」や「アコード」にはHVがある。
日産は、一時期アルティマにトヨタのハイブリッドシステムを活用し日産のエンジンと組み合わせた以外には、e-POWERが誕生するまで前輪駆動用のハイブリッドシステムを持たなかった(ただし正確には、2000年にティーノハイブリッドを100台限定で販売している)。しかも、いまのところe-POWERは小型車向けだ。
実はカムリやアコードも、国内ではHVのみの展開だが、米国市場では直列4気筒のガソリンエンジン車が売れ筋である。そこで小型車向けのe-POWER以外はHVの拡販を期待しにくかったのだろう。
一方、後輪駆動にはハイブリッドがあり、「スカイライン」や「フーガ」に搭載されている。そしてティアナの代替はスカイラインが担っていくことになるのだろうか。上質なFFセダンを商品力としたティアナと、走りのよさを特徴とするスカイラインでは、駆動方式の違いだけでなくクルマの個性として異なる面はある。だが、この先の電動化を見据えていけば、走りと上質さの両立は可能だ。
次期スカイラインでは、電動化を強化したうえでフルモデルチェンジしないと競争力は得られないだろう。スカイラインはC/Dセグメントに入る車種であり、加えて中期経営計画ではEVとスポーツに力点を置くので、プロパイロット2.0を最初に搭載した車種としても、技術との親和性を高く持つことができる車種ではないか。当然、自動運転とモーターの相性はよい。
2021年には、SUVのEVとして「アリア」が発売になる。また、アリアと同じく2019年の東京モーターショーで軽自動車EVである「IMk」が壇上を飾った。そうなると、車種構成で隙間を生じるのが、コンパクトハッチバック車の「マーチ」の行方だろう。
コメント
コメントの使い方