「5ナンバーのカローラ神話」強し!! 旧型でも売れ続けるアクシオがあぶり出すニーズ

■なぜ旧型は売れている? 現場が語るその理由

 それにしても、継続生産のカローラアクシオとフィールダーの台数を合計すると、2020年上半期の1カ月平均が1397台に達する。これは新型になったカローラセダンの1577台に迫る売れ行きで、カローラスポーツ(5ドアハッチバック)の950台を上まわる。カローラシリーズ全体の17%を継続生産モデルが占めた。

 この販売構成は、法人からレンタカーまで、さまざまな需要に支えられるカローラならではだろう。クルマは個人ユーザーだけが買う商品ではなく、用途は多岐にわたる。カローラアクシオとフィールダーが好調に売れる背景には、カローラブランドの、そしてトヨタの販売面における根強さがあるわけだ。

新型カローラ登場後も、引き続き販売を継続している5ナンバーセダンのカローラアクシオ。全長4400×全幅1695×全高1460mmと、今では希少な5ナンバーセダン
5ナンバーサイズの従来型カローラフィールダー。アクシオ/フィールダーともにガソリンエンジンとハイブリッドを設定しているが、グレードはベーシックな「EX」のみとなっている

 カローラアクシオ&フィールダーの堅調な売れ行きについて、トヨタの販売店に尋ねると以下のような返答だった。

「購入するのは大半が法人のお客様だ。カローラアクシオは営業車、ワゴンのフィールダーは、プロボックスのようなバンの代わりに使われることが多い。プロボックスは耐久性が高いが、バン仕様だから後席は狭い。車検期間も初回は2年だが、その後は毎年受ける」

「しかも価格は相応に高いから、法人のお客様がプロボックスではなくカローラフィールダーを選ぶことも多い。また車庫が狭く3ナンバーサイズのカローラではドアを開閉しにくいお客様が、継続生産モデルを購入することもある」

 プロボックスに電動格納式ドアミラーや前席ヘッドレストの上下調節機能を装着した「Fグレード」は、価格が172万7000円だ。これと比較して、カローラフィールダー「EX」を選ぶユーザーもいるだろう。

 カローラフィールダー「EX」の価格は181万8300円だから約9万円高いが、後席のスペースが拡大され、サイド&カーテンエアバッグ、スマートキーなども標準装着される。車検期間の違いも含めれば、継続生産型とはいえ、カローラフィールダーにも魅力がある。

■3ナンバー化する国内向けモデル 新たな5ナンバーサイズ車にも期待

 ただし新型になった3ナンバーサイズのカローラと継続生産型のアクシオ&フィールダーでは、クルマの造りがまったく違う。走行安定性、乗り心地、内装の質、そして安全装備には大きな差がある。

 カローラアクシオ&フィールダーの発売は2012年だが、プラットフォームは2010年に登場した「ヴィッツ」と同じだ。TNGAの考え方に基づく新型カローラと比べれば、機能や装備が大幅に見劣りする。

 そこで、開発者に継続生産型をいつまで造るのか尋ねると「まったく未定です」と返答された。将来のことはコメントできないから当たり前の反応だが、明確には決まっていない様子だった。

 売れ行きが下がった段階でやめればいい話だが、継続生産型が1カ月平均で約1400台も登録されるのは、根強い需要がある証だ。5ナンバーサイズの「ヤリス」は、走行安定性と乗り心地のバランスが優れているので、これのプラットフォームをベースに、かつてのプラッツ&ベルタのようなコンパクトセダンを開発する方法もあるだろう。

 ヴィッツをベースに「プラッツ&ベルタ」を造っていた時代は、各メーカーが5ナンバーサイズのセダンを用意していた。

初代ヴィッツをベースに造られた「プラッツ(前期型)」。キャビンとトランクが広く、法人需要も多かった
プラッツの後継車で、2代目ヴィッツをベースとしていた「ベルタ」。スタイリングに苦心したプラッツと比べて、不自由のないデザインにまとめていた

 トヨタでは「カローラアクシオ」と「プレミオ&アリオン」、日産なら「ティーダラティオ」と「ブルーバードシルフィ」、三菱は「ランサー」という具合だ。そのために「プラッツ&ベルタ」の売れ行きは伸び悩んだが、今はホンダグレイスも終了して、5ナンバーセダンは発売後13年を経過するプレミオ&アリオンとカローラアクシオだけだ。

 セダンとワゴンの売れ行きが下がったのは確かだが、5ナンバー車が皆無になると、クルマの選択に困るユーザーも生じるだろう。

 例えばマツダの場合、ボディサイズの拡大や後方視界の悪化によって、教習車の開発が困難になった。そこで日本では売られていないタイ製の「マツダ2セダン」をベースに、教習車を開発している。マツダ2セダンなら5ナンバーサイズに収まるからだ。いい換えれば今の日本車では、日本の教習を行えないことになってしまう。日本のドライバーを育てる大切な教習車を、海外から調達せねばならない現実がある。

2019年、マツダは日本で販売していないマツダ2セダンを、教習車として新規採用

 カローラアクシオ&フィールダーは、運転しやすい5ナンバーサイズのボディでありながら、後席や荷室は3ナンバー車の新型カローラよりも広い。この特徴を継承しながら、ヤリスのプラットフォームを使ってフルモデルチェンジを行い、走行安定性と乗り心地のバランスを引き上げて欲しい。新しい5ナンバーサイズのセダン&ワゴンに挑んでこそ、日本のトヨタではないのか。

【画像ギャラリー】5ナンバーサイズを守り続けたトヨタの名門車「カローラ」 その歴代車を一挙プレイバック

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