名門車名「カローラ」誕生から半世紀以上も使われ続ける理由と強さ

 日産、ホンダはラインナップでファミリーネームを持つモデルはあまり見られない。しかし、トヨタは最新モデルで見ても、「カローラ」では「スポーツ」「ツーリング」「セダン」「クロス」、「ヤリス」では「クロス」と設定があり、過去にも多く存在する。

 差別化を図ったほうが、デザインも自由度が上がると思うが、あえてしない理由は何なのか? 知名度を優先させているのか? それとも何かしらの戦略があるのだろうか?

 今回は、トヨタのファミリーネーム採用に関するこだわりの謎について考察していきたい。

文/御堀直嗣
写真/TOYOTA、編集部

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■「何者か?」がすぐにわかる車種での採用が目立つファミリーネーム

 トヨタは、なぜ、「カローラ」の車名に、スポーツ、セダン、ツーリング、クロスといった車種名を付けた呼び名とするのか。一番の理由は、カローラという車名が、ビッグネームとして定着しているからだろう。

2018年にカローラスポーツ(写真左手前)、2019年にカローラ(セダン)、カローラツーリング(写真右上)に生まれ変わった現行型カローラファミリー
現行型に席は譲ったものの、現在も引き続き販売されているカローラフィールダーとカローラアクシオ
2020年7月9日にタイで発表された「カローラクロス」

 消費者も、カローラと頭に付けば、間違いのないクルマとして認識し、手ごろな価格で自分でも手に入れられる車種の一台として選択肢に入ってくる。

 逆に、日産やホンダにそうした車名のつけ方が現在はあまり見られないのはなぜだろう。以前は、そうした車名があった。日産では、サニー・カリフォルニアやパルサー・エクサという車種があった。ホンダは、シビック・カントリーとかシビック・シャトル、あるいはフィット・シャトルといういい方をしていた時がある。

 カローラは、1966年に初代が誕生した。1955年に、純国産車として「クラウン」が誕生して以降、1957年には「コロナ」が生まれ、1961年には「パブリカ」が登場している。したがってカローラの誕生は、それらに比べ遅れてのことであった。

1966年に登場した初代カローラ。十分な高速巡航性能を備える小型大衆車として開発された。カローラの歴史はここから始まったのだ

 庶民でも買うことができる大衆車としては、すでにパブリカがあった。通産省が想起したとされる国民車構想に近い、より大衆な車種としてパブリカは生まれた。空冷式2気筒エンジンという、たとえばフランスの「2CV」のような、合理性を追求したいまでいうコンパクトカーといえるクルマがパブリカであった。その空冷2気筒エンジンは、「トヨタ S800」に活用されることになる。

こちらは1961年に登場した「パブリカ」。パブリカという車名は一般から公募されパブリックカー(大衆車)に由来している

 しかしそれから間もなく、日本は高度経済成長をしはじめ、1964年には東京オリンピックを迎えることになる。同年に東海道新幹線が開通し、その前年には名神高速道路が開通した。

 首都高速道路が、1962年に供用開始となっている。経済や生活の急速な進歩発展の中で、実用性を何より重視したパブリカより、高速時代を視野に、また、少し贅沢な気分を庶民でも味わえる小型車としてカローラが生まれるのである。

■派生の多い「カローラ」ファミリー 優位性を生かす車名採用

 カローラ誕生の半年前には、日産から「サニー」が登場していた。以後、両車は競合として切磋琢磨していく関係になる。ただ、カローラは当初からサニーに対しやや優位な商品性を持っていた。

 初代の両車は、ともにリッターカーと呼べる車格だったが、サニーが直列4気筒1000ccエンジンであったのに対し、カローラは1100ccで、広告宣伝でも「100ccの余裕」と語り優位性を主張した。

 室内も、あえて赤い内装色を用いるなど、ほかと違う何かをわかりやすく示した。サニーも、2代目では1200ccエンジンを搭載してきたが、外観の造形は直線基調の簡素な様子を継承し、これに対しカローラは初代からやや丸みを帯び、ふくよかさを覚えさせ、上級車種との印象も持ち合わせた。

 サニーが2ドアのクーペスタイルの車種を設けたが、カローラは同様の車種にカローラ・スプリンターという車名を与えたのである。

 パブリカよりやや格上であるだけでなく、実用性に少しの贅沢さを加味したのが初代カローラであった。これを、開発主査を務めた長谷川達夫は、「80点+アルファ」という価値観で語った。パブリカは同じく長谷川達夫が開発を担っており、パブリカにはなかった当時の言葉でいう「デラックス」さをカローラには与えたのであった。これが、カローラをビッグネームにする原点となったといえるだろう。

 そして、カローラの車名を頭に付けた車名は、たとえばカローラ・レビン、カローラII、カローラ・セレス、カローラFX、カローラ・スパシオなど、すべてを列挙できないほど多彩だ。それらはいずれも、性能や機能として80点という全体的に過不足がなく、そのうえで魅力的な価値を別に備えた車種であったといえる。こうした流れが、今日も続いているということではないか。

1972年登場の「初代カローラレビン」。「セリカの2T-Gエンジンをカローラに積みたい」と言ったことから開発がスタートした、カローラファミリーでも異色といえる一台だ

■成功ばかりではない車名変更 トヨタにとっても「カローラ」は特別

 一方で、柱となる車名に、新たな価値や別の価値を追加したほかの車種では、トヨタにおいても必ずしも成功していない例がある。

 コロナ・エクシブやコロナ・プレミオなどがあったコロナは、結局、コロナ・プレミオからプレミオという新しい車名に変えたあとに、車種削減の対象となってなっている。またコロナ・マークIIは、マークIIと名乗ったあと、マークXに車名が変更され、これも消えゆく結果となっている。

コロナ・プレミオからプレミオに車名変更した現行型。現在ラインナップを維持しているものの、兄弟車アリオンのどちらかが、車種統合で消滅するとささやかれている
2019年末に生産を終了した「マークX」。派生車種である「マークXジオ」も設定したが、こちらはあまり販売は冴えなかった

 販売上は、車種の隙間を埋めていく役目を担ったり、新しい価値の4ドアを模索したりという戦略が背景にあったかもしれない。だが、永続的な価値観が得られなかったり、時期尚早であったりしたのかもしれない。またコロナは、プレミオとして消えるまでハイブリッドの設定がなかった。5ナンバーセダンにHVがあれば、コロナはまだ存続できたかもしれない。

 そもそもコロナ・マークIIは、コロナとクラウンの間を埋める車種として誕生し、GSSなどというスポーティ車種が注目を集めたこともあった。それが先々アリストとなり、レクサス GSへと発展していくが、GSも、結局は統廃合されていくことになった。

 またマークXも、なぜマークIIではなくマークXでなければならないのかという、車名変更の理由がやや希薄だったのではないか。

 コロナも、そこから派生したコロナ・マークIIも、歴史を重ねた車種だったが、トヨタの戦略がすべて成功してきたわけではない。逆に、それだけカローラというクルマの普遍的、世界的価値が盤石になったのである。

 ほかの自動車メーカーは、時代の変化などによって車名が必ずしも適切でないとの判断から、日産の場合でいえばサニーやブルーバード、ローレル、さらにはセドリックといった車名が次々に消えた。

 しかし、ティーダやフーガは、あまり定着しなかったようだ。ホンダは、シビックとアコードの車名は残っているが、海外市場での商品性を重視してモデルチェンジが進められたことも関係してか、国内ではその存在感を薄くしている。

 カローラは、のちにプリウスやアクア、あるいはヴィッツ(現行ヤリス)が登場しても、大きく販売を落とすことはない。その偉大さとともに、消費者にわかりやすい車名のつけ方も販売に効果を上げているのだろう。ヴィッツから世界共通のヤリスへ車名変更したあとヤリス・クロスが登場し、ヤリスもカローラのあとを追おうとしているようだ。

カローラに続き、世界戦略車である「ヤリス」にもヤリスクロスというファミリーが登場。今後さらにファミリーネームを冠したモデルが登場する可能性がある

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