■チャイルドシート非着用は子供を見殺しにしかねない行為
そう、シートベルト非着用の危険性と同じことが、チャイルドシートにも言えるのだ。道交法では6歳未満の児童をクルマに乗車させる際にはチャイルドシートを使うことが義務付けられている。ところが、チャイルドシートに座っていないどころか、大人用のシートベルトも装着しておらず、ひどいケースではシートにすら座っておらず、ドライバーの横や後ろで立ったまま乗車している光景を見かけることも珍しくない。
チャイルドシートを使用しない保護者は「近所だから」、「ゆっくり走っているから」、「子供が嫌がるから」という理由を挙げる人が大半だ。クルマや交通の仕組みを知らない子供がチャイルドシートを嫌がるのは自然な行動である。しかし、どんなに手間がかかろうと子供を説得し、キチンと乗車させて子供を守るのが愛情というものではないだろうか。
厳しい言い方をさせてもらうと、これは子供を思っての行動ではなく、「子供を説得するのが面倒だから」「子供に嫌われたくないから」選択しているに過ぎない。
6歳未満の幼児を自転車に乗車させる時にはヘルメットをかぶせる努力義務があるが、これも同様の理由で非着用が多く、結果として自転車乗車中の死傷者の6割は児童と幼児が占める(ITARDA調べ)という悲惨な状況を生み出しているのだ。
ここで筆者の経験を少し語らせてもらおう。筆者には二人の息子がいるが、現在大学生の長男は生後数カ月からクルマに乗ることを好み、チャイルドシートもまったく嫌がることなく、自分から率先してシートベルトを装着したほどだった。
しかし、高校生の次男はチャイルドシートを嫌がり、乗車させてシートベルトを締めると泣き叫んでいた。だから家族で出かける時には本当に大変で、チャイルドシートに乗せるのはひと苦労。しかし、泣き叫ぶ次男の様子を気にしながらもグッと堪えて最低30分はそのまま走行した。そして30分ごとに休憩を取り、その間はチャイルドシートから下ろして抱っこする、これを繰り返しながら移動したのだ。
すると数カ月後にはクルマで移動する際には、チャイルドシートに乗せられることを理解したのか、黙って収まっているようになった。さらに言葉を話すようになると、筆者がエンジンを始動させた時点で自分でシートベルトを装着出来ていない時などは「まって、まってチートベルト!」と発進を待つようお願いするようになった(もちろんシートベルトの着用を筆者が確認してから発進している)。
現在では虐待とも思われかねない行動かもしれないが、結果として次男は自らシートベルトを進んで装着するようになり、クルマで出かけることが好きになった。
シートベルトについてもまったく同じことが言える。例えば「シートベルトを締めないとお巡りさんに怒られる」というのは、子供にとってはベルト着用の動機付けにはならない。
クルマは、自分の足で走るより速く移動する大きくて重い機械、シートベルトをしないと軽い接触事故でも大怪我になりかねない。急ブレーキだけでもケガをする可能性があることを教え、「大事な○○ちゃんを守ろうね」と、キチンと座りシートベルトを装着させることを徹底するべきなのだ。
■エアバッグがあるから安心、という誤解がベルト非着用を増やす?
これは筆者の個人的な印象だが、クルマにエアバッグが装備されるようになってから、街を走るドライバーの運転が雑になってきたと感じる。ちょうどバブルも崩壊し、不景気になっていって気持ちが荒んでいったり余裕がないことも影響しているのかもしれないが、「エアバッグが守ってくれるから、簡単には死なない」という妙な安心感が生まれてきていたように感じる。
しかし、念のため申し上げるが正式にはSRSエアバッグと言うだけにSRS(補助拘束装置)であり、シートベルトをキチンと着用して、はじめて効果を発揮するものだ。ベルトにたるみがあったり、正しい乗車姿勢をとっていなかったりしても、シートベルトの拘束力は大きく損なわれる。
シートベルトやチャイルドシートを正しく使い、無謀な運転をしなければ、現代のクルマの安全性は極めて高い。クルマの安全性能を余すことなく享受しなければ、折角手に入れたクルマももったいないし、自分たちの命や身体を守り切れない。
シートベルトは自由や快適さを奪う拘束具ではなく、身体を守ってくれる防具なのだということを、家族全員で再認識するべきだろう。
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