SUVが再びブームとなってから久しい。
現在のSUV人気はセダンやハッチバックに対しプラス20~30万円程度というそれほど高くない価格で、セダンやハッチバックにはない非日常を毎日楽しめるスタイルや着座位置の高さによる運転のしやすさ、高い最低地上高を生かした雪道や悪路への強さ(セダンやハッチバックとそれほど変わらないものもあるが)などが手に入るのを考えれば、それもよくわかる。
現在販売されるSUVを見ると2WDがあるのは当たり前で、日本車では日産「キックス」と、2Lガソリンエンジンを搭載するレクサス「UX200」が2WDのみ、輸入車ではFFのみのSUVも珍しくない。
という現状を踏まえながら、後述する車種ごとの販売統計を見るとSUVでも2WDのほうが人気というモデルが多く、当記事ではその理由を考えてみた。
文/永田恵一
写真/TOYOTA、NISSAN、編集部
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■日本車で4WDしかないSUVはどのくらいある?
日本車では4WDしかないSUVのほうが珍しいので、挙げてみると
・トヨタ「ランドクルーザー」「ランドクルーザープラド」&レクサス「LX」
・トヨタ「RAV4 PHV」
・三菱「アウトランダーPHEV」
・スバル「XV」「アウトバック」「フォレスター」
・スズキ「ジムニー」「エスクード」
くらいだ。
4WDしかないSUVを見ると、ヘビーなSUVとなるランドクルーザーファミリーとジムニー、プラグインハイブリッドのRAV4 PHVとアウトランダーPHEV、「スバル=4WD」というイメージが強いスバルのSUV、販売台数が少ないこともありラインナップを絞っているエスクードという具合だ。
では「そのほかのSUVが2WDを設定する理由」を考えてみると、それは現代のSUVに求められる悪路走破性というのが大きい。
現代のSUVに必要な悪路走破性に対し、ほとんどの人が「雪道と河原のような若干の悪路に対応できれば十分」と考えている。ということもあり、現代のSUVのほとんどはランドクルーザーファミリーやジムニーのようなヘビーなもの以外はセダンやハッチバックが使うクルマの土台となるプラットホームを使った乗用車ベースで、最低地上高を高めるなどするという成り立ちだ。
つまり、「SUVだからといって、悪路を走ることは少ない」というユーザーも多く、この点を頭に置けば考えれば4WDには後述するデメリットもあり、「2WDが必要なSUVのほうが多い」というのもよくわかる。
■2WDのあるSUVはどのくらい売れている?
コンパクトクラスからトヨタ「ライズ」とホンダ「ヴェゼル」。ミドルクラスからトヨタ「RAV4」と「ハリアー」(ハリアーは登場したばかりで状況が落ち着いてないこともあり、2020年6月まで販売されていた先代モデルのデータ。現行モデルも時間が経てば、先代モデルとそう変わらなくなるだろう)の2WDと4WDの比率を調べてみた。
・トヨタ「ライズ」 2WD 75%:4WD 25%
・ホンダ「ヴェゼル」 2WD 80%:4WD 20%
・トヨタ「RAV4ガソリン」 2WD 11%:4WD 89%
・トヨタ「RAV4ハイブリッド」 2WD 15%:4WD 85%
・RAV4全体 2WD 12%:4WD 88%
・トヨタ「先代ハリアー ガソリン」 2WD 85%:4WD 25%
・トヨタ「先代ハリアーハイブリッド」 2WD 30%:4WD 70%
・先代ハリアー全体 2WD 73%:4WD 27%
と、RAV4と先代ハリアーハイブリッド以外は2WDの比率が圧倒的だ。また2020年に入ってから、コンパクトクラス以下のほかのSUVの2WDと4WDの比率を調べたことがあるが、2WDのほうが売れているモデルばかりだった。
このなかでは、RAV4だけ4WD比率が高いことが目に付く。これはRAV4が乗用車ベースのSUVのなかではワイルドなキャラクターもあり、フォレスターのように悪路で使われることが多く想定され、それに伴い2WDのグレードはひとつしかないためというのも大きいのではないだろうか。
ハリアーは先代モデルも含め、RAV4とは対照的なシティ派SUVというキャラクターと後述する理由に合致するところが多いのもあり、全体的には2WDが圧倒的に多く売れていると予想される。
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