シートベルト未装着による車外放出による死亡事故があとを絶たない。
JAF(日本自動車連盟)が2019年11月に、警察庁と共同で行った「シートベルト着用状況全国調査」によると、運転席が一般道=98.8%、高速道路=99.6%、助手席も一般道=95.9%、高速道路=98.3%と100%に近かったのに対して、後席のシートベルトの装着率は、一般道=39.2%、高速道路=74.1%と非常に低い装着率となっていた。
シートベルトの装着は、後席も含めて全席義務化となっていることはもちろん、事故時に身を守る最大かつ手軽な装備である。それにもかかわらず、いまだに装着率には課題が残る。
今回は、死亡事故や重大な後遺症を受けることがないように、シートベルト装着の重要性についていま一度理解いただきたいと思う。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock(Chaipong@Adobe Stock)、JAF
【画像ギャラリー】一番高いのはどこ? 都道府県別のシートベルト着用率は!?
■日々進歩するクルマの安全性への過信 誤った判断が一生の後悔に
ご存知だろうか、国内の交通事故死者は大幅に減少したが、交通事故自体はそこまで減っていないということを。未だ国内では年間40万件以上の交通事故が起こっている。にも関わらず交通事故死者は3000人を切っているのは、ひとえにクルマの安全性が飛躍的に向上したから、である。
クルマの安全性をアピールするTVCMの影響もあってか、ドライバーや乗員はクルマに乗っていれば安全と過信している傾向にあるように感じる。
さすがに携帯電話同様、街中でも非着用は取り締まりを受けるために、前席のシートベルト着用率は非常に高い。それでも100%ではなく、さらに後述する抜け道のような着用法をしているケースもあるようなのだ。
交通事故総合分析センター(通称ITARDA)の調査によれば、シートベルトを着用しないドライバーにその理由をアンケートしたところ「面倒、窮屈だから」というのが5割、「習慣にないから」、「近くだから、事故を起こさないから」というのが合わせて4割と、全体の9割は自己中心的な我がままとも言えるものだったのだ。
そしてシートベルトをしているドライバーや乗員のなかでも、腰を支えるラップベルトを背中側に回し、ショルダーベルトのみ着用している不届き者がいるらしい。
これは前述の「窮屈だから」というのが理由のようだが、ショルダーベルトだけ着用していれば外から見ればキチンと着用しているのと見分けがつかないことから、交通違反の取り締まり対策として行なっているようだ。
この「警察の取り締まりさえ受けなければいい」というのは、前述の「ちょっとやそっとでは死なない」という思い込みからくる勝手な解釈であり、非常に危険な考えなのだ。
ショルダーベルトだけを着用した状態でも一見、拘束力はあるように思える。しかし下半身はまるでホールドされていないため、ショルダーベルトを支点に身体がねじれやすく、前傾しながらねじれることでショルダーベルトから身体が抜け落ちてしまうこともあるのだ。
高速道路でシートベルトをしていても車外放出されてしまったというケースは、極めてまれだ。それくらいシートベルトは、正しく装着すれば拘束力は高い。
シートベルトを着用していながら車外放出で死亡しているのは、着用者による事故の1%に過ぎない。その1%の車外放出についても、事故後の検証では果たしてシートベルトを正しく装着していたかは証明が難しい。つまりそれらはショルダーベルトだけを装着して走行していた可能性も高いのだ。
一方JAFの調査によれば、後席シートベルトの着用率は高速道路でも74%、一般道では39%ほどと4割を切るほど低い。これは従来、着用が義務化されていなかったという習慣と、後席の乗員の法知識や遵守意識の低さ、ドライバーが着用を促さないのが理由だ。
さらに義務化されても罰則は緩く(高速道路上での1点減点のみ)、後席の乗員は前席のシートバックによって守られているという誤解が起こりやすいことも後席のシートベルト着用が進まない背景ではないだろうか。
そして、高速道路での交通事故による車外放出でさらに悲しい事故は、前席の保護者がシートベルトをしていたため助かり、後席の子供がチャイルドシートやシートベルトを非着用だったために車外放出で死亡する、というケースだ。
事故の原因は相手のクルマにあったのかもしれないが、自分たちは助かり子供が亡くなってしまったのはキチンとシートベルトやチャイルドシートを着用させていなかったから、ということであれば、一生悔やんでも悔やみ切れない。
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