■クルマ本体だけではない 日本市場を練ったメルセデスの戦略
先進機能においても、メルセデス・ベンツの運転支援は世界のクルマのなかでも群を抜いている。音声入力なども、小型のAクラスに率先して採用するなど、比較的購入しやすい車種で先進機能を体感できる取り組みをメルセデス・ベンツは行っている。
CASE(コネクティビティ/オートノマス=自動運転/シェアード/エレクトリック)という言葉をはじめに使いだしたのがメルセデス・ベンツであり、そのことはすなわち、未来へ向けた開発を率先している証でもある。そうした一部がAクラスでも体験でき、若い世代の消費者の注目を集めやすく、身近な価格の輸入車が増えるなかで、幅広い顧客を得る礎となっている。
もうひとつ、国内で忘れてはならないのが、販売力だ。ヤナセは、永年にわたりメルセデス・ベンツを取り扱ってきた。戦前にまずメルセデス・ベンツの指定サービス工場となり、昭和27年(1952年)から車両の販売をはじめている。1986年にメルセデス・ベンツ日本が設立されてからも、ヤナセでの販売は続いた。
戦前からの、キャデラックなどゼネラルモーターズ(GM)の販売とともに、ヤナセで新車を買う顧客がメルセデス・ベンツ販売の大きな支えとなっているはずだ。それにこたえるように、たとえばヤナセは富裕層が避暑地として訪ねる軽井沢に、夏季に限ったサービスステーションを特設するといったことも行ったことがある。
併行して、メルセデス・ベンツ日本が設立されたあとには独自の販売店網も構築され、営業や保守管理の教育を怠りなく続けてきた。あるいは、輸入車の維持管理費が高いのではないかとの懸念に対し、メルセデス・ケアといって、新車購入から3年間は無償保証する特典を、国内外のメーカーのなかでも早くから採り入れた。よいものなら売れるはずという姿勢ではなく、あたかもトヨタのように顧客の不安や懸念を取り払い、寄り添う仕組みづくりも行ってきたのである。
新しい顧客との接点という面で、メルセデス・ベンツ日本は、東京・六本木にメルセデス・ベンツ・コネクション(現在のメルセデス・ミー)というカフェを設け、販売店とは異なる環境でメルセデス・ベンツをより身近に感じられる取り組みを2011年にはじめた。
BMWも、2016年に東京・青海にBMWグループ・東京ベイという施設を設けたが、消費者が気軽に立ち寄れ、飲み物や軽食を楽しみながらブランドを知るという発想は、メルセデス・ベンツが早かった。
クルマとして個性があることは大切だが、より多くの人にということになると総合性能の高さや、身近さ、販売店との信頼関係など、消費者に近い目線での商品開発と販売戦略が不可欠であり、メルセデス・ベンツは他社を上回っている。それができるのは、実は、日本人社長による、国内市場に適した施策や、発信力も大きいのではないか。たとえばボルボは、日本人社長となって大きく販売を伸ばした。
以上のような様々な経緯から、日本は自動車販売において独特な市場環境があり、そこにもっとも適した施策を打っているのが、メルセデス・ベンツである。
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