3ナンバー化で成功した車種は「ごく少数」
過去を振り返ると、5ナンバー車から3ナンバー車に発展した車種の多くは売れ行きを下げた。
8代目のFD型シビック、5代目アコード、9代目のR33型スカイライン、3代目インプレッサ、現行シルフィ(旧ブルーバードシルフィ)などが挙げられ、シルビア、プレリュード、プリメーラのように消滅した車種も多い。
むしろ3ナンバー車に拡大されながら好調に売れる車種が珍しく、ハイブリッド専用車のプリウス、3ナンバー車になっても日本のユーザーを見据えて開発されるクラウン程度だ。
レヴォーグや現行ハリアーは、3ナンバー車でも日本向けに開発された車種で堅調に売れるが、こういったケースは少ない。
車両開発の流れが変わったのは、1989年の消費税導入に合わせて自動車税制が改訂され、3ナンバー車の不利が撤廃された時だった。
それまでは日本向けには5ナンバー車、海外向けには3ナンバー車を開発したが、税制改訂を受けて、海外向けの3ナンバー車を日本でも売るようになった。
問題は大型化ではなく日本を軽視した車作り
ところが思惑は見事に裏切られ、各車種とも売れ行きを落とした。ボディの拡大で運転感覚が悪化したことも原因だが、それ以上に、日本のユーザーに対する思い入れや気配りを失ったことが災いした。
その結果、日本の国内販売は1990年に778万台のピークを迎えたが、3ナンバー車が増えるに連れて販売台数が下がり、2016年は497万台だった。
1990年比で64%まで下落している。自動車業界では「車離れ」と呼ぶが、とんでもない勘違いだ。日本の車作りが日本のユーザーを離れ、海外に向いたことで販売を低迷させた。自業自得による当然の成り行きだ。
多くのメーカーは売れ行きの減少に驚き、アコードは1993年に5代目で3ナンバー車にしながら、1997年発売の6代目ではセダンを5ナンバーサイズに戻している。
しかしこの時には初代ステップワゴンなどが発売されてミニバンが売れ行きを伸ばし、アコードは人気を回復できなかった。2002年の8代目では、再び3ナンバー車に拡大されている。
新しいスイフトスポーツも3ナンバー車になったが、これは文字通りスポーツ指向の派生車種で、販売台数は以前からあまり多くない。従って販売面の痛手も少ない。
カローラが3ナンバー化したら影響はあるか?
しかし、同様に3ナンバー化が噂されるカローラアクシオは大打撃を受ける。「運転のしやすい身の丈に合った堅実なセダン」が特徴で、3ナンバー車になればユーザーの多くが敬遠するからだ。
特にカローラアクシオには60歳以上のユーザーが多く、3ナンバー車の運転しにくいイメージと、華美なクルマには乗りたくないという意識がマイナスに働く。
カローラアクシオには法人が営業車として使うケースも多く、3ナンバー車では社内の規則で購入できないこともある。3ナンバー化によって売れ行きが大幅に下がるのは必至だ。
5ナンバー車の減少は、日本のメーカーが、日本のユーザーと真剣に向き合っていない証拠だ。このままでは売れ行きがますます下がる。
そして今の日本の乗用車メーカーは、ダイハツを除くと世界生産台数の80%以上を海外で売るが、いつまでも堅調が続くとは限らない。
日本のユーザーを軽く扱っていると、いよいよ国内市場が頼みの綱になった時、屋台骨を支えてくれないだろう。
日本のメーカーなら、日本車を育てた国内市場と、5ナンバーサイズという規格をもう少し大切に考えるべきだ。それはコンパクトで軽い本物のエコカーを開発することでもあるから、今後は同様の車作りが海外でも通用する時代になる。
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