季節を問わず、クルマは壊れる。本当に前ぶれなく、突然“ストン”と止まっちゃうこともあるけど(企画担当の愛車が以前東北道で燃料ポンプの故障で立ち往生しちゃった時は全く前兆なかった)、ほとんどの場合、異音がしたり、いつもと違う振動がしたり、変なニオイが漂ったりと、何らかの前兆を発するものだ。
クルマが発するトラブルの前兆、つまり「アラート」はさまざま。音だったりニオイだったり、場合によっては「いつもとなんか違う違和感」みたいなものだったりする。見逃すことなくしっかり感じ取ってトラブルを未然に防ごう!
【画像ギャラリー】ドリル式でわかるクイックチェック!!! ギャラリー式クルマアラートQ&A!!!
※本稿は2020年9月のものです
文:ベストカー編集部/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年10月10日号
■Alert01 なんか近くでヘリコプターが飛んでいるような音がする…?
文字で表すなら“バババババッ”というか“バタバタバタ”といったほうがいいのか、とにかく、「あれ、ヘリコプター!?」と思うような音。
ただ、この音の周期が自車の車速の増減に合わせて早くなったり遅くなったりするから、「なんか違うなぁ……」となるわけです。
これ、タイヤのエア圧が急激に減って、タイヤが波打って路面をたたいている音。ズバリ、パンクです。
エアが残ってギリギリ走れているけど、かなり危険。前輪だったらハンドルに違和感を感じるはずだが、一般道で速度が遅いと、意外と気が付かないこともある。
安全な場所にクルマを止めて目視点検すべし。
■Alert02 ブレーキ踏むと“チィー”と何かがこすれる音
ブレーキを操作した時に“チィー”とか“シャー”といった高周波の音が聞こえたなら、ブレーキパッドの摩耗限界が近づいている、まさにアラートだ。
これは、パッドの摩耗を知らせるために装着されているもので、パッドが一定の厚さを下回ると、薄い金属のプレートが露出してローターに接触することで音を発生するという仕組み。
ある程度の余裕をもってアラートが出るようになっているので、なる早で整備工場に行って点検してほしい。ブレーキパッドを使い果たしちゃうと、いうまでもないけど制動力が得られなくなってしまう。パッドのなくなったブレーキの台座がローターに直接当たればローターも傷つき使用できなくなる。
インパネのブレーキ液面低下を示すウォーニングランプは、パッド残量の減少に伴い、キャリパーピストンの繰り出し量が大きくなった場合にも点灯する。いずれにしても、ブレーキのアラートは待ったなしで工場行きだ。
■Alert03 アクセルを踏み込むとエンジンルームから“キュルキュル”音が出る
停車中でもアクセルペダルを踏み込んでエンジン回転が高まるとともに、エンジンルームから“キュルキュルキュル!”と甲高い、何かがスリップするような音が聞こえる。これはほぼ間違いなく、クランク軸から取り出された動力で駆動される補器類の駆動ベルトのスリップ音。
オルタネーターやパワステポンプ、エアコンコンプレッサーなどがベルトで駆動されている。まずはエアコンスイッチをオン/オフしてみよう。
オフ時に音が止まり、オンで音が出るようならエアコンコンプレッサーの故障の可能性が大。内部が損傷し、コンプレッサーの動きが渋くなっているため、無理やり回そうとしてベルトがスリップするのだ。この場合、まだまだ暑いけど、エアコンオフにしてソク修理!
■Alert04 なーんか甘いニオイが漂ってくる?
そこはかとなく、いつもは感じない「甘ったるい」ニオイが漂っている。機械油っぽさも感じさせる甘いニオイだ。
これ、水冷エンジンの冷却用液、いわゆるLLC(ロングライフクーラント)のニオイである可能性が高い。
LLCのニオイが漂うってことは、かなりマズイ。通常、密閉されていてニオイが漂うことなんてないのだから、漏れ出している可能性が高いってことだ。
LLCが漏れるってことは、ラジエター配管に亀裂があるということ。加圧が利かなくなり、沸点が100℃になるため、蒸発が進む。すぐ工場だ!
■Alert05 ブレーキを強く踏むとステアリングに振動 そして“ゴォォォ”と大きな音
普通に走っている時は特に違和感はなかったのだが、ブレーキをかけると“ブルブルブル”とステアリングに振動が出るとともに、“ゴオオオオオ”と大きな音も聞こえる。
最も疑うべきはブレーキトラブルだ。制動時に音や振動が出るのなら、ブレーキローターの異常がまず疑われる。
ローターが熱変化で微妙に波打ってしまったり、ローター表面が不規則に摩耗した場合などもこの振動とともに音が出る。目で見てわかるようなレベルではないので、目視点検ではわからない。
また、ブレーキ系のトラブルではなく、ハブベアリングの摩耗によるガタつきの場合もある。
制動によりローターがつかまれ、取り付け部であるホイールハブに負荷がかかる。ハブの動きをスムーズにするボールベアリングにガタがあると、負荷がかかった際にガタが大きくなり振動と音が出るのだ。ハブベアリングのガタは、操安性に大きな影響を与えるし、何より危険。
ブレーキローターの偏摩耗、ハブベアリングのガタつき、いずれのケースもただちに修理しないとほかの箇所への負担増によるトラブル拡大の危険性もある。工場へ急げ!
■Alert06 速度を上げるとハンドルがブルブル振動する
特徴として、ある速度域でのみ、特に振動が大きくなり、その速度域を外れるとステアリングに感じる“ブルブルブル”という振動は小さくなったり、スーッと消えてしまったりする。
これはホイールバランスの乱れが原因だ。タイヤ交換時に専門ショップでホイールバランサーでチェックして、ホイールリム部にウェイトを装着してバランスを調整する、あれだ。
走っているうちに、何かの拍子にウェイトが外れてしまうこともあるし、ウェイトはしっかりついていても、タイヤとホイールの組付け位置が走っているうちにずれてくることもある。
ガッチリ勘合しているタイヤとホイールだけど、駆動輪だとトラクションや制動時の負荷で少しずつずれてくる。
タイヤサイドウォールに黄色い丸点が打たれているものがあるが、これは「軽点」といって、タイヤの最も軽い位置につけられており、組付け時にはホイールのバルブ位置に合わせてバランスを取りやすくする。
タイヤを見て、軽点の位置を確認してみよう。いずれにせよ、タイヤショップに行って、再度バランス調整をしてもらおう。
■Alert07 エンジンルームから“ボコボコボコ”とお湯が沸騰するような音がする
これは、LLCが沸騰している音。「ALERT2」で説明したラジエターの減圧とも関連しているけれど、100℃で沸騰しているということは、オーバーヒートに直結する。
水温系は高温を示していないだろうか? 車両を安全な場所に停止させ、エンジンを止めずにエンジンルームチェックしよう。
■Alert08 段差を越えると“バキっ”と大きな音がする
そんなに速度を出していないのに、ちょっと大きめの段差を越えると“バキッ”といった嫌な音。
クルマの異音ってのは、意外と発生源を突き止めるのが難しく、聞こえた方向からエンジンルームだな!? とか、これはリアサスのあたりから聞こえたな!? と思っても、違うことも多いのだ。
特にサスペンション系の異音だと、取り付け部から車体に共鳴して発生源とは離れた場所から聞こえてくることもある。
リアサスのダンパーからの異音が、Cピラーからルーフレールを伝わってドライバーの頭上から聞こえてくるなんてこともある。この“バキっ”音はサスダンパーが要因の音のケースが多い。
■Alert09 アクセルを踏んで加速状態になるとエンジンから“チリチリチリ”と音がする
ジワーっとアクセルペダルを踏み込んで加速していくと、エンジンルームからかすかに“チリチリチリ”とか“カリカリカリ”といった音が聞こえる。
比較的高めのギアのまま、低い回転からキックダウンせずにアクセル開度が大きくなった時に聞こえる。
これはエンジンの「ノッキング音」だ。最近のエンジンはノックセンサーが高精度で、薄めの混合比でなおかつ点火時期も早めるセッティングにして、効率重視。ノッキングギリギリの燃焼をコントロールしていて、運転条件によってはこのチリチリ音が出ることも少なくない。
直ちにエンジンが壊れることはないけれど、なるべくこの音が発生しないような走らせ方をしよう。
■Alert10 カランカランと金属音がする
走っていて下回りから“カランカラン”といった金属音が聞こえるのなら、排気管の遮熱板が外れかけている時の音ってケースが多い。
そのまま走り続けて落下させてしまえば、後続車の迷惑になる。また、排気管を車体に取り付けているゴムマウントが摩耗して、ぐらついている場合にも同様の音がする。いずれにしても下回りの点検だ。
とまあ、クルマはトラブルの前兆にさまざまな音やニオイなどのアラートを発生するので見逃さないことだ。