【一流エンジニアが提言】 「足回り」を形式で選ぶのは間違っている

■土台をしっかり作るほうがよほど重要

 新車開発にはトータルでの予算管理というものがあります。サスペンションに高額な予算を割いてボディ剛性不足になってしまうのであれば本末転倒。

 私ならばストラットサスを採用し、サスペンション部分でのコストを落とし、その分のお金をボディ剛性を高めることにかけて、タイヤの接地変化を最小限に抑えた設計をします。それを上手にやったのが新型カムリのフロントセクションなのです。

アウディA4やマークXと比べても水野氏による評価点数が高かったカムリ
アウディA4やマークXと比べても水野氏による評価点数が高かったカムリ

 新型カムリのリアサスはダブルウィッシュボーンを使っていますが、実はカムリではフロアのリアセクションが路面からの入力で上下に折れるような動きをするのです。

 この捩れを結果的にダブルウィッシュボーンの動きで合わせ込んでタイヤの接地面変化を最小限に抑えています。

 私ならば、リアフロアの剛性をガッチリと高めるところにコストを割いて、リアサスはストラットで同等以上の接地性を確保させるようにします。

 ストラットサスだからダメだ、ということではなく、ボディなど土台をしっかりと作ることができれば、ストラットでも充分な性能を発揮してくれるのです。

 もちろん、車体剛性が同等であれば、トーションビームやストラットといったジオメトリー変化の制御ができないサスペンションよりも、ダブルウィッシュボーン、さらにはマルチリンクなどのほうがセットアップの自由度が大きく、より高度な操安性能を追求することができます。

 しかし、土台がきちんとできていない状態で、サスペンション形式だけにとらわれた設計をしているようでは本末転倒。ユーザー側もそういったことを理解して、本当に「いいもの」とはどのようなものなのかを見極める目を持つことが大切です。

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