なぜ軽自動車には“本格”ハイブリッドがないのか

軽自動車にストロングハイブリッドが設定されない3つの訳

 なぜ軽自動車には、ストロングハイブリッドが設定されないのか。背景には3つの理由がある。

 まず、ストロングハイブリッド搭載車の価格が、ノーマルエンジン車に比べて、少なくとも35万円は高まることだ。スバルのe-BOXERは例外的に価格上昇を抑えたが、燃費も良好とはいえない。e-BOXERはマイルドハイブリッド的な扱いになる。

仮にホンダN-BOXにハイブリッド分の価格が上乗せすると、200万円以上になってしまう
仮にホンダN-BOXにハイブリッド分の価格が上乗せすると、200万円以上になってしまう

 仮にハイブリッドの価格が35万円の上乗せになると、N-BOXで売れ筋になる「カスタムG・Lホンダセンシング」(176万6800円)は、約212万円に達する。コンパクトミニバンのフリード「G・ホンダセンシング」と同等だ。

 今の軽自動車は価格が高まったが、それはエアロパーツの装着や安全装備の充実に基づく。燃費と環境性能を向上させるハイブリッドシステムだけで、35万円の値上げ(比率に換算すれば20~25%の価格上昇)になると、商品として成立しにくい。

 軽自動車でストロングハイブリッドが普及しない2つ目の理由は、ノーマルエンジンにもさまざまな低燃費技術が使われ、燃料消費量を抑えていることだ。

クラウンだと、ハイブリッドの方が燃費代を約40%削減できる(2Lターボ :WLTCモード12.4km/L、2.5Lハイブリッド:WLTCモー:20km/L)
クラウンだと、ハイブリッドの方が燃費代を約40%削減できる(2Lターボ :WLTCモード12.4km/L、2.5Lハイブリッド:WLTCモー:20km/L)

 例えばクラウンの場合、2LターボのWLTCモード燃費は12.4km/L、2.5Lハイブリッドは20km/Lだから、後者を選ぶと燃料代を約40%削減できる。

 しかし、コンパクトカーのフィットでは、燃費節約率は30%前後に下がる。小さなクルマになるほど、ノーマルエンジンの燃費性能が向上して、ハイブリッドとの差が縮まってくる。

小さなクルマになるほど、燃費節約率が低下する。ハイブリッドの35万円の価格差を燃料代の節約で取り戻しにくくなるという
小さなクルマになるほど、燃費節約率が低下する。ハイブリッドの35万円の価格差を燃料代の節約で取り戻しにくくなるという

 言い換えれば、35万円の価格差を燃料代の節約で取り戻しにくくなるわけだ。レギュラーガソリン価格を145円で計算した場合、コンパクトカーでハイブリッドとの価格差を燃料代の節約で取り戻すには、11万~14万kmの走行を要する。軽自動車はさらに伸びるだろう。

 しかも軽自動車は1年当たりの走行距離が全般的に短いため、ストロングハイブリッドを用意しても、経済的にトクすることは考えられない。

軽自動車がマイルドHVを採用する理由は経済性にあり

 軽自動車がマイルドハイブリッドを採用する理由もそこにある。35万円高いストロングハイブリッドでは割高だが、マイルドハイブリッドなら損得勘定も変わる。燃費の向上率が少ない代わりに、価格上昇も抑えられるからだ。

マイルドハイブリッドは燃費の向上率が少ない代わりに、価格上昇も抑えることができた。さらにアイドリングストップが装着されているため、街中を中心とした使い方では燃費を抑えられた
マイルドハイブリッドは燃費の向上率が少ない代わりに、価格上昇も抑えることができた。さらにアイドリングストップが装着されているため、街中を中心とした使い方では燃費を抑えられた

 例えばワゴンRにマイルドハイブリッドを搭載する「ハイブリッドFX」の価格は、ノーマルエンジンの「FA」に比べて11万6600円高い。

 ただし「ハイブリッドFX」にはフルオートエアコンやキーレスプッシュスタートなども採用され、これらの価格を差し引くと、マイルドハイブリッドの価格上昇はアイドリングストップを含んで約7万円だ。

 それでも損得勘定で割安にはならないが、アイドリングストップが装着されるので、街中を中心にした使い方では燃料消費量を抑える効果も向上する。マイルドハイブリッドは、全般的に燃費が優れ、価格の安い軽自動車やコンパクトカーと相性が良い。

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